
欧州連合(EU)は10日、域内で台頭するスタートアップのエコシステムにアドレナリンを投与すべく、大規模なファンド・オブ・ファンズ「VentureEU」を立ち上げると発表した。
EU はこれまでにこのプロジェクトのために4.5億ユーロ(約600億円)を拠出しているが、現在は民間投資家から21億ユーロ(約2,780億円)を調達するのが課題となっている。
VentureEU には、デジタルサービス、医療技術、生命科学、エネルギーなどの分野に特化する VC に投資を行う6つのファンドが含まれる。このプログラムは、本日(4月10日)ブリュッセルで開催された EU の「Digital Day」で正式発表された。
欧州委員会の職業・成長・投資及び競争力部門副委員長を務める Jyrki Katainen 氏は声明の中でこのように述べた。
ベンチャーキャピタルは、規模が重要な要素です! VentureEU により、ヨーロッパにいる革新的な起業家の多くは、イノベーションや世界的な成功物語の実現に向けて必要な投資をすぐにでも得られるようになるでしょう。それにより、ヨーロッパには雇用と成長がもたらされるのです。
このプログラムは大規模な取り組みであると同時にスタートアップエコノミーを加速させようとする際にヨーロッパには大きな課題があることを示唆している。
EU は、発表の中でその課題について強調していた。2016年にアメリカのスタートアップは、ヨーロッパのスタートアップより6倍多い金額を調達していた。ヨーロッパでは VC ファンドが台頭してきているとはいえ、大半の規模は米系ファンドの3分の1ほどにとどまっている。そしてヨーロッパには2017年末時点で、時価総額10億米ドル超の民間企業(ユニコーン)は26社しかない。これに対してアメリカは109社にのぼる。
実際、ヨーロッパは起業家がスタートアップをローンチする際のサポートでは改善がみられるものの、多くの企業がより後期のステージの資金調達をしようとすると別の地域に向かってしまう。もしくは、ヨーロッパでスケールしようとする試みが断念させられる。
EU の構想は素晴らしいが、公表内容をみると、資金調達のダイナミクスを域内においてシフトさせようとするときに直面する限界を意識させられる。今回のような汎ヨーロッパ主義的なファンドの計画は、実は2015年にすでに発表されていた。調整に3年もかかり、今の段階に至ったわけだ。そして資金の大半は複数の VC ファンドに分散されるだろう。それらのファンドは、バランスを図って投資するに値するスタートアップを見定めなくてはならない。
資金を受け取る6つのファンドを選定するプロセスを管理したのは European Investment Fund(EIF)である。その EIF は本日(4月10日)、Isomer CapitalとAxon Partners Group の2社と契約を交わした。残りの4社(Aberdeen Standard Investments、LGT、Lombard Odier、Schroder Adveq)との契約は今年中に行われると予測されている。上記ファンドは、ヨーロッパを拠点とする別の VC に資金を投資していく。
VentureEU のプロジェクトが発表されたのは、EU デジタル単一市場委員長の Andrus Ansip 氏が、人工知能(AI)、ブロックチェーン、ヘルスケアといった重要な技術に対するだとよ呼びかけたため投資をもっと増やすべきだと呼びかけたため。
Digital Day での講演の場で彼は次のように述べた。
ヨーロッパのテックセクターは、この地域が主導的な役割を果たすのに最も適した分野として AI やブロックチェーンがあるとみています。しかし、政治的、財政的な意味で投資しなくてはいけないことは周知の事実です。キャッチアップする余地はまだ数多くあります。欧州以外の大陸では急速に変化していますから。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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