実践型オープンイノベーション拡大ーーシェアリング「fabbit」中心にスタートアップ投資するAPAMAN、その戦略を紐解く

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2018.8.17

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投資戦略担当の鬼武辰憲氏、fabbit取締役

本誌読者のみなさんなら「アパマン(2018年から正式社名『APAMAN』)」と聞いて、パッと青い看板のお店が思い浮かぶ人も多いはずだ。国内ではセンチュリー21・ジャパン、エイブルなどと並び、主要な事業者として上位にリストされている賃貸仲介事業者になる。

最近、このアパマンの名前をスタートアップ取材の際に聞くことが増えてきた。きっかけは本誌も参加している福岡の創業拠点「growthnext」の運営やスマートロックのTsumug、パークシェアの軒先への出資などが話題としてある。

興味深いのは同社が子会社で、コワーキングスペースを運営する「fabbit」を中心に投資戦略を推進しているところだ。今年8月にはグループ会社を通じてクラウドファンディングのCAMPFIREと資本業務提携を締結し、相互送客などの連携も始めている。

通常、ソーシングを期待して多くの提携先を模索する場合、既存のVCファンドにLPとして出資したり、場合によっては専業のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を窓口として設立する事例が見られる。

特に2010年以降に登場したアクセラレーションプログラムは新興企業投資を一定のフォーマットに落とし込んだ点が特徴的で、多くの企業が採用、拡大したのはご存知の通りだ。

例えば国内先駆けのひとつ、KDDI ∞ Laboは投資ファンド「KOIF」と合わせることで経済的な説明責任も果たしつつ、ソラコムの買収も成功させている。一方、自社でのプログラムの運用には大きな労力が必要で、このスキームを終了させた事業者も多い。

APAMANの事例はイベント的な支援プログラムを持っているわけではないが、前述のfabbitを中心に据えることで、独自の投資・インキュベーションスキームを組んでいるのが目を引いた。

本稿ではそのハンズオン手法や同社の主力である賃貸事業の特性を活かした点などを整理してお伝えしたい。

「シェアリングエコノミー」への注力

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APAMAN IR資料(平成30年9月期より)

話の前にAPAMANの事業セグメントについて整理しておこう。彼らは2018年度に入ってから、事業セグメントを斡旋やPMといった賃貸中心の分類からSharing economy(民泊やコワーキングスペース、パーキングなど)、Platform(従来賃貸、不動産)、Cloud technology(不動産中心のクラウドサービス)に大きく変更している。

セグメント別の売上としては当然ながらPlatformが3Q累計で242億円(前年同期236億円)と大きいが、新たな主軸「Sharing economy」で新たな400億円規模の売上を見込んでいる。彼らはこれを実現するため、スタートアップ投資と完全買収を2ライン走らせている。

「企業買収についてはfabbitの規模拡大、スタートアップ投資についてはAPAMANの経営資源を最大化させるのが目的です」(投資戦略担当の鬼武辰憲氏、fabbit取締役)。

現在のfabbitは国内23施設、海外に12施設を運営しており、会員数は約3000名に拡大している。買収についてはこの拠点数を300箇所に拡大することが目的で、平たく言えば、類似の事業をやっている企業を買収しているという具合になる。

コワーキングスペースの事業自体は、WeWorkのように拠点数を一気に拡大して大きなカーブを掘るというよりは、拠点毎に採算性を担保して広げていく地道な戦略を採用しているという話だった。

そしてこの拠点で面を作りながら進める、もうひとつの拡大戦略がスタートアップ投資になる。

シェアリング旗艦事業「fabbit」中心のスタートアップ投資

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APAMANグループが出資するコネクテッドロックのTsumug

例えばAPAMANが持つ「駐車場の情報」は100万箇所に及ぶそうなのだが、ここをシェアして新たな事業にすべく昨年11月にパーキングシェアの軒先へ出資をしている。自身がコワーキングスペースというシェアリング事業を推進しつつ、同様のモデルで展開する民泊については運営管理を手がけるグランデュース、自転車のシェアではコネクテッドロックのTsumugに出資をした。

つまりAPAMANは自社に集まるフロアや駐車場といった「不動産情報」をシェアという文脈で再認識し、技術やサービスを持ったスタートアップと共にマネタイズする仕組みを作っているのだ。そのエコシステムでマッチングの役割を果たしているのが「fabbit」になる。

企業資産を外部企業の力で再発見する動きはオープンイノベーションと呼ばれ、CVCやアクセラレーションプログラムが乱立しているのは前述の通り。しかし投資は当然ながら失敗確率の方が高い。さらに言えば回収までにかかる時間軸は長く、結果の見えにくい担当者が周囲からの白い目に晒されるという話もしばしば耳にする。

fabbitのモデルは自社の強みを活かして旗艦事業を自ら作り、周辺アイデアについては投資によって拡大を図る。出資サイドが事業に詳しければ、出資を受けたスタートアップ側も一緒に成長しようという意識が働く。

「スタートアップ投資についてはAPAMANは上場まで付き合う伴走の考え方で支援してます。例えば営業では1億円の売上があったとしてそれを6割、7割支援するようなモデルです」(鬼武氏)。

CVC、特に純粋投資のモデルではなく、完全に本体事業のシナジーを作り出す目的なのでハンズオンが手厚いのはよく理解できる。

ただ、この辺りの動きはこのエコシステムを牽引する大村浩次氏が創業社長であることも大きく影響しているのだろう。利益期待は当然だが、それ以上に創業事業の拡大は我が子の成長に重なる人生イベントに近い。これは創業社長でなければなかなか理解しづらいところだ。

鬼武氏の説明では、スタートアップ投資については移動やスペースなど現在取り組んでいるもの以外にも、スキルやコンテンツ、決済など、事業に関わるアイデアを持ったスタートアップに積極投資するという話だった。

APAMANのチャレンジが新たな400億円という結果を出すかどうか、エコシステム含めて注視したい。

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