成長するスタートアップにとって、オフィス探しは悩みの種だ。事業における成長痛は永年のテーマだが、日本の一大スタートアップハブである渋谷にオフィスを構えようとすると、この地域特有の難題が立ちはだかる。駅前で数多くの再開発が進むものの、想定されるテナントはユニコーンか上場を果たしたテック大手が主流。創業まもないスタートアップは、日々の事業開発に汗しながら摩天楼を仰ぐ毎日だ。一方で、築年数深めの小ぶりな物件も渋谷には数多いが、少人数向けであったり、昔ながらの設計・工法のため柱が多く不便だったりする。
かくして、シードスタートアップとして立ち上がった当初はオフィスも確保でき、レイターステージにおいては黙っていても良質物件を不動産業者が持って来てくれることになるのだろうが、そのシードとレイターをつなぐ間のオフィスの選択肢が少ない。ひところ前に言われた、資金調達における「シリーズ A クランチ」に似ているかもしれない。オフィスリノベーションに特化していることで知られるツクルバが、先ごろ「HEYSHA(ヘイシャ)」という新ブランドを立ち上げた。この HEYSHA が、オフィスの「シリーズ A クランチ」に悩むスタートアップにとっての救世主になるかもしれない。
11日、渋谷・松濤の東急本店前に HEYSHA の第1号物件が完成、財務分析AI開発スタートアップの xenodata lab.(ゼノデータ・ラボ)が移転・入居し営業を開始した。xenodata は以前、恵比寿〜広尾の一軒家をオフィスとして使って営業していたが、先ごろ発表したダウ・ジョーンズとの業務提携による将来予測 AI の開発を本格化させることを受けて、増床を計画していたとのこと。xenodata では遠隔で作業しているエンジニアも多いとのことだが、オフィスで仕事する社員の交通アクセスや利便性向上も考慮し、この地に新オフィスを構えることを決めたという。
HEYSHA の開発・運営を行うツクルバ代表取締役 CCO の中村真広氏によれば、HEYSHA の平均的な広さは40〜80坪程度で、15〜50人規模のチームがターゲット。比較的短期間の入居(最短3ヶ月間)を想定し、家具や設備を設置した状態で提供され、敷金や礼金なども大幅に削減される。チームの成長と共に、ほどなく大きなスペースへの移転を余儀なくされる成長著しいスタートアップには親和性が高い選択肢と言えるだろう。現テナント退去後は、次のスタートアップが入居して使うことになるので、オフィスにひどい汚れや破損が無ければ原状復帰の費用も不要だ。
HEYSHA のビジネスは、空いた物件にタイミングよく客付をし回していけるかどうかで決まる。ツクルバでは、同社が運営するコワーキングスペース「co-ba」にいるチームを HEYSHA の潜在顧客と位置づけており、事業の成長に応じて一定の人数規模に拡大し、独立した中規模オフィスが必要となったチームに対して HEYSHA の営業を進めていきたい考え。HEYSHA に入居後成長を遂げ、さらに手狭になったスタートアップには、一般不動産物件によるオフィススペースの紹介やプロデュースを提供したいとしている。HEYSHA は広域渋谷圏に展開する計画で、近日中に第2号物件が渋谷・神南に完成する見込みだ。
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