カナダのウェアラブル企業Thalmic LabsがNorthに社名変更、Alexa対応のホログラフィック搭載スマートグラス「Focals」を999米ドルで発売へ

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Focals
Image credit: North

順調に資金調達を進めてきたウエアラブル企業 Thalmic Labs はもはや存在しない。このカナダのスタートアップは23日、今後 North と社名を改めると発表した。しかし、それより重要なのは Thalmic Labs North がついに、同社2番目のプロダクトとなるホログラフィック搭載スマートグラスを発表したのだ。

新しいカスタムビルドされたウエラブルスポーツグラスは Focals と名付けられ、内蔵ディスプレイがメッセージ、天気予報、ナビゲーション指示など、スマートフォンからの情報をユーザに向け表示する。また、Uber を呼べるほか、カレンダー通知や Alexa を呼び出してあらゆる情報をリクエストすることも可能だ。

スペックの楽しさ

今回の調達より2年前、North は Amazon の Alexa Fund、Intel Capial、Fidelity Investment Canada から1億2,000万ドルを調達。その当時、同社は調達した資金を新製品の開発に使うとしていた。

これまでのところ、North が世の中に公開したプロダクトはたった一つ、200ドルのアームバンド「Myo」のみだ。Myo は、腕を失った人がジェスチャーやモーションで義手を操作できるデバイスとして、あるいは、複雑な手術を行う外科医が画面をナビゲートするのに使えるデバイスだ。DJ の Armin van Buuren 氏は、Myo を使ってステージ上のエフェクトや照明を操作した。

しかし2週間前、North は新製品にすべての力を注ぐという理由から、Myo の販売を取りやめると発表。ニューヨークやトロントに掲げられた広告から、同社が新しいスマートグラスを開発中であると先月から噂され始めていた。VentureBeat は North の CEO で共同創業者の Stephen Lake 氏と詳細について話を聞き、North がこれまで作ってきたものの全貌を明らかにできることとなった。

Focals は Bluetooth で Android や iOS デバイスと接続するが、North が Loop と呼ぶ追加ハードウェアを必要とする。Loop は指に装着する小さな指輪で、クリックすることで Focals を操作することができる。

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クラシックスタイルの Focals と Loop

Focals のコンピュータは、一方のテンプル(メガネのツル)の部分に埋め込まれていて、小さな網膜プロジェクターが突出している。

Alexa への質問に対応できるよう内蔵マイクもついている。情報は、視野に表示させることもできるし、小型スピーカーを通じて音声出力することも可能。

Amazon は最終の調達ラウンドでの主要投資家の一社であるが、North が Amazon と直接協業し Alexa の技術を搭載しているのは興味深い。Amazon は以前スマートグラス用に最適化した Alexa 体験を開発しており、この技術を Vuzix の AR グラスとあわせて今年初めにデビューさせている。それをふまえ、Vuzix は実際に同社の AR グラス「Blade」の消費者向けモデルを先週発表しているが、来月の発売に際し Alexa が搭載されるかどうかは明らかでない。

購入場所

North は23日から999ドルで Focals の予約注文を開始しており、スタイルは2種(クラシック型と丸型)、色は3種(ブラック、亀色、グレー)がある。North が装着者毎に Focals をカスタマイズする必要があることを考えると、今日の最もよく接続されたガジェットのように、オンラインでオーダーすることはできない。2カ所ある同社のショールームの一つを予約し訪問することになる。ショールームの住所は、トロント店が 109 Ossington Street、ニューヨーク店が 178 Court Street, Brooklyn だ。

アイウェアは信じられないほどパーソナルだ。グラスを買うと、そのフィット感とパーソナライズされた表現で、自分にピッタリである感覚を実感できるだろう。このプロセスは、今日のコンシューマエレクトロニクスの構築のされ方、販売方法とは大きく違っている。(Lake 氏)

最近の電子ガジェット同様、電池の寿命は Focals の顧客にとって重要な関心事項となるだろう。特に、苦労して稼いだお金の中から999米ドル支払うならなおのこと。Lake 氏は標準的な利用状況であれば、一回の充電で18時間はもつだろうと答えた。Loop の電池寿命はさらに長い。バンドルされるキャリーケースは、Focals と Loop 用の充電機能を兼ね備えている。

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ケースに入った Focals

Google Glass との違い

North は、Focals のようなプロダクトを最初に開発した企業ではない。Google は Google Glass という形で、Focals の前身とも言うべきものを提供していたが、Google Glass は昨年実施されたファームウェア更新にもかかわらず、多かれ少なかれ死んだ状態だ。

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処方に基づいたレンズが装着された Google Glass
Image credit: Wikimedia Commons

しかし、Google Glass は、それが最高とされた時期でさえ、最もエレガントなソリューションではなかった。これこそ、North が改善しようとしていることで、誰もが装着したいと思えるものを作るということなのだ。

これまでにも、人々がかけたいと思うスマートグラスの開発に挑戦し失敗した企業は存在する。彼らが開発したのは顔に装着できるコンピュータで、メガネであるとの考えは後に置かれたからだ。我々は違う方法でやる。Focals はメガネであることを第一に設計し、コンピュータを内部に隠すことができる新技術を発明した。(Lake 氏)

Intel もまた、Vaunt と呼ばれる類似したスマートグラスプロジェクトに着手していたが、今年初め、このビジネスを閉鎖すると発表している。

Thalmic Labs から North へ

Lake 氏は、スマートグラスを開発し始めた理由の一つは、Myo での体験に由来すると VentureBeat に語った。Myo が提案したユースケースの一つは、Google Glass などサードパーティのスマートグラスと連携させ、工業用環境でスマートグラスのスクリーン上に表示された情報の操作に使われるというものだった。しかし、Thalmic Labs はしばしば、この使われ方が平均以下であることを悟り、スマートグラスをインターフェイスとして改善することに焦点を移した。

Myo がお蔵入りとなり、新しい名前とコンシューマプロダクトを手にした North は、まだ盛り上がっていないカテゴリで頭角を表そうとしている。消費者は、スマートフォンをポケットに入れたままにしおけるという特権のために999米ドルを払うだろうか? まだその結論は明らかになっていない。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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