日本人起業家がラーメンで米国市場を制す!「Ramen Hero」が米国著名アクセラレータ「AngelPad」卒業を発表

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Image Credit: Ramen Hero

2019年3月7日、長谷川浩之氏がサンフランシスコで創業した「Ramen Hero」が米国著名アクセラレータ「AngelPad 」のプログラムを卒業したことを発表した。日本人起業家で同アクセラレータ・プログラムを卒業するのは初である。

Ramen Heroは2018年から本格展開を始めたラーメンスタートアップである。米国ミールキットサービス「BlueApron」同様に、冷凍処理されたラーメンキットが毎週配達される。「本物のラーメンを届ける」ことをミッションに置く。

味噌ラーメンから豚骨ラーメンまで、現在メニュー数は9種類に及ぶ。展開エリアはカリフォルニア・オレゴン・ワシントン州の3州。2018年の合計売上高は10万ドル、注文数は1,900を達成した。2018年第4四半期の売上高は第1四半期比で約7倍へと成長(数値はカリフォルニア州のみ)。

米国市場におけるラーメン店舗数は2006年の235から2016年には1,200にまで成長したという。年間出店成長数は15〜20%の高い成長率を誇る。

前述の通り、米国を中心にラーメンは寿司と並ぶほどの市民権を獲得し始めている。しかし米国ではラーメン店舗が増え続けている一方、クオリティの高い店舗は限りなく少なくそういった店舗では1〜2時間の行列が当たり前に発生、非常にアクセスしづらい問題が発生していた。そこでRamen Heroはこの市場ギャップに目をつけEC特化のラーメン屋の立ち上げを決めた。

Image Credit: AngelPad

AngelPadはニューヨークとサンフランシスコに拠点をアクセラレータ。2010年の立ち上げから約140社のスタートアップを輩出した。代表的な輩出企業にはオンデマンド配達サービス「Postmates」やSNS予約投稿サービス「Buffer」が挙げられる。

半年に一度、約2,000通の応募の中から15社を選出してプログラムを実施。2016年から「Y Combinator」や「Techstars」と並び、アクセラレータカテゴリー最高クラスのプラチナム・プラスの称号を得ている

他社が比較的大規模にプログラムを展開する中、AngelPadは小規模でみっちりとスタートアップを育てるスタイルを貫き、メディアや投資家からはしばしば「アンチ Y Combinator」と呼ばれる存在になっている。

長谷川:大学時代には週5日以上新しいラーメン屋開拓をするほど幼い頃からラーメンが好きでした。しかし米国ではラーメン市場が盛り上がっている反面、クオリティの高い店が少なく、数少ない良い店は大行列で美味しいラーメンにアクセスしづらい。日本とは大きなギャップのある実情を見てラーメン事業のアイデアを思いつきました。

アイデアが浮かんでからすぐに日本のラーメン専門学校に修行へ。再帰国後にオフィスケータリングやホームパーティーでラーメンを提供しながらお客さんからフィードバックをもらいました。

試作を作り続けていくなかで商圏に制限のないミールキットサービスを試してみようと考えました。すぐにKickstarterで小さなキャンペーンをローンチ、2日経たずに成功したことからニーズが確実にあると実感。そこから本日のRamen Heroに至ります。

将来的にはB2B向けの展開も考えておりRamen Heroブランドのラーメンが食べられる店舗を全米に展開、誰もがクオリティの高いラーメンに手軽にアクセスできるネットワークを増やしていきたいと考えています。これはBlueApronのような分野横断型のミールキットと異なり、Ramen Heroが単一カテゴリに特化しているために取れる戦略です。

米国では必ず“Ramen”は次の“Sushi”となると確信しています。この市場トレンドに乗っかり米国No.1のラーメンブランドを作りたいと思っています。

筆者がサンフランシスコにいた頃、創業者の長谷川氏とは一緒のシェアハウスに住んでいた。当時は投資家が手軽にスタートアップへ投資できる全く別のアイデアを家で話していた記憶があるが、ある日突然Ramen Heroを思い付き、一時帰国をして香川県のラーメン専門学校へ修行の旅に出掛けて行ってしまった。

正直に言うと、当時はなぜラーメン事業にポテンシャルがあるかもピンと来なかった。また、0からミールキットサービスを立ち上げるには食料の調達から物流まで、あらゆることをこなさなければならない困難が待ち受けることが容易く想像できた。

いわゆる本屋に並ぶ起業家向けビジネス書に倣えば、スタートアップが立ち入るべき領域ではなかったのは明らかであった。しかし、サンフランシスコで出会ってから数年越しに彼の記事を執筆していると、筆者が持っていた「スタートアップのテンプレート」が全く通じないことに改めて気付かされる。

たしかにSaaS分野とは違い時間はかかるかもしれない。しかしシンプルに顧客の課題解決を目指せば、たとえリアルビジネスであっても成長の芽を摘むことなくスタートアップとして大きく成長できると思わされる。急成長を遂げられる「ティッピングポイント」をいずれは迎えられる好例になるに違いないと感じさせられる。

AngelPadのプログラム卒業は、長谷川氏の完全な逆張りと諦めずにオペレーション確立を数年をかけて着実に行ってきた成果がようやく実を結び始めた証左であろう。

この半年ほどでサンフランシスコに渡った同世代の起業家たちの嬉しいニュースをたくさん聞くようになり、徐々に国外で活躍する日本起業家たちが大きな台風の目を作りつつある。Ramen Heroもその一翼になることは本件で確実になるはずだ。

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