再生医療に免疫、ICTから医療は変わるーー創薬系注目の8社、注目トレンドと企業/Beyond Next Ventures 代表取締役 伊藤毅氏

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本稿は東京都が主催する創薬系ベンチャー支援プログラム「Blockbuster TOKYO」による寄稿転載。医薬品/創薬、医療、創薬支援/受託サービスなどを手がけるベンチャー、起業家を対象に昨年6月から選抜・育成プログラム運営している。3月27日には成果を披露する「ビジネスプラン発表会」を開催予定

増大する医療費や高齢化などの社会変化を考えると、創薬・医療領域はますますのイノベーションが求められています。

背景として創薬業界の変化があります。例えば従来、医薬品の多くを占めてきた低分子医薬品に変わり、中分子・高分子医薬品に注目が集まるようになりました。また再生医療、細胞治療、遺伝子治療などの新たな技術領域にも光が当たりはじめ、近年のデジタル技術の発展は創薬業界でも影響力を色濃くしています。またそれらに応じ、疾患への理解と高度な医療への理解、より効率的な創薬、新しい保険システムの構築など、業界のニーズも大きな地殻変動に見舞われています。

こういった状況に対応すべく、Beyond Next Venturesでは昨年から東京都とタッグを組んで「Blockbuster TOKYO」を立ち上げました。創薬系ベンチャーを支援し、ビジネスと研究を繋げる機会創出が狙いです。3月27日には「ビジネスプラン発表会」としてプログラム参加者の成果も披露いたします。

そこで本稿では発表会に先立ち、3回に渡って関係する人々を繋ぎ、この分野に関する知見を共有する機会を作ることにしました。初回は「Blockbuster TOKYO」を運営するBeyond Next Ventures代表取締役の伊藤毅から開始させていただきます(太字の質問は編集部、回答は伊藤)。

創薬・医療分野はCB InsightsのユニコーンリストにもSamumed(再生医療、120億ドル評価)、Roivant Sciences(新薬開発、70億ドル評価)、23andMe(遺伝子検査、17億ドル評価)など、バイオ・ヘルスケア領域で数十社規模で1000億円評価を超える未公開企業がリストされる激戦区になっています。まずは国内の状況から教えてもらえますか

伊藤:グローバルでみると、創薬系ベンチャーが果たす役割は今までになく大きくなっています。例えば2016年には22の医薬品がFDA(米食品医薬品局)から認証を得ましたが、そのうち実に15個がベンチャー企業によって開発されています。

ただ残念ながら、そのリストのうちに日本企業は1社も見当たりません。日本は本庶佑先生が昨年のノーベル医学・生理学賞を受賞されたことも記憶に新しく、一流の技術シーズが多く眠っているものの、それを事業化へ導く産学連携のエコシステムが不足しているという認識です。もちろん日本にも創薬領域で活躍するベンチャーは存在しますが、まだまだ数を増やしていく必要があります。

具体的に「創薬」を担う企業にはどのような例がありますか

伊藤:リベロセラ社やアイバイオズ社は複数のパイプラインを持って医薬品の開発を手がけるいわゆる創薬ベンチャーになります。リベロセラ社では、重要な創薬標的として注目されながらも、その扱いの難しさから創薬の標的になり得なかった膜タンパク質を、生体内に限りなく近い状態で高純度に大量調製することにより、その膜タンパク質に対する医薬品開発を実施します。

アイバオズ社では、クローン病を最初のターゲット疾患とし、その他「日本の優れたアカデミア創薬シーズを早期発掘し、効率よく開発することにより、アンメットニーズの高い治療法を確立する」ことを目指しています。

エコシステムが育たない理由は

伊藤:大学の例を見ると、日本の大学は米国に比肩する研究資金を保有していますが、ライセンス収入となると米国の100分の1以下になり、大学の技術を産業界で活かす余地がまだまだあります。また、事業化に向けて研究者と経営人材の交流も重要なポイントです。

こういった人材をマッチングする「Co-founders」や、バイオ系ベンチャーに研究開発の場を提供するシェアラボ「Beyond BioLAB TOKYO」、アクセラレーションプログラム「Blockbuster TOKYO」、「BRAVE」を運営しているのですが、こういったサポートを通じてベンチャーを取り巻く環境を改善することが創薬系ベンチャーの成長を加速させることに繋がると考えています。

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少し質問を変えます。注目している技術や分野について教えてください

伊藤:いくつかありますが、一つが再生医療・細胞治療領域です。日本では、2014年に医薬品医療機器等法(改正薬事法)が施行され、それまで非常に保守的であった環境が一変しています。新薬を世に出すまでのハードルが下がり、先進的な試みができる環境が整いました。

再生医療はiPS細胞の影響もあって報道される機会も増えています

伊藤:この領域ではメトセラ社(心不全治療)やマイオリッジ社(iPS細胞由来心筋細胞の応用)、Promethera Biosciences社(細胞医薬)などに投資をしています。幹細胞等を用いて人体組織そのものを補填するという従来とは異なるアプローチをとるこの領域が発展すれば、治療法が確立されていない疾患に対して新たな解決策となると期待しています。

さらにこの領域は医療にとどまらず、再生医療技術を基にした細胞農業ビジネスを手掛けるインテグリカルチャー社のような例もあります。

また、がんの免疫療法にも注目しています。免疫療法は、免疫細胞ががん細胞だけを攻撃する点に大きな価値があり、世界的にはがん治療の開発は免疫療法にシフトしています。数年のうちにがん治療の主流に加わることも考えられ、Repertoire Genesis社(免疫多様性解析)などの企業に投資しています。がん関係では、ミルテル社のようにリキッドバイオプシー(血液検査)によるがん等の疾患リスク検査サービスのような技術も出てきています。

スマートフォンやモバイル通信をはじめとする情報産業などのテクノロジーシフトもここ数年大きなトレンドですが、創薬・医療分野への影響はどのようにみていますか

伊藤:ICTと医療の融合領域ですね。こちらも治療用アプリを手掛けるキュア・アップ社や治療用アプリと効率的な治験データ管理システムも提供するサスメド社などに注目して投資もしています。

創薬において、データ活用の必要性がこれまで以上に叫ばれています。創薬プロセスの効率化の面では、深層学習などのAIモデルを用いたターゲットスクリーニングや、リモートで治験を行うバーチャル治験などの試みが行われています。治療の面では、日々の生体データを解析することによって、リアルタイムで患者の行動変容を促すような新たな治療・予防法が登場しています。今後これらの技術とともに、医療がどのような変貌を遂げるのか、注目したいところです。

ありがとうございました。バトンを次にお渡しします。

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