「国内30万人の失明疾患を克服したい」ーー注目集まる「創薬」トレンドと企業/レストアビジョン代表取締役、堅田侑作氏

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本稿は東京都が主催する創薬系ベンチャー育成プログラム「Blockbuster TOKYO」による寄稿転載。医薬品/創薬、医療、創薬支援/受託サービスなどを手がけるベンチャー、起業家を対象に昨年6月から選抜・育成プログラム運営している。3月27日には成果を披露する「ビジネスプラン発表会」を開催予定

前回からの続き。本稿では発表会に先立ち、3回に渡って創薬に関係する人々を繋ぎ、この分野に関する知見を共有する機会を作ることにしました。トップバッターのBeyond Next Ventures代表取締役、伊藤毅からバトンをお渡しするのはBlockbuster TOKYOに参加するレストアビジョン代表取締役、堅田侑作氏です。(太字の質問は編集部、回答は堅田氏)。

このインタビューでは創薬分野で新しく立ち上がりつつあるエコシステムに参加するスタートアップの方にその理由や起業の経緯などをお聞きしています。堅田さんの取り組みについてまず教えてください

堅田:弊社では現在治療法のない網膜色素変性症を対象に、当社独自のタンパク質であるキメラロドプシンを利用した視覚再生遺伝子治療薬を開発しています。国内の視覚障害者は30万人以上いらっしゃって、その多くは未だ予防法や治療法の確立されない難病によるものです。

視覚は、ヒトが外部から得る情報の80%以上を占めると言われており、視覚を失うことによる、ご本人や周囲の人の負担は相当なものです。

このような難治性眼疾患を対象に最新のテクノロジーを用いて治療法を開発し、失明疾患を克服するのが私たちレストアビジョンの取り組みです。現在、名古屋工業大学生命・応用化学科の神取秀樹研究室と慶應義塾大学眼科光生物学栗原研究室の研究成果をもとに視覚再生遺伝子治療薬の創薬を目指しております。

堅田さんは元々、創薬分野でスタートアップすることを考えておられたのでしょうか

堅田:実は当初、私自身が起業しようと思ったわけではなく、大学院での研究ののちに乗るべき船(会社)を教授が用意してくれていた、というのが正確なところなんです(笑。

眼疾患の治療研究を手がけるようになったのはどういうきっかけなんですか

堅田:もともと、遺伝子工学に興味があって研究医を目指して医学部を選択しました。その後、眼科を選んだのも、先端技術の応用可能性が広い分野だったからです。しかし、医薬品開発は大手製薬企業が行うものだという固定観念がありましたので、起業ということは想定外でした。

おそらく私のように日本では研究に興味はあるが開発は企業の役割、もしくはアカデミアのキャリアに直結しないし、すべきでないと考えている方はまだまだ多いです。

なるほど。そういった通例・前例がある分野から起業を選択するのは難しい判断ですよね

堅田:そうかもしれません。ただ、世界的に創薬シーズの開発の主体は大手製薬からアカデミア発ベンチャーへと移っているというトレンドもあるんです。また、私の上司である慶應義塾大学眼科の坪田一男教授は、国内でいち早くアカデミアの産業創生の重要性を説き、教授自身も起業家であったため、私がこういった機会に巡り会うきっかけのひとつになっています。

今回、東京都が主催し、Beyond Next Ventures株式会社が運営する創薬ベンチャー育成支援プログラムにも参加されていますが、具体的にエコシステムの必要性を感じた場面は

堅田:やはり研究者だけで勢いで立ち上げた弊社に完全に欠けていた開発・経営分野の専門的な支援は大きな後押しになってます。

この半年でプロジェクトを加速することができましたし、それ以外にも、官民ともにさまざまなベンチャー支援施策がどんどん立ち上がっており、日本全体で創薬のベンチャーエコシステムを創る流れができているなと感じることが多いです。

実際にスタートアップしてみて、業界内でのベンチャーの役割をどう感じていますか

堅田:遺伝子治療は、近年欧米でがんや難病の新しい治療薬として承認される例が相次ぐ一方、日本では製薬会社による治験は少なく、大きな出遅れが指摘されています。ベンチャーが果たす役割が非常に大きい分野なんです。

日本ではやっと本年5月に国内ベンチャーによる初の遺伝子治療薬が上市される予定で、今後、多くの製品が出てくるようになります。政府も遺伝子治療関連の予算を増額するなど、国としても本格的な後押しがやっと始まりました。

創薬では新薬や情報サービスなど、研究開発の側面が大きいのは当然なのですが、事業者としてビジネス面でのチャンスをどう捉えていますか

堅田:医薬品・医療機器の貿易赤字は2兆円を超えています。現場で患者さんの治療にやりがいを感じる反面、処方や手術のたびに国民のお金が海外に流れてしまうことをくやしく感じていました。創薬ベンチャーは患者さんの幸せにも日本経済にも両方に貢献できる、とてもやりがいのある仕事だと感じてますよ。

弊社自身の成功はもちろんですが、エコシステム全体で国内のバイオベンチャーとそれを取り巻く環境醸成が盛り上がってほしいと願ってます。

ありがとうございました。バトンを次の方にお渡しします

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