創業5周年を迎えたIoT家具スタートアップKAMARQ、元LIFULL CSOの小沼佳久氏をCOOに招聘——まちづくり参画などで海外事業を加速

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2019.7.8

シンガポールの KAMARQ HOLDINGS 本社ベランダで語り合う、
CEO 和田直希氏(右)と COO 小沼佳久氏(左)。
Image credit: Masaru Ikeda

高品質でインターネットにつながる家具ブランド「KAMARQ(カマルク)」を展開する KAMARQ HOLDINGS(以下、KAMARQ と略す)は先月、創業から5周年を迎えた。創業からこれまでに約17億円を調達(うち、4億円程度のデットを含む)、昨年立ち上げた家具のサブスクリプションサービスを運営する subsclife は今年4月に1億円の資金調達に成功している

事業開始から一つの節目を迎えたこのタイミングで、KAMARQ に新メンバーが正式に加わったことが明らかになった。元 LIFULL CSO で、LIFULL(東証:2120)グループ全体の M&A・投資・子会社・統括を担い、CVC の LIFULL Ventures の立ち上げを手がけた小沼佳久氏だ。KAMARQ は2017年11月に LIFULL から約4億円を調達しており、小沼氏はまさにこの際の KAMARQ にとっての LIFULL 側のカウンターパートということになる。

小沼氏は昨年から出向ベースで KAMARQ の執行役員を担っていたが、KAMARQ CEO の和田直希氏とジャカルタ郊外の家具工場へ向かう車中、和田氏が呟いた「家具から、まちづくりをしたい」という夢に魅せられ意気投合。小沼氏は LIFULL を離れ、家族全員で KAMARQ のあるシンガポールに移り住み、満を持して事業にコミットすることとなった。

一気通貫でプロダクトを作れるチーム作り

KAMARQ の IoT ドア「Memory Door」
Image credit: Kamarq Holdings

5年というタイムスパンは、有望なスタートアップがユニコーンに成長するには十分な時間かもしれない。ただ、ものづくり系スタートアップでこれをやるのは、なかなかな難しさを伴う。生産体制の確立には、サプライチェーンの確保や製造ラインへの資本投下など、短期間でのスケールアップを阻む障害と対峙しなければならないからだ。この問題を回避するために〝スタートアップあるある〟なのは、既存メーカーをネットワークしての製造委託やファブレス化なのだが、KAMARQ は敢えて、製品を自前で開発・供給できる一貫体制を目指した。

KAMARQ は2017年、鹿児島に本拠を置く M2M/IoT ソリューションプロバイダのコムツァイトを買収、カマルク特定技術研究所として IoT 技術を供給するチームを内製化した。2018年にはケイアイスター不動産(東証:3465)から約5億円を調達、この資金を元に Kamarq Manufacturing Indonesia を設立し製造工場を拡充。材料の調達からエンドユーザ管理までを行える家具の D2C 形態を完成させた。自社で実現できることが増えるにつれ、組織は大きくなっていく。そんな成長過程にある中で、小沼氏が経営チームに加わったことには大きな意味があると和田氏は語る。

経営からメッセージが一人からのワンメッセージだと、組織が大きくなってきたときに、全員をまかなえなくなってくる。(社長である)自分が事業の絵を大きく書いて、(自分だけでそれを切り回すよりも)それが実行できる経営メンバーの体制を作って、ガーッと成長させた方がいいのではないか、と。(中略)

18の頃から連続起業家としてやってきて、その方がうまく事業がうまくいっている、というのが印象。それから、海外展開などで担当者に任せて現地に行ってもらうよりも、社長が自ら現地にやってきている会社の方が成功しているように思う。日本という市場は大切だけど、インドネシアも拠点だし、デザインの最先端であるニューヨークも取り入れて、世界規模で事業をやっていく。

家具づくりから、まちづくりへ

KAMARQ の Memory Door が導入される、ジャカルタの分譲マンションプロジェクト「SOUTHGATE」全景
Image credit: Sinarmas Land

KAMARQ が手がけるのは IoT 家具や高品質家具だが、実際にはその向こうにある、より大きな市場を掴みに行こうとしているようだ。同社が開発した温度・湿度など各種センサーを搭載した IoT ドア「Memory Door」は、インドネシアの大手財閥 Sinarmas らが開発する分譲マンションプロジェクト「SOUTHGATE」に採用されることが決定している。今夏には、KAMARQ の一連の IoT 家具を一元管理できるモバイルアプリがローンチする予定で、家具だけでなくスマートホームの機能の一端を担うことになる。

まちづくりをするのに、なぜ家具づくりからアプローチしているのか? その疑問に和田氏は次のように答えてくれた。

家を買うときに、どんな家を買うのにどこで買えばいいのか、というのは、なかなかわかりにくいもの。長年にわたって家を探しているわけでもない限り、特に時間的猶予のない時はそうだ。

でも、家具なら、いい家具を面白い形で、ユニークなものを出して行ったら、その場で買ってもらえる。そうやって、この市場を取れるんじゃないだろうか。

家を定義するのは、その家が位置する周辺環境や建物外観が半分とすれば、その家の中の環境、すなわち自分を取り巻く家具や室内環境が残りの半分を占めることになる。一般的には、住宅メーカーや不動産屋で決定できるのは主に外側の部分のみ。残りの家の内側の部分に、まちづくり、ひいては人々のライフスタイルに密接に関わる、大きな市場の可能性があるというわけだ。

KAMARQ では今後、東南アジアなどで複数のまちづくりに参加する模様。街の中のインフラに KAMARQ が提供する製品がフルパッケージで入っていくことで、さらにもう一歩進んだ市場展開を狙いたい、と和田氏は抱負を語ってくれた。

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