起業家・フリーランサーの自立支援展開ITプロパートナーズ、エン・ジャパンと金融機関3行から約10億円を調達

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左から:エン・ジャパン 代表取締役社長 鈴木孝二氏、IT プロパートナーズ 代表取締役 木村直人氏
Image credit: ITPro Partners

起業家やフリーランサー向けに、1週間に最少2日間からの業務請負や受託業務を紹介する IT プロパートナーズは23日、資金調達したことを明らかにした。調達金額は、人材サービス大手のエン・ジャパン(東証:4849)のエクイティファイナンスと、金融機関3行からのデットファイナンスで合計約10億円。

今回の調達は、IT プロパートナーズにとって外部からのエクイティファイナンスとしては初のものとなる。同社はデットファイナンスの調達元の金融機関を明らかにしていないが、これまでに、みずほ銀行・八千代銀行・商工中金(商工組合中央金庫)、西武信用金庫、北陸銀行、日本政策金融公庫から総額3.8億円を調達していることを明らかにしていた。

BRIDGE の取材に対し、IT プロパートナーズの創業者で代表取締役の木村直人氏は、調達資金を事業拡大のためのビジネス開発人材の獲得に費やすと語った。

事業拡大は主に2つの軸に大別でき、一つは働き方や働く人のステージに合わせたサービス提供の多角化。同社のコアサービスである起業家・フリーランサー支援事業に加え、新卒向けの教育型就活支援サービス「intee(インティ)」、社会人向けの基礎知識やコーディングなどが学べるキャリア形成サービス「Graspy(グラスピー)」を運営しているが、これらに注力する。

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もう一つは、扱う業種の多角化だ。IT プロパートナーズの社名が象徴しているように、同社が最も得意とするのは IT 分野の人材だが(約35,000人が登録または稼働、約2,500社が利用している)、HR や採用分野の取扱も始めたところ、これまでに800名程の人材が登録しているという。木村氏は、経理や財務など、さまざまな業種への横展開を図っていきたいと語った。

企業の中でも、(例えば、CxO など)エース級の仕事をする人たちの、働き方に対する考えも変わってきている。当然の流れと言えば当然の流れだが、掛け持ちしていいよ、とフリーランスや自営の人たちを起用することにも寛容になってきている。(中略)

事実、IT プロパートナーズも社内に CFO はいない。週に一度、財務を見てもらえる人に来てもらう形でここまでやってきた。(木村氏)

エン・ジャパンからの調達

Image credit: ITPro Partners

今年、創業から6年目に突入した IT プロパートナーズだが、2017年下期に記された木村氏の投稿によれば、同社は現在、売上高30億円を視野に置いているとみられる。事業的には黒字であり、また、金融機関からのデットもできていることから、資金面からのエクイティファイナンスの必要性は考えにくい。

現在の業績を考えると、今後、IT プロパートナーズがおそらく競っていくところは、上場会社や相当な売上規模を持っている企業ばかり。そう考えると、このままの成長ではダメじゃないかと思った。エン・ジャパンの顧客基盤は非常に大きい。事業に対する考え方も共感でき、互いのバリューを高められるとの考えから(出資してもらう)合意に至った。(木村氏)

事業に対するエン・ジャパンの姿勢が如実に現れているのが、同社が2018年から放映している CF にある「転職は慎重に。」というキャッチフレーズだ。人材紹介会社であるエン・ジャパンにとっては本来、より多くの転職を斡旋した方が売上につながる。利潤追求に相反するようなこのフレーズを敢えて掲げている理由については、エン・ジャパンの Web サイトに説明がある。

木村氏は、IT プロパートナーズにおいても同じ姿勢なのだと言う。起業家やフリーランサーの自立支援や案件紹介を数多くこなした方が売上にはつながるが、その人が置かれているフェーズによっては、それを勧めないことも厭わない。そういった価値観を鈴木氏(エン・ジャパン代表取締役社長)と共有できたことも、初めて外部からエクイティファイナンスを受けようとの判断につながったと言う。

エン・ジャパンから IT プロパートナーズへという同業間での出資であるが、純然たる出資であり、エン・ジャパンが IT プロパートナーズを子会社化したり、買収したりすることを想定したものではないそうだ。木村氏曰く、フリーランサーをネットワークするのには独自のノウハウが必要であり、エン・ジャパンがこの領域に新規進出する予定もないということで、両社は相互補完しながら事業拡大への邁進が可能になる。

IT プロパートナーズは、起業家支援ビジネスコンテスト「HATCH」、ユーザコミュニティ「Prolabo」を通じて潜在起業家を発掘、昨年末には出資も開始した。今回、エン・ジャパンなどから調達した資金は、これらの出資にも活用するとしている。

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