アルムナイ事業を展開するハッカズーク、シードラウンドでドリームインキュベータなどから数千万円を調達

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ハッカズークのチームメンバー。左から3人目が創業者で CEO の鈴木仁志氏。
(THE BRIDGE 向けということで橋上で撮影してもらいました)
Image credit: Hackazouk

アルムナイ特化型 SaaS「Official-Alumni.com」や、アルムナイに関するコンサルティングを提供するハッカズークは16日、プレシリーズ A ラウンドで、ドリームインキュベータ(東証:4310)、佐々木俊介氏(ポケラボ創業者、ジラフ執行役員)、名前非開示の個人投資家1名から資金調達したと発表した。調達金額は明らかにされていないが、関係者によれば、数千万円程度と見られる。この調達に先立ち、同社は昨年5月、岩田真一氏を含む個人投資家4名からエンジェルラウンドで1,000万円を調達している。

ハッカーズークは2017年7月の創業。CEO を務めるのは、以前、人材採用管理クラウド「ACCUUM」の記事で紹介したこともある鈴木仁志氏だ(ACCUUM はサービスを終了している)。これまでの人事採用では、CRM(採用候補者との関係性づくり)や ERM(就労中の従業員との関係性づくり)にのみ重きが置かれてきたが、いずれも会社を退職した時点で関係性が終わってしまう。これを大きな機会損失だと感じた鈴木氏はハッカーズークを設立し、ARM(Alumni Relationship Management)による人事採用支援を提供している。

アルムナイとは日本語では同窓生や卒業生と訳され、主に同じ大学などの出身者のコミュニティを指すことが多い。同じ組織の中で同じ文化を経験しているため、組織を出たあとも繋がりが維持されやすい。アメリカでは、マッキンゼーやアクセンチュアのほか、コンサルティングファーム大手の「BIG4」(Deloitte、PwC、KPMG、Ernst & Young)、日本ではセプテーニなどがアルムナイを活用した人材採用に積極的なのだという。現在では、アルムナイは元来の意味である同じアカデミアの出身者という定義を超え、「〇〇マフィア」「OB/OG」「××マフィア」といった言葉で表現される同じ企業の出身者も含むようになっているそうだ。

Image credit: Hackazouk

Official-Alumni.com は、企業が以前在籍した社員の退職後・転職後のステイタスを可視化できるプラットフォームだ。オンラインやオフラインで収集した情報をもとに、彼らのデモグラフィックスを獲得する。その情報をもとに、ハッカーズークはアルムナイコミュニティを活性化するにはどうすればいいか、そのエコシステムに入ってもらうにはどうすればいいのかを企業に提案する。ただ、ここにはさまざまなノウハウがあり、ユーザである企業にも努力を求められる。

何らかの理由で一度は会社を去っていったわけですから、何もせずして、その人たちに戻ってきてもらうというのは不可能です。会社を変え、アルムナイに対して give し続ける。タイミングや都合が合えば、戻ってきてくれるかもしれない。そういう粘り強さが必要です。(鈴木氏)

とはいえ、アルムナイは採用する側と採用される側の双方に大きなメリットがある。

Official-Alumni.com
Image credit: Hackazouk

企業にとっては、勤務経験のある人を採用することで、そうでない人を採用するに比べ、採用コストやリスクを減らすことができる。その人のスキルやバックグラウンドが分かっているからだ。以前在籍した会社への復職を希望する人にとっても、会社に過大な期待をする必要がなく、社風や勤務体系を把握できているから、全く新たな会社に転職するよりもリスクやストレスが少なくて済む。

鈴木氏によれば、アルムナイの活用が浸透していけば、人々が会社を退職する際の辞め方もよりポジティブに変わるだろうという。パラレルキャリアなどの隆盛により、一度、辞めた会社から懇願されて副業をするチャンスも増えるだろう。以前の PR Table の記事でも触れたが、社内報がオウンドメディアへと発展し、会社の外部にいる採用候補者と内部にいる従業員への情報発信の同一化が進んでいる。採用候補者は将来の従業員になるかもしれないので、これは当然のことなのだ。アルムナイ活動を改善するには、会社の中をよくしなければならない。

前述した海外企業では、ほぼスクラッチによる自社開発でアルムナイ管理の仕組みが構築されているが、日本にはこの分野に特化した仕組みがまだ無いため、ハッカズークではドミナントになれる可能性を睨んでいる。ハッカズークの SaaS やコンサルティングに費用を支払うのはユーザ企業だが、今回の調達を受けて、アルムナイのコミュニティ側に寄り添う「アルムナイ・リレーションシップ・パートナー」の採用や養成に注力したいとしている。

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