セレンディピティを確保しつつ情報をキュレーションできるアプリ「aics(アイクス)」がクローズドβローンチ——プレシード調達も

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「aics」
Image credit: Manifold

世の中には多くのキュレーションサービスが溢れている。これらの多くは、一つ一つの記事を深く読んだり、「いいね」を選んだりすることでユーザの嗜好を機械学習エンジンが理解し、使い込めば使い込むほど自分の関心に合った情報が提供されるというものだが、一方で落とし穴もある。自分の関心から外れた情報が入手できなくなる、ということだ。友人や同僚などから人を経て得られる情報であれば、必ずしも自分の関心には当てはまらない情報を得られる偶然性——セレンディピティが期待できるわけだが、この課題をモバイルアプリで解決しようとするスタートアップがいる。

Manifold が開発した「aics(アイクス)」がそれだ。情報はニュースサイトのみならず、サーチエンジンのようにインターネット全体(現在、200万サイト)からクローリングを行う。「いいね」ではなく、「必要ない」「興味ない」とユーザが選択した行動(スワイプ)をもとに、加点ではなく減点方式で情報をフィルタリングし、タイムライン形式でそれらを表示する。この仕組みであれば、「必要ない」「興味ない」情報のみが機械学習で排除されるようになるので、「いいね」を付けたくなるような興味ある情報はもとより、偶然目に入ることで興味を持つかもしれない情報も表示の対象になる。

レコメンドは情報の押し付け。従来のサービスと違い、興味ないものや嫌いなものを排除していくアプローチで、新しいサービスを作りたかった。(Manifold CEO 森雄大氏)

CEO 森雄大氏(右)とCOO 小野修平氏(左)
Image credit: Masaru Ikeda

Manifold を率いるのは、CEO 森雄大氏と COO 小野修平氏の二人だ。森氏は ICPC 国際大学対抗プログラミングコンテストでアジア大会に進出した実績を持ち、Manifold を創業する前はファクタリングスタートアップの OLTA でデータサイエンティストを務めていた。一方、小野氏は IT系フリーランス人材の仕事紹介サービス「PROsheet」を運営していたパラフトの出身だ(パラフトは2017年、ランサーズが買収)。

森氏は小学生の頃から情報収集が好きで、知らなかったことを新たに知ることに喜びを覚えつつ、それが容易に実現できない既存の情報キュレーションの仕組みに不便を感じていたと言う。aics をニュースアプリと検索エンジンの中間と位置づけ、プロダクトマーケットフィット(PMF)に着手したところだ。

Manifold は27日、MIRAISE と名前非開示のエンジェル投資家複数から資金調達したことを明らかにした。調達金額は明らかになっていないが、調達ステージはプレシードラウンドとみられる。同社では6月1日の正式版ローンチを目標に、関心のあるユーザにアプリをテストしてもらうクローズド β の募集を開始している。iOS および Android 向けのクローズドβ版は、TestFlight や DeployGate を使ってインストールすることができる。

MIRAISE のプレシード伴走プログラム「ON-DECK」輩出の第1号

「ON-DECK」
Image credit: Miraise

Manifold は、プログラマー起業家やソフトウェアスタートアップ支援をテーマに掲げるファンド MIRAISE が運営する、プレシードスタートアップ向け伴走プログラム「ON-DECK」から輩出された最初のチームだ。ON-DECK では、スタートアップを始めたいと考えるプログラマやエンジニアに100万円を投資、100日間で MVP(実用最小限製品)をプロダクトアウトし、次の資金調達につなげることを目標に挙げている。

普段仕事をしている人が夜や週末など空いた時間でプロダクトを開発する、いわゆる〝週末スタートアップ〟の場合、根気やモチベーションが続かず、プロダクトが出ないまま時間だけが過ぎていってしまうことも少なくない。1日1万円あれば生活できなくはないだろうとの発想から、100日間を自分の考えるアイデアに捧げてもらおう、というのがコンセプトだ。すでにシードラウンド以降の調達を完了した、先輩に当たる MIRAISE のポートフォリオスタートアップのチームからもアドバイスを受けることができる。

Manifold では今後、aics の正式版ローンチとシードラウンドでの資金調達を目指して活動を進めるとしている。

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