中国の観光市場、新型コロナから復活へのキーワードは「ライブストリーミング」と「擬似体験」

SHARE:
今年1月、成都から上海へのフライトに搭乗する乗客ら
Image credit: TechNode/Eliza Gkritsi

China Hospitality Association(中国飯店協会)は、ホテルやホームステイ事業者の74%が閉鎖を選択したと報告している。2020年は2月までに、この業界は670億人民元(約1兆円)以上の損失を出し、賃貸アパートの損失は約7億人民元(約107億円)となった。健康上の理由から、多くの国が観光客の入国を制限したり、国境を閉鎖したりしている。タイ政府観光局によると、4月にタイを訪れた外国人観光客はゼロで、1月から5月にかけて1,002万人減少した。

中国では、新型コロナウイルスは観光事業にとって重要な期間である春節の最中にやってきた。人々は家に留まることを選び、すべての旅行計画をキャンセルした。さまざまな観光スポットも政府の規制に応じて閉鎖された。

しかし、手をこまねいている人はおらず、誰もが観光や代わりとなる娯楽を探していた。観光客も、ホテルも、現代技術を使い、新しい方法で観光を体験した。

テクノロジーが実現した本物ではできない体験

Dunhuang Research Institute(敦煌研究院)は Tencent(騰訊)と協力し「Yunyou Dunhuang(雲遊敦煌)」と いう WeChat ミニプログラム(微信小程序)を立ち上げた。敦煌石窟の壁画を紹介するだけでなく、ユーザが仮想の壁画を互いに対話しながら作ることができる。

ユーザは本物ではできない方法で壁画を近くで探索することができる。このミニプログラムは2月20日に公開され、kれまでに350万人以上が使用した。4月にはアップデートされ、莫高窟の壁画をモチーフにしたアニメーションシリーズを開始した。アニメーションは壁画の芸術性、質感、淡い色彩を最大限に生かしている

この現代技術と古代文化の組み合わせは、大きな社会変化を引き起こし、2020年に登場するオンライン文化ツアーとインタラクティブな展示会の代表的なものとなった。

「雲遊敦煌」を取り上げる中国・遼寧省のテレビニュース(動画)

既存の資源を使った新しいサービス

White Swan Hotel(白天鵝賓館)のライブストリーミング
Image credit: White Swan Hotel(白天鵝賓館)

上海では、一部のホテルが近隣の企業に食べ物の持ち帰りサービスを提供したほか、中国の有名ホテルチェーン「Huazhu(華住)」は十分な宿泊施設を持たない出稼ぎ労働者のために隔離室を作りサービスを提供した。

現在、中国国内の新型コロナウイルスはコントロールされており、さまざまなホテルのマネージャーは、ホテルを宣伝し、潜在的な顧客に割引を配るために、旅行アプリ上でライブストリーミングを開催し始めている。

2月以降、Alibaba(阿里巴巴)のグループの旅行サイト「Fliggy(飛猪)」には28,000件に及ぶライブストリーミングがローンチし、既に2億5,000万人以上が視聴した。視聴ユーザは、旅先をリサーチする時間が短縮され、限定ディスカウント情報を簡単に見つけることができるため、これを気に入っている。

中国初の5つ星ホテルである「White Swan Hotel(白天鵝賓館)」は6月5日、Fliggy でライブストリーミングを実施した。高級ホテルが Alibaba のプラットフォームでライブストリーミングを実施したのは初めてのことだ。

同ホテルはミシュラン3つ星レストランで伝統的な広東料理を提供していることから、ライブストリーミングではその高級料理を特集した。最終的には170万人が3時間以上視聴し、ホテルのフォロワーは3,200人以上増え、3秒ごとに予約が入った

売上の増加

ライブストリーミングに加え、ソーシャルメディアプラットフォームを利用してインターネットユーザと交流したホテルもある。高級ホテルグループの Shangri-La はお得情報や割引の他にも、過去の顧客との交流を目的として Weibo(微博)で抽選会を実施した。参加者は Shangri-La の窓越しに撮影した屋外の植物の写真を投稿する必要がある。当選者にはバウチャーやバッグがプレゼントされた。

長い間家にいた中国の人々は今旅行計画を始めている。中国文化和旅遊部(日本の観光庁に相当)よると、5月1日から4日までの国内観光客数は1億400万人、国内観光収入は約432.3億人民元(約6,590億円)に達した。どうやら春が来ているようだ。

旅行制限で大きな打撃を受け、再挑戦を余儀なくされている欧米の大型観光地でも同様の傾向が見られた。西側諸国の有名な美術館の多くは、ロックダウン中にコレクションを無料でオンライン公開した。ロサンゼルスの J・ポール・ゲティ美術館は、自宅にあるものだけで有名な芸術作品を再現する、世界中の人々が参加した有名なオンライン写真チャレンジを開催した。隔離措置の初期段階では、オンラインでの創造性が大きく解放された。

国内観光の可能性

56日間にわたり感染がなく取締緩和された北京では、6月11日に再び感染が発生した。その結果、街は再びロックダウンされ、多くのフライトがキャンセルされた。同じような状態は少し前に吉林省でも起こった。地方政府は5 月13日から都市を跨いだ旅行を規制した。しかし、これらの事案は人々の旅行意欲に影響を与えていない。

Fliggy によるうと、旅行は6月のドラゴンボートフェスティバル(龍船節)の時期には、旅行者数が去年の60%の水準にまで上昇した。Fliggy によると、旅行は去年の数の60% に戻るツーリストの全体的な数との6 月の端午の節句の間に上がった。北京、天津、河北は昨年の水準の約40%に戻っている

つまり、中国の観光産業は、強力な新型コロナ対策にもかかわらず、徐々に回復してきているということだ。地方政府からの支援策や創造的なプロモーション活動により、国内観光事業はすぐにはね戻る。しかし、国際観光には時間がかかり、人々は二度と同じように国際的な旅行をすることはないだろう。

Airbnb の共同創業者 Brian Chesky  氏は、旅行が以前と同じになることはないと考えていると述べている。彼は、欧米の人々が旅行を自宅から200マイルの範囲に限定し、自然のスポットや小さな中心地に向かうと予測している。彼は、ロンドン、ローマ、パリのような大きな目的地を訪問し、有名なランドマークの前で写真のためにポーズをとる時代は終わったと考えている

このようなトレンドの一部はすでに中国でも展開されており、湖州の Giraffe Hotel(長頸鹿莊園酒店)のように、アフリカのサファリを模した、本物のキリンが敷地内を歩き回る場所が登場している。実生活で決して会いに行けないだろう旅行者にとって、国内で有名な海外観光を体験できる場所が作られたとき、我々はかつての中国の古き時代を思い出すことになるだろう。

そのチャンスは再び訪れるだろうが、新型コロナウイルスが我々の生活に入り込む前よりも、それを望む人は少なくなっているだろう。

【via TechNode】 @technodechina

【原文】