コロナ禍で変わる採用テクノロジー、注目は「採用の分散化」と「リモート福利厚生」

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社の坂本祥子氏が共同執筆した。

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感染症拡大防止を受け、企業における採用活動も大きな岐路に立っている。

例えばオンライン面接の拡大はその影響のひとつだ。グローバル・ブレインでは先頃、採用ソリューションを手掛けるmanebi(マネビ)に出資したが、彼らもまた提供するオンライン採用・研修ソリューション「playse.」を大きく伸ばしている。昨年11月公開したウェブ面接ツールは、公開後8カ月で1,100社が導入した。

この大きな変化の時期、何が課題となり、どこに余白が生まれるのか。本稿では特に採用の前後で発生する変化に注目してトレンドを探ってみたいと思う。

オンライン面談は何を変える

オンラインでの面談を経験した方であれば、多少なりとも対面と異なる部分を感じただろう。候補者の雰囲気や性格など定性的な情報収集がやや難しくなった一方、多くのデータを収集できるようになったのは進歩と言える。

ここで注目したいのが面接プロセスの分散化というアイデアだ。

オフライン面接の場合は「場所」と「面接官」の2要素が必要となる。一方、オンライン面接の場合「面接官」だけでできるので、例えば採用スクリーニングのプロセスを外部委託することも考えられる。

シアトル拠点の「Karat」は、企業に代わってエンジニア候補者の面接を担当してくれる。顧客企業の方で予め選定した候補者たちを、彼ら独自の質問とスコアに当てはめて評価する。その結果得たフィードバックから企業は面接プロセスを先に進めるのだ。利用企業は第三者によってフェアに候補者を判断できる点も買われている。

なによりこの事例で理解できるのは「データ」の重要性だ。様々な企業のオンライン面接を請け負うことで、的確な質問やコーディングディスカッションの手順をノウハウとして蓄積することができる。結果、評価する際のスコアの精度はどんどん上がっていくことになるだろう。

ROXXが展開する「back check」

履歴の評価(リファレンス・チェック)も重要なポイントだ。バックグラウンドチェックは欧米のギグ・ワーカーの台頭によって市場を大きく拡大したサービスで、米国では「Checkr」が一番手として有名だが、日本ではROXXが展開する「back check」が拡大中だ。昨年10月に正式リリースしたばかりだが、既に累計導入社数は500社を突破1している。

例えばROXXのような企業がKaratが手掛ける採用スクリーニングを開始すれば、リファレンスまで含めた採用候補のスコアリング・ポートフォリオが一気通貫に提供できることになる。

オンライン面談の課題

しかし当然ながら課題もある。現在、採用担当は会えない分をなんとかしようと、コミュニケーション接点作ることにリソースをかけている。手間も大きく、応募者側も継続的にコンタクトが欲しいわけではない。オンラインになった結果、辞退しやすくなったことも要因としてある。いわゆる「ドタキャン」だ。

この効率化を進めているのがmanebiのソリューションになる。現在、playse.ブランドウェブ面接eラーニングを展開しており、9月から選考辞退などを防止するエンゲージメントソリューションを開始した。特に重要なツールが動画で、オンライン就職活動における動画情報提供は、7割以上が志望動機向上につながるという調査結果もある

mabebiの展開する「playse.エンゲージメント」

playse.エンゲージメント」は動画で採用候補者・新入社員に会社の文化やルールを浸透させるツールで、二次面接の後に動画A、オファー後に動画Bのように視聴状況を確認しながら選考プロセスと動画を紐づけ、また、各動画の視聴後にテストをすることで浸透度を測ることも可能になっている。建設関連の利用企業はこれにより面接辞退の率が昨年比で50%も改善した。

さらにデータを活用することで、将来的には採用目標数や達成度を求職者の志望度(情報取得の度合いで計測)、選考状況、プロセス途中のアンケートなどから可視化・予測することも可能になる。

定着支援に必要な福利厚生の考え方

こうやって採用後にやってくるのが「定着」だ。いわゆる離職率を下げる一連の施策を、企業から離れた場所にいる従業員に対して的確に実施しなければいけない。

ここで考えておきたいアイデアがリモート環境でも使える福利厚生だ。「Zestful」は従業員が自分で福利厚生内容を選べるサービスで、NetflixやStarbucks、Spotifyといった私たちが日常的に使うようになったサービスを従業員が自由に選び、与えられた福利厚生予算を自分の裁量でパッケージングすることができる。

Zestfulの利用企業は、同社が提携するベンダーの中から従業員に提供したいサービスを選び、プログラム名を付ける。たとえば月最大50ドルまで補助される「Healthy&Happy」と名付けたプログラムから、自由にClassPassやCalm、Headspaceといった運動・ウェルネス系サービスを従業員が選べたりする。従業員が通わないような指定ジムでしか提供されない福利厚生より柔軟性を持つのだ。こうしたプログラムは複数持つことができ、仮に企業側が従業員の健康を推進したいのならば、Healthy&Happyに対する予算割合を増やす設計にもできる。

たとえば企業がリモート環境下でも健康的な生活を送って欲しいと思い、東京に多く拠点を持つジム費用を浮かせる福利厚生パッケージを提供したとしても、同じ系列ジムを持たない遠方のリモート社員は使えない。このギャップを埋める柔軟性が必要となる。そのソリューションの1つがZestfulにある。

HRWinsによると、ベンチャーファームは2019年の第1四半期だけでHRテック企業に17億ドルを投資しているというデータもある。また別のレポートによると、2019年の投資額は238件で53.3億ドルに達し、2018年の投資総額40億ドルから20%以上増加している。感染症拡大という未曾有の出来事で、HR市場も大きく動くことが予想される。新たな課題をいち早くキャッチすることが求められるだろう。