Zoomに足りない体験で競争加速、ちょっと便利なウェブ会議ツール市場

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Image Credit : Grain

ウェブ会議ツールが多数登場しています。オンライン授業が中心となった教育現場と、企業の会議ユースケースにおいて多くはZoomが導入されています。そしてこの流れに乗り、Zoomには足りない多機能サービスが待望されるようになりました。Zoom自体も新たなプラットフォーム戦略を発表しています。

たとえば先日ステルスからの公式立ち上げが発表された「Grain」が挙げられます。手軽にオンライン講座・ミーティングの議事録を取れるサービスとして登場し、4月には400万ドルを調達しています。同社はZoom会話の録音・録画・書き起こし・ハイライトを記録し、Slack・Twitter・Discord・Notionなどのプラットフォームに共有することができる動画メモサービスです。今後ビジネス向けにサービスを売り込む予定だとのことです。

Grain創業者のMike Adams氏は出世払い大学「Mission U」の創業者でもあります。同校はウェブ会議サービスを使った講義を行うオンライン形式の学校で、教育費用は卒業後に5万ドルを稼げる職に就いたら、3年間毎月収入の15%をシェアするISA(Income Sharing Agreement)型のビジネスモデルを確立しました。

Mission Uの経験から誕生したGrainが最初に切り込むのは教育市場でしょう。この点、Grainは学生ニーズを的確に汲み取ったサービスとして展開することが予想されます。同校以外に、Minerva Schoolのようなオンライン校からユースケースを作っていくと予想されます。

Image Credit : Grain

コロナの影響もあり、オンラインスクールが急速に普及しています。講義体験をリッチ化させるAdd-Onサービスの需要も上がってくるでしょう。たとえば、学生がオンライン授業でメモを取りたいと考えた時、先生が話している内容の一部を録音して保存したり、クラスメートと共有したりすることができ、講義全体を見直す必要をなくす便利なサービスが求められます。

似たようなWeb会議ツールを見ると、録画サービス「Loom」に注目が集まっています。同社は資料説明動画が手軽に録れる非常にシンプルなサービスです。Sequioaも投資をしており、累計調達額は4,480万ドル。他にもEvernoteの創業者が立ち上げ、先日3,100万ドルの調達を発表したZoomプレゼン向けエフェクト追加サービス「mmhmm」も登場しています。加えて、Grainの直接競合にも当たる、つい先日430万ドルの調達とステルスからの公式ローンチを発表した「Vowel」も市場参入しています。

いずれもZoomやSkypeのようなコミュニケーション・プラットフォームではなく、機能追加できるエクステンション型のサービスです。上場するに至るまでサービスが成長するかどうかは疑問ですが、Zoomを含め大手に買収される可能性は十分にあるでしょう。

たとえばSlackは2017年、YC出身のスクリーンシェアサービス「ScreenHero」を買収しています。Loomやmmhmm、Grainがエグジットするとしたら、このようなプラットフォーマーに技術力やユーザーを買われる形だと考えられます。Zoomが高い音声解析技術を持つ書き起こしサービス「Otter.ai」と提携したりと、スタートアップと組む事例も発生していることから、今後レッドオーシャン化しているウェブ会議市場がどのような勢力図になっていくのか、注目が集まりそうです。

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