バーチャルイベントの可能性と課題ーーミクシィとVRCの共創 vol.2

ミクシィのデジタルエンターテインメント事業本部インキュベーション事業部、江本真一さん

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディーをお届けします。

前半では、ミクシィのエンターテインメント事業ブランド「XFLAG」とスマホから3Dアバターを生成するVRCの技術協力によって実施されたバーチャルファンイベント「XFLAG VIRTUAL STAGE at SHIBUYA SKY」の事例をご紹介しました。

感染症拡大で「東京ヤクルトスワローズファン感謝DAY2020」の現地参加が叶わなかったファンたちがバーチャル空間に集まり、現地参加者たちと一緒にリアルタイムでコンテンツを視聴しつつ、スマホで作成した自分の3Dアバターを通じて、喜びや驚きなどの感情表現を共有するという取り組みです。

後半ではミクシィのデジタルエンターテインメント事業本部インキュベーション事業部にて本プロジェクトのオーナーを務めた江本真一さんにお話を伺います。ミクシィがバーチャル空間でのコミュニケーションサービスを活用して目指す方向性や世界観について語っていただきました。(太字の質問はすべてMUGENLABO Magazine編集部、回答は江本さん)

3Dアバターの可能性

VRCとエンターテインメント事業で共創に至った経緯を教えてください

江本:ミクシィでは友人や家族など親しい人とのコミュニケーションを豊かにするサービスの提供をミッションに掲げています。以前から、リアルアバター(自分自身の3Dアバター)を使ったサービスの事業化構想があり、その事業化に向けたPoC(Proof Of Concept)を注力しているスポーツ事業にて実施することとなりました。

特にコロナ禍でリアルのエンターテインメントが実施できない状況が続く中、社内の別部署でVRC社とコミュニケーションサービス創造を検討する構想が進んでいたことが1番最初のきっかけです。

プロジェクトを遂行した中で、実際どのような反響があったと捉えていますか

江本:実際にイベントを実施してみると、メディアの方からは、新たな時代の幕開けを感じるなど、期待するコメントをいただきました。社内自体も結果的に多くの部署がこのプロジェクトに関わることとなり、本当に新しい挑戦を皆で乗り越えるといったような、今までにはない結束力や連携も生まれました。

確かに、バーチャル空間での体験提供はフォートナイトなどの海外事例は多いですが、国内で大規模に実施しているケーススタディーはあまり聞かなかった印象です。今回の取り組みで得られた成果を挙げるとすると、どういった点になるのでしょうか

江本:やはり一番は、エンターテインメントにとって体験の張本人となるファンからのダイレクトなフィードバックをもらうことができた点だと思います。例えば、コロナ禍で会場に行くことができない遠方のファンの方からは感謝のコメントをもらえたり、来年も実施して欲しいというコメントもいただきました。

一方で、各ユーザーごとに依存する環境下において、接続トラブルが生じるなど、厳しいコメントもいくつかいただきました。技術的な課題は多く、これから1つ1つ検証をしていく段階で、ようやくスタートラインに立った状況だと思っています。

また今回は、モンストやモンソニ!で活躍をしているテクニカルアート、サウンド、アート、デザインなどの開発メンバーが中心となり、バーチャル空間のデザインや世界観を作り上げました。ミクシィが今までデジタル上で提供していたアートとテクノロジー技術を、よりリアルなエンターテメントサービスのソリューションとして集約できたことも大きな成果の1つだと思っています。

こういった状況下でのバーチャル空間活用は必然ですからね

江本:はい、特にコロナ禍において、エンターテインメントの世界では関係する両者に課題が生じていました。ファンはリアル会場に行きたくても行くことができない状況が続き、必然的にオンラインへと移行しつつありました。また事業側としても、集客を制限することで収益の減少を受け入れるしかないという状況で、両者ともマイナスな環境が作り上げられていたんです。

我々としてはそうした課題に対して、デジタル権利を有効に活用をすることができれば、ファンにコミュニケーションを軸とした、オンラインを越えた新たな視聴体験を提供でき、事業主には新たな収益モデルを提供できると考えています。

ありがとうございました

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