インテルからスピンアウトしたスパコン用インターコネクト開発のCornelis Networks、GBらから資金調達し日本市場展開を強化

SHARE:
Image credit: Cornelis Networks

「Omni-Path」とは、Intel が開発した高性能通信アーキテクチャだ。HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)やハイパフォーマンス・データ分析(HPDA)向けに、低通信遅延、低消費電力、高スループットを実現する仕組みとして開発。さまざまなワークロードを接続するためのネットワークファブリック(ケーブル類)などで構成され、第一世代は2015年末に出荷を開始した。

インテルは2019年8月、Omni-Path からの完全撤退を表明し Omni-Path 第二世代の開発中断が報道された。しかし、それから約1年後の昨年9月には、Omni-Path の開発に当たっていた、Phil Murphy 氏をはじめとするチームが、事業を継承し Cornelis Networks というスタートアップとしてスピンアウトしたことが明らかになった。

今回 Cornelis Networks のシリーズ A2 ラウンドに日本のグローバル・ブレインが参加したことが明らかになった。このラウンドに共に参加したのは、ニューヨークの Adit Ventures、西海岸を拠点に安全保障関連のテクノロジーに特化したファンド Redgline Partners。グローバル・ブレイン単体、及び、このラウンドでの調達額は不明だ。

同社はこれに先立ち、昨年10月にシリーズ A1 ラウンドで、イギリスの Downing Ventures、チームの古巣である Intel の投資部門 Intel Capital と Chestnut Street Ventures(ペンシルバニア大学の卒業生によるファンド)から2,000万米ドルを調達、また、別ラウンドでアメリカの複数大学の卒業生によるファンド Alumni Ventures Group から50万米ドルを調達している。

<参考文献>

東工大のスーパーコンピュータ「TSUBAME 3.0」のコンピューティングノード。画面中央と右部を繋ぐ4本のケーブルが Omni-Path による接続。
Licensed under CC BY-SA 4.0 via Wikipedia

Murphy 氏は2006年から、ストレージネットワークベンダー QLogic でインターコネクト・アーキテクチャー「InfiniBand」の開発に従事。Intel は2012年に QLogic を InfiniBand 事業を1億2,500万米ドルで買収し、この際 Murphy 氏らのチームが Intel に参画した(同時期、Intel は Omni-Path 事業を Cray から1億4,000万米ドルで買収した)。その後の2014年、Intel はインターコネクトを InfiniBand から Omni-Path で推進することを明らかにした。

一方、インターコネクトを巡る動きとしては、Nvidia は2019年3月、Intel との接戦の末、InfiniBand を扱う Mellanox を70億米ドルで買収している。Omni-Path 第二世代の開発を中断していた Intel は Mellanox 買収で InfiniBand に回帰しようしたがその願いは叶わず、昨年買収した Barefood Network と次世代インターコネクトを開発するようだ。

Cornelis Networks は Intel の中にいた頃と異なり、特定の CPU や GPU メーカーにこだわらず、全方位的にインターコネクトを提供する中立サプライヤーの立場を取ることができる。チップメーカーにとって、インターコネクトは重要ではあるものの、チップ開発とは違う本流から少し離れた位置に存在し、かつ〝重い〟ため、自前開発に固執しないメーカーに Cornelis Networks は魅力的だ。

Murphy 氏によれば、Cornelis Networks は Intel からスピンオフする際、テスト機材をはじめとする、これまでの Omni-Path 開発に関わるアセットの提供を受けるほか、Intel 時代からの Omni-Path の既存顧客を向こう5年間サポートする契約を取り交わしているという。

Omni-Path のインターコネクト・アーキテクチャーは、日本では東京大学のスーパーコンピューティング部門で、「Oakbridge-CX」や「Oakforest-PACS」といったシステムに採用されている。Murphy 氏によれば、今回のグローバル・ブレインからの出資を受けて、(インターコネクトをエンドユーザに直接売ることはないため)HPC メーカー大手などの意思決定者への〝インフルエンス〟を強化していきたいという。ビジネス開発人材も雇用し、東京での OEM テクニカルサポートの開設なども検討する。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する