AI活用の小売業向け統合ソリューション「Vue.ai」、1,700万米ドルをシリーズB調達——Sequoia Capital Indiaやグローバル・ブレインらから

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Image Credit: Vue.ai

AI の商業利用が急速に広がっており、業界全体の収益も非常に好調だ。2018年における世界中の小売業の AI と機械学習への消費は20億米ドルと予想されていたが、Juniper Research が最近発表したレポートの予測によると、この数字が2022年までに年間73億米ドルに達するとのことである。実店舗の有無にかかわらず、小売業者はコスト削減や生産性の向上、より多くの情報を基にしたビジネス上の意思決定が、AI の採用を推進する主な要因になると考えている。Capgemini によると、それこそが小売業向け AI の採用が2016年から7倍にも成長した理由の1つであるという。

Vue.ai はこのトレンドから利益を得ようと目論んでおり、VC 資金を調達してさらなる成長の準備を整えている。AI スタートアップ Mad Street Den のサブブランドでカリフォルニアのフレモントに拠点を置く同社は4月24日、Falcon Edge Capital がリードするシリーズ B ラウンドで1,700万米ドルを調達したと発表した。このラウンドには Sequoia Capital India と KDDI Open Innovation Fund(KOIF)を運営するグローバル・ブレインが参加している。これにより同社の調達額は合計で2,750万米ドルになる(その大半は CEO で Mad Street Den の共同設立者の Ashwini Asokan 氏が出資している)。資金は従業員の増員や新規顧客の獲得に使われる予定。

小売業の未来はエンターテインメントにあります。現在の経験経済は新しい時代の始まりです。

Intel Labs に長年勤め、夫とともに2016年に Mad Street Den を設立した Asokan 氏は言う。夫はスタンフォード大学を卒業した神経科学者の Anand Chandrasekaran 氏である。

ブランドは消費者参加型の世界へと変貌を遂げつつあります。そのためには人々が買い物をするための新しい方法を統合する必要があります。Vue は複雑で重要な小売りの機能を支援することで、小売業者が顧客を楽しませることに集中できるようにします。

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Vue.ai の VueModel 技術は、AI アルゴリズムで商品画像から複数のモデル着用画像を生成できる。
Image Credit: Vue.ai

Vue.ai は3年間で200%の年間収益成長を見せ、Macy’s、Levi’s、Diesel、Thredup、Tata、Mercadolibre などの有名企業が顧客ベースに追加された。同社は管理と販売を自動化し、ユーザごとにカスタマイズ可能なオムニチャネルを実現する7つの製品群を提供している。同社の内部調査によると、Vue.ai のソフトウェアが導入されていないウェブサイトにおけるオンライン購入者の滞在時間が25分なのに対して、同社のソフトウェアが導入されたサイトではおよそ72分になるという。

Vue.ai のマーケットプレイスで提供されるのは、AI を活用した物体認識サービス VueTag である。VueTag は、色や柄、長さ、襟の形など250以上の属性について、1時間あたり最大3万点の製品画像のタグ付けとカテゴリ分けを行うことができる(Vue によると、これまで2億4,000万以上のタグと属性に対応してきたとのことである)。すぐに使えるもう1つの機能として VueStyle がある。VueStyle は「AI スタイリスト」で、購入者の好みやテイストに合った服を提案し、幅広いカテゴリから製品を推奨する。また、定期購入サービスのボックスキュレーションを自動化することもできる。Vue.ai は VueCommerce、VueFind、VueMail で、各ユーザに合わせたオムニチャネルを実現するためのソリューションを提供している。このソリューションを使えば数百万もの顧客に、それぞれの好みに合わせたメールを送信することができる。また、コンピュータビジョンと自然言語処理を活用して、顧客の状況に合わせた製品検索結果を表示するとともに、リアルタイムのおすすめスタイルも提供する。

Vue.ai の小売り向け製品群の中でも、最も技術的に優れているのはおそらく VueModel である。VueModel では洗練された方法を採用しており、ファッションモデルが洋服を着ている画像を自動生成することができる。同製品では、サンプルを生成する生成ネットワークと、生成されたサンプルと現実世界のサンプルを見分ける識別ネットワークという2つの AI アルゴリズムから成る敵対的生成ネットワーク(GAN)を採用している。GAN は服の特徴を理解し、現実に近いポーズや肌の色を生成する方法やその他の機能を習得する。VueModel はアップロードされた製品画像から、すべてのサイズのモデル着用画像を生成する(Vue.ai によると VueModel の画像生成スピードは通常の写真撮影の5倍であるという)。

当然、Vue.ai にも競合となるスタートアップは存在する。Trendage は AI と、クラウドファンディングで集めたファッションに関する専門知識を使って、小売業者が顧客に適切な商品を勧められるようにしている。シンガポールに拠点を置く ViSenze は、e コマース専用のコンピュータビジョンプラットフォームで最近2,000万米ドルを調達した。しかし、Sequoia Capital India の CTO 兼ディレクターの Anandamoy Roychowdhary 氏は、同社の技術的な専門知識と、多様性に富む Mad Street Den が親会社であるという両面において Vue.ai が抜きんでていると考えている(Vue.ai のチームには IBM、Intel、DARPA の出身者がいる)。Mad Street Den は小売業向けだけでなく、エンゲージメント分析や IoT、モバイルゲーム向けの AI 製品も積極的に開発している。

Roychowdhary 氏は次のように述べた。

Vue.ai チームのミッションは、AI とインテリジェントオートメーションを世界中のチームに提供して、様々な角度から生産性と成長を促進することです。

Vue.ai チームと働き始めてまだたったの2年ですが、小売業界の様々な領域に彼らが価値をもたらす方法が改善されていく様には目を見張るものがあります。今回のラウンドでの Falcon Edge とのパートナーシップにより、Ashwini 氏と Anand 氏が Vue.ai を世界規模に成長させていくことを Sequoia India として嬉しく思っています。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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