シンガポールの若き起業家、VRセラピーのスタートアップでSequoiaからの支援を獲得

by Tech in Asia Tech in Asia on 2019.5.9

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Jennifer Zhang 氏が認知症を患っている人のための転倒検知システムを作ったのは、彼女が15歳の時だった。

彼女は Tech in Asia にこう語る。

私がそのシステムを設計し始めたのは、家族に認知症患者がいたからです。私が生まれた時、祖母は認知症を患っていました。祖母が他界するまでの10年間、私は祖母のもとを訪れ続けました。

現在22歳になった Zhang 氏の新たなスタートアップは、同様の人々の役に立つことを目指している。認知症やアルツハイマー病、および脳卒中の患者に向けてバーチャルリアリティセラピーの多くのコースを提供しているのだ。

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DancingMind 設立者兼 CEO の Jennifer Zhang 氏
Photo credit: Jennifer Zhang

Zhang 氏の祖母は度重なる事故による脳損傷で「従来の認知療法を受けるにはあまりにも重篤」だった。シンガポール人起業家である Zhang 氏は、セラピーの恩恵を受けることができるはずの多くの人々が、多数の障壁でその機会を逃していることに気が付いた。それこそが、彼女が DancingMind で解決しようと目指していることなのだ。

新たなセラピー

オックスフォード大学で数学とコンピュータサイエンスを修めた彼女は2018年9月に新たなベンチャーを始め、シンガポールとイギリスのヘルスケア施設がその VR プログラムを使い始めている。現在 DancingMind にはこの2国で開発者とサポートスタッフを合わせて15名の従業員がいる。

Zhang 氏は都市国家シンガポールの課題に対処することでビジネスをスタートさせた。

同社 CEO である彼女は広東語や福建語の中に飛び込んできたベトナム人やフィリピン人スタッフを例に挙げてこう説明する。

シンガポールでヘルスケアに従事する外国人と、現地のさまざまな訛りを話す高齢の患者との間には大きな言語的障壁があることが分かりました。

彼女の VR セラピーのコンテンツは様々な訛りでセッションを提供することでこの問題を解決する。

その他の取り組むべき課題は、Zhang 氏がセラピーの需給の大きなギャップと評するものである。

DancingMind を始める前にリサーチを行った際、Zhang氏は「人間的な感じ」を失うことなく「品質を保ったままで自動化する方法を考えたい」と感じた。

セッションは Facebook の Oculus や HTC のヘッドセットで幅広く利用できるように設計されている。

コンテンツ作成だけではない。Zhang 氏はヘッドセットを着用している患者からデータを取ることができる特許取得済みのシステムも考案している。このデータはセラピストが個人の経過を評価するために閲覧することができる。

DancingMind は15のヘルスケア団体とランプサム契約(一括総額請負契約)を結んでいるが、これは月ごとのサブスクリプション方式よりも好まれるからであると Zhang 氏は言う。クライアントはセラピストに支出することなくより多くのセラピーセッションを得ることができるため、数ヶ月以内に費用に対するリターンを得ることになると同社は計算している。

認知訓練

同社の VR セッションは3つの基本単位から成っている。理学療法、認知療法、そしてマインドフルネスだ。

例えば、ある理学療法のクラスはロッククライミングのゲームである。スタッフの介助を受けながら患者は頂上を目指し、システムはセラピストに患者の動きの役に立つデータを与える。

非常にゲーム化されていて、とても楽しいものです。

Zhang 氏は指摘する。

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DancingMind のバーチャル・セッションに取り組む男性
Photo credit: DancingMind

認知療法のパートは注意力を養う役に立つ。その VR セッションの1つは料理のシミュレーションだ。認知症患者は毎日しなければならないことをする能力を失いがちであるため、これは有用であると Zhang 氏は考えている。

患者の記憶力や処理技能を測るため、このシミュレーションは患者がアニメーションのペットに料理の仕方を教えるという三人称視点を使っている。このアプローチは患者の尊厳を尊重し、あまり説教臭くないものであると Zhang 氏は強調する。

そしてマインドフルネス部分だ。

VR レッスンのようなものは、水槽の中で行われるリラクゼーションと呼吸運動である。そこではバーチャルな動物が周囲を泳ぎ回っている。VR ではない瞑想セッションと似たものだが、心の中に思い浮かべる必要がないため、よりアクセスしやすいものになっている。

Zhang 氏は患者からこれらのマインドフルネスセッションは「まるでバーチャルな休暇に出かけるよう」だというフィードバックを受け取っている。

認知症患者の80%は抑鬱を感じているため、セラピーのプロセスにおいて楽しさは重要な部分であると彼女は言う。また一部の患者は寝たきりなので、たとえ施設に庭のようなリラックスできる空間があっても、なかなかそこに行くことができない。

すでに起業経験者

DancingMind は Zhang 氏の最初のベンチャーではない。

高校時代にシンガポールの A-Star Labs で一度限りのプロジェクトとして作った転倒検知システムは別として、彼女の最初のビジネスは教育分野で、K-12(幼稚園の年長から高校卒業まで)の成績優秀者向けの教材作成だった。

スマートフォンやタブレット向けにデザインされた教材は、「シンガポールのギフテッド教育プログラムに進むため」の受験生をターゲットとしていたと Zhang 氏は回想する。

彼女が18歳の時に設立された教育スタートアップは、彼女が大学に行くため「継続が困難」であるということが分かるまで4ヶ月間続いた。同社は現在「休止中」であるが、彼女に利益と励みになるフィードバック、同社サービスのおかげで学校が快適になり成長したと感じられるという生徒の声を与えるものだった。

自身の職業はプログラマーであるとする Zhang 氏は、彼女が創案するものとベンチャーとの間に共通のテーマを見ている。

彼女はこう言う。

私が従事した2社は両方とも、最初はニッチなものに見えましたが、その後に実際は非常に幅広いものであり、非常に一般的なニーズに対処するものとなりました。

Zhang 氏は彼女のコーディングが「社会に直接的でポジティブなインパクト」を与えるものであってほしいと考えており、彼女が雇用する新たなエンジニアに対してもそう強調している。

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Oculus の VR ヘッドセット
Photo credit: Marc Mueller / Unsplash

過去の経験から彼女は貴重なことを学んだ。「直観的な製品を作ることに注力するようになり」、それはまたスケーラビリティに富むものでもあると彼女は明かした。

それが、DancingMind が大量生産されている VR ヘッドセットを使う理由の一部でもある。どこにでもあり、次第に安価に、そして軽量になっている。

この先の計画

彼女は現在、東南アジアならびに国際市場にわたる DancingMind の拡大を「探って」いる。

また最近ではその取り組みを加速させる資金を入手した。

この若き CEO は現在 Sequoia Capital India の新規インキュベータ「Surge」に参加している。このプログラムでは16週間のスタートアップ支援カリキュラムと、多くのインキュベータよりも高額な150万米ドルの資金調達を大手投資企業から得ることができる。

ヘルスケア企業は「非常に資本集約的」であることを考えれば、Surge はこういった「まだ拡大の重要なステージにある間に、非常に大規模なシード投資を必要とする」ビジネスの大きなニーズ、そして以前は満たされなかったニーズを満たしたのだと Zhang 氏は語った。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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