苦手を「見える化」して営業パーソンを育成ーービジネス効率化の旗手たち/TANREN代表取締役・佐藤氏 #ms4su

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本稿は日本マイクロソフトが運営するスタートアップインキュベーションプログラム「Microsoft for Startups」による寄稿転載。同プログラムでは参加を希望するスタートアップを随時募集している

前回からの続き。本稿では、エンタープライズSaaSやインダストリークラウドに注目したサービスを展開するスタートアップにインタビューし、どのような生産性向上の取り組みがあるのか、その課題も含めてお伝えしています。

スマホを通して、営業パーソンのセールス指導・店舗における販売・接遇練習などの育成課題に動画を通した非属人的なソリューションを展開するTANREN代表取締役CEOの佐藤勝彦氏です(太字の質問は全て筆者。回答は佐藤氏)。(取材・編集:増渕大志

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TANRENが解決していること:動画を主体とした「マイクロラーニング」がコンセプトの企業研修サービス。基礎学習をデジタル化し、応用箇所を個々の能力に合わせ研修することが可能。スマホで指導用の研修動画を撮影し社内共有。ルーブリック(※)評価による定量分析と、タイムスタンプ評価による定性分析をもって企業における人材教育を効率化している

※ルーブリック評価:学習到達状況を段階マトリックスで確認する評価方法

この連載ではビジネスの現場で効率化を図っているクラウドサービスを取材しています。手掛けられているサービスは、アウトプット中心のセールス教育アプリということですが、具体的にどの様な特徴を持ったものなのでしょうか。

佐藤:TANRENは営業パーソンのセールス指導や、店舗における販売・接遇練習などの育成課題、特に時間がなく、属人的な教育になりがちな社内研修に対して、スマホで気軽に動画を撮影し投稿できるシステムを構築しています。

ルーブリック評価による定量分析と、タイムスタンプ評価による定性分析によって教師役と生徒役を動画でつなぐ、赤ペン先生のようなナレッジシェアが可能なことが特徴です。

ルーブリックを使った研修方法とは

佐藤:例えばこちらは現在、前田鎌利さんとの協業で行ってる「鎌利式プレゼン」の研修時に利用するルーブリックです。

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採点箇所の根拠が明確なので、認定講師間で評価のブレが生じず、かつ受講生もどこを指摘されているか納得感があります。これを複数回に渡ってTANRENを活用するとこのような結果が出ます。

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なるほど、社員の不得手な箇所が見える化されてますね

佐藤:育成データを管理していく「People analytics」的な観点が今後、HR領域では注目されていくと考えています。

タイムスタンプとは具体的にどういうことでしょうか

佐藤:簡単に言えば、動画のあるポイントに対して直接コメントを付けられるということです。例えばマニュアルにない、その店舗だけの習慣のようなサービスなどがたまにあったりするんですが、そういったものに対しタイムスタンプをつけることで、後からそのサービスを分析することが出来るようになります。

動画で共有して、さらにいつでも分析が可能

佐藤:例えば営業成績がいい店舗の動画をどの店舗でも見れるのがクラウドの利点です。ある店舗ではマニュアルになくてもサービスとして実践していることが、違う店舗では全く行われていないなんて沢山あります。この状態に気が付く「きっかけ」が重要かと。

ところで動画コンテンツの共有で教育を効率化できる、というのは理想的なソリューションですが、実際に導入した企業のオンボーディングで発生する課題や状況はどのようなものでしょうか

佐藤:そうですね。まず、言わせてほしいのが人は原則鍛錬できない、ということです。「世の中は2対8」とはよくいったもので、100社超えたあたりで、冷静に自社顧客を見た時、伴走も不要、顧客自身の目的に即した指針方針で、見事にTANRENを使い倒していただけた会社は2割程度という印象でした。

残りの8割は目的が乖離していたり、アナログ鍛錬していないのにただ続けていれば「できるようになる」と盲信されてしまったり。正直、想像以上に教育課題は根深いのだと今なお、感じています。

サービス導入だけでなく、利用する側の姿勢も重要と。研修をする企業として、どのような視点が大切でしょうか

佐藤:やはり鍛錬をするために、このサービスを使い倒すためにも「目的をたて、目標を定め、繰り返しアウトプットを行うこと」が大事です。弊社も原則、伴走支援必須モデルとして事業を捉えるようになりました。

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属人的な人材教育への問題意識はどういった経緯で生まれたのでしょうか

佐藤:元々、私は携帯販売員の育成講師を20年ほど勤めておりました。携帯を購入されるショップにて「この店員さん、セールスが上手だな」と思わず光ファイバーもセットで契約してしまった、といった経験はありませんか?そういった、セールストークに限らず根本的なサービスの提供の仕方から全てを教育する、そんな担当をしていました。

ただ、活動を進めていく中で、育成講師のワークスタイルに対する課題意識が生まれ始めたんです。講師は全国の支社支店の会議室に赴き、会議室にて50名ほどを対象に集合研修を行うわけですが、個々に各々学びたい要素が違うはずなのに通り一辺倒な講習をして終わる。

まさに公教育の現場における、教室での講義で受講生の個性や特性を殺してしまう課題と同一の問題があると感じたんです。

その課題感から、業界に対してデジタルを通したソリューションを考えた

佐藤:もちろん、講師が旧態依然なのは業務効率と教師側のリソース不足が関係するので、個別学習がやりたくとも実施できない実態があるわけです。そこでデジタルツール、クラウドを用いて何とか解決できないかと考えました。

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この分野ではEラーニングが先行していた印象があります

佐藤:確かに教育をデジタルにするだけであれば、Eラーニングで十分だと思います。しかし、それではインプットを磨くだけであり、営業や販売のフィールドではアウトプット(知識をどう生かすか)が重要となるため、非効率になってしまいます。

インプットで終わっては研修にならない

佐藤:そうですね。他社事例ではデジタル化させたうえでもマニュアル主導型(インプット重視)が多いと理解しています。社員向けというより非正社員向けが多いのかもしれません。ただ私たちは、その分野はAIやロボットが広がっていく領域とみてるので、より高単価でかつ高スキルをもとめられる、正社員の領域に特化してることで差別化しています。

今まで「アウトプット」主体の人材教育は存在しなかったのでしょうか

佐藤:動画を投稿するという行為自体はYouTubeにアップロードしたり、イントラのストレージに格納したりと存在はしていました。ただ、売りたい商材や強化したい接遇技などに紐づいていないので、スキル定着できたとしても育成データとしてプラットフォームに貯めるという視点はなかったのではないでしょうか。

具体的に効率化された例など教えていただけますか

佐藤:まず現在の状況からお伝えすると、おおよそ100社ほどのお客様にシステムや、研修パッケージをご利用いただいております。つい最近のケーススタディでは、生産性8年で1.8倍、退職者数は3年で58%減と言及いただける事例も生まれています。

ありがとうございました。(取材・編集:増渕大志

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