少子高齢化時代をロボティクスで救え!ドローンで社会課題に挑戦ーービジネス効率化の旗手たち/センシンロボティクス代表取締役・間下直晃氏 #ms4su

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本稿は日本マイクロソフトが運営するスタートアップインキュベーションプログラム「Microsoft for Startups」による寄稿転載。同プログラムでは参加を希望するスタートアップを随時募集している

前回からの続き。本稿では、エンタープライズSaaSやインダストリークラウドに注目したサービスを展開するスタートアップにインタビューし、どのような生産性向上の取り組みがあるのか、その課題も含めてお伝えしています。

DaaS型ドローンソリューションによる業務の完全自動化を目指すセンシンロボティクス代表取締役CEOの間下直晃氏です(太字の質問は全て筆者。回答は間下氏)。(取材・編集:増渕大志

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センシンロボティクスが解決していること:「ロボティクスの力で、社会の「当たり前」を進化させていく」をミッションに、労働人口が減少する中、災害などの社会課題をロボティクスを通じて解決することを掲げる。最初に手がけるのはドローンによるソリューションで、業務自動化を推進する統合プラットフォーム「SENSYN FLIGHT CORE」を核に、用途別のソリューションをDaaS(Drone as a Service)として提供している

こちらの連載ではテクノロジーで社会の課題を効率化するソリューション・スタートアップをご紹介しています。センシンロボティクスさんはドローンを活用した点検や災害などの社会課題に取り組まれてます。そもそも依頼されるユーザーの方々の課題感やペインはどのあたりにありそうでしょうか

間下:やはり、実際の業務に適用する際の「ドローンの操縦や撮影された映像の確認作業を行うためのオペレータ(人力)の不足」や「その育成・確保にかかる工数」が挙げられると思います。

ドローンは無人というだけで、実際には操縦する人や得られた調査結果の解析など、付帯する業務が多岐に渡るのでここの効率化が必要と

間下:そうですね。私たちはこういったドローン活用業務の完全自動化を推進し、実現するべくサービスのテスト運用に基づく改良を続けています。

ドローンによる業務自動化をパッケージングされているということですが、具体的にどのような仕組みでしょうか

間下:サービスの中心には「SENSYN FLIGHT CORE」という、ドローンを用いた顧客業務の自動化を推進する統合プラットフォームがあります。それに加えて先進的な技術コンポーネントを組み合わせ、用途別にパッケージ化した業務自動化ソリューションを初期費用+月額利用料のDaaS(Drone as a Service)型で提供しています。

パッケージには具体的にどのようなものがあるんですか?

間下:例えば鉄塔の点検にドローンが使える「TOWER CHECK」というコンポーネントは撮影から解析・レポート出力まで自動化してくれるものです。

同様に太陽光発電施設点検パッケージの「SOLAR CHECK」、ドローンで撮影している映像を、遠隔かつ複数拠点でリアルタイム共有・コミュニケーションが図れる「SENSYN DC」、ドローンの自動離着陸・自動充電機器を備えた完全自動運用型ドローンシステム「SENSYN DRONE HUB」などを提供しています。

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導入やPoC(実証実験)などの件数はどのぐらい積み上がりましたか

間下:これまでに120以上の企業や自治体と当社ソリューションを活用した実証実験を実施してきました。なお、現在政府では2022年度を目処にドローンの有人地帯での目視外飛行を可能とすることを目指すと発表しています。法律が変われば、当社が目指す「DaaS型ドローンソリューションによる業務の完全自動化」の実現により近づけると考えています。

なるほど、規制などの整備が進めばさらに利用する人は増えそうということですね。具体的に事業を進めてみて、どの分野の効率化に手応えを感じていますか

間下:現在サービスを提供している「点検・警備監視・災害対策」の3領域には注力しています。特に日本は戦後の高度成長期で急速にインフラを構築したため、それらの老朽化がここに来て課題として顕在化しつつあるんです。また、それらをメンテナンスする人員の人手不足が同時に発生しているという特異な環境です。

さらに少子化は進むのでさらに課題は深くなる

間下:はい。今後少子高齢化による労働人口の減少はさらに加速しますから、業務の自動化・汎用化のニーズはますます進んていくと考えております。現在サービス提供をしている領域に加え、今後、社会課題に対してニーズがある分野にも事業を拡げていきたいと考えています。

企業や自治体などの反応や課題は

間下:産業用ドローンの利用を考える企業は多いですが、実際に業務プロセスまで落とし込んで活用できているケースは現状まだ少数です。機体を購入したものの、操縦技術の習得や飛行時の許認可申請、保険、安全対策、故障時のサポートやメンテナンスなど、実際の運用を行うまでに企業の担当者が考慮すべき事項は多岐に渡ります。

便利な反面、安全性や規制面含めて非常に複雑なビジネス構造になっていますね

間下:その上まだ新しい技術だけに情報も少ないんです。当社の提供するサービスは、ドローンというハードウェアとその運用を効率化・自動化するソフトウェアを組み合わせたDaaS型ソリューションですが、たとえ良いものを作っても上記ハードルからお客様に十分ご活用いただけないケースもありました。

オンボーディングのハードルはどのようにしてクリアされたのでしょうか

間下:現在はカスタマーサクセスを重視し、現場の課題抽出から業務プロセスへの実装まで伴走する体制を整えています。その結果、顧客からのフィードバックをよりダイレクトにサービス開発へ反映できる良いスパイラルも生まれていますよ。

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インプレス綜合研究所発表:ドローンビジネス調査報告書プレスリリースより

少し話を変えて市場規模について教えてください。ドローンによる業務効率化で恩恵が受けられる範囲は災害や建設など経済インパクトでも大規模なものが多そうです。どのような視点をお持ちでしょうか

間下:ドローンの国内市場規模については、2024年に2018年の5倍以上、5000億円以上にまで拡大すると試算するレポートも出ています。中でも私たちが事業を行うサービス領域は最も成長率が高く、2018年の10倍近くにまで拡大することが見込まれています。

この中で「ドローンによる業務の完全自動化」による社会課題の本質的な解決を目指し、市場の成長を牽引していきたいと考えています。

最後に、開発についての課題も教えてください。ハードウェアも含め、非常に複雑なテクノロジーかと思います。どのあたりに苦労するポイントがあるでしょうか

間下:基本的に私たちはソフトウェアをメインに開発していますが、お客様にはドローンを含めたパッケージをDaaS型で提供しています。そのためドローンの自動飛行設定から実機の飛行、撮影データのアップロード、ソフトウェア操作までの一連の作業を自動化するUX設計が重要になります。

プラットフォームでありながら、各社への個別最適化が非常に強そうな開発現場ですね

間下:はい。業務の種類によって必要な機能やインタフェースなどが異なるわけです。それらを実際のお客様からヒアリングを行いながら開発する必要があるんです。また、ソフトウェアのデバッグではドローンのテスト飛行が必要ですが、スタッフ間のドローン操作の技術にばらつきがあったことも課題でした。

デバッグで野外に出る必要がある時点でかなり特殊

間下:そうなんです。現在は新入社員にはドローン研修を実施し、全員がドローンを飛ばせるように教育しています。実際に都内に飛行が出来る場所が限られるので、それらを確保したり国外での技術開発なども合わせて実施しています。

ならではのお話ありがとうございました。では次の方にバトンをお渡ししてきます。(取材・編集:増渕大志

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