8回目を迎えたHackOsaka、ピッチコンテスト「Hack Award 2021」に世界のスタートアップ10社が集結

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左から:優勝した Brezzi の CEO Tim Seaton 氏
右上から右下へ:審査員 Phillip Vincent 氏(Plug and Play Japan)、Joshua Flannery 氏(Rainmaking Innovation Japan)、Allen Miner 氏(SunBridge Group)

(個別にクレジットしたものを除き、写真はいずれも主催者提供)

大阪市、都市活力研究所、JETRO 大阪本部は18日、年次のスタートアップ・カンファレンスである「HackOsaka 2021」を開催し、日本内外から投資家・起業家・メディアなどが参加した。2013年からスタートしたこのイベントも今回で8回目を数えた。昨年開催される予定だったイベントは新型コロナウイルス感染拡大のため中止を余儀なくされ、今年はは初のオンライン開催となった。

イベントの終盤では、日本内外から集まったスタートアップ10チームが、大阪の企業との協業や投資誘致を念頭にピッチを行なった。本稿では、入賞チームを中心に紹介する。審査員を務めたのは、以下の3名の方々だ。

  • Phillip Vincent 氏(Managing Partner & CEO, Plug and Play Japan)
  • Joshua Flannery 氏(CEO, Rainmaking Innovation Japan)
  • Allen Miner 氏(CEO, SunBridge Group)

審査員は、コンセプトの独自性、コンセプトの実現性、社会へのインパクト、将来に向けたスケーラビリティの4つの項目について採点し、その合計点で上位チームが選抜された(スポンサー賞は、各スポンサー個別審査による選抜)。

【Gold Award】Breezi(アメリカ)

副賞:賞金50万円

今後30年間、世界では1秒あたり10台のエアコンが販売され、2050年までにそれらの電力需要は、現在の日米欧の電力消費量の合算分と同量に達するという。エアコンはフィルタの目詰まりや機器の不調によってパフォーマンスが低下するので、これらを改善することが電力消費量の改善につながる。

Breezi は、エアコンシステムのフィットネストラッカーの異名を持つ「AirPulse」を開発。AirPulse をエアコンのフィルタ部にセットすることで、フィルタの状況、電力使用量の算出、空気の質の追跡、音から機器故障を予期することができ、それらをモバイルアプリやクラウド経由でモニターできる。深圳の HAX、Plug and Play Japan の2020年夏バッチなどに採択された。

【Silver Award】Michroma(アルゼンチン)

副賞:賞金20万円

現代人は、舌で味わう以外に目で食べることに慣れてしまっていて、スナック菓子やキャンディー、ソーダからヨーグルトや野菜の缶詰などの健康食品まで、あらゆるものに人工着色料が含まれている。こういった人工着色料が健康に悪い影響を及ぼさないとは限らない。Michroma はこのような問題を解決すべく、持続可能でスケーラブルでコスト効率の良い、食品原材料の生産方法を開発する。

Image credit: Michroma

人工的な石油由来の着色料ではなく、キノコを発酵させた自然由来の食品着色料やマイコプロテインを、食品・飲料・化粧品・製薬会社と共同で開発している。第1号製品は、pH と熱安定性に優れた赤色着色剤だ。アルゼンチンのフードテックアクセラレータ「GridX」、アメリカのバイオテックアクセラレータ「Indiebio」などから、これまでに総額500万米ドルを調達している。

【Bronze Award】CRUST Group(シンガポール)

副賞:賞金10万円

フードロスは世界的に大きな問題だ。CRUST Group は、食品廃棄物から新たな飲料を作り出すフードテックスタートアップ。ホテルや飲食業界と提携することで食品廃棄物を確保し、それらからビール「CRUST」やノンアルコール飲料「CROP」を創出している。破棄する食料を減らすだけでなく、二酸化炭素の排出を抑制し、ホテルや飲食業界に売上を新たにもたらすこともできる。

Image credit: CRUST Group

本社をシンガポールに構え、日本には昨年11月に法人を設立。日本国内ではクラフトビールを販売したり、捨てられる食材を使ったゼロウェイストレストランを展開したりするほか、今後、サステイナブルビールが発売予定。今後、タイでは現地 CP グループやドールと連携して PoC 展開とジョイントベンチャー、韓国でもジョイントベンチャーでの進出などを計画している。

【O-BIC Award】CRUST Group(シンガポール)

副賞:10万円(提供:大阪外国企業誘致センター)

前項で紹介済みのため説明を省略。

【KGAP+ Award】Voiceitt(イスラエル)

副賞:アクセラレーションプログラム「KGAP+」第5期への参加権(提供:国際電気通信基礎技術研究所)

脳卒中、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などのに苦しむ人々は身体を自由に動かすことができず、周りの人々とのコミュニケーションが難しくなることがある。身体に問題がなくても、自閉症などで自分の意思をうまく声にして伝えられずに苦しむ子供たちもいるだろう。創業者の母は40歳の時にパーキンソン病を発症し、これが Voiceitt の開発につながった。

一般的な音声認識システムと異なり、Voiceitt では音声障がいを持った人が発した言葉も、正しく認識することができる。この認識結果を Siri、Google Home、Amazon Echo などに転送することで、音声コミュニケーションが可能になる。API が公開されており、音声入力インターフェイスを持つアプリやサービスが連携すれば、音声障がいを持った人も操作できるようになる。

【Expo 2025 Osaka, Kansai, Japan / JETRO Osaka Award】Brain Pool Tech(シンガポール)

副賞:2025年日本国際博覧会協会での個別ピッチ参加権(日本国際博覧会協会 + JETRO 大阪本部)

Brain Pool Tech は、ドローンから得られた地図データ、各所に配置されたセンサーから得られたデータ、GPS の人流データなどから、バターン認識や分析により、将来起きうる出来事のリスクや可能性を予測するスタートアップ。得られた知見の用途はさまざまで、物流の最適化、災害リスクのスコアリング、建設作業の効率化など、社会や業務の改善に役立てることができる。2019年に設立され、シンガポール国立大学のインキュベータ「GRIP」に採択された。

Image credit: BrainPool Tech

昨年10月には、朝日放送系の ABC ドリームベンチャーズから約3,000万円をシード調達した。Brain Pool Tech と ABC ドリームベンチャーズは、神戸市多井畑西地区の里山保全・活用を目的として実証実験を行い、AI 分析モデルを用いた生物多様性の現状把握や災害リスクの特定方法などを考案、住民参加型の持続可能な里山の管理・活用を提案する計画だ。同社は現在、モビリティアクセラレータ「Move SG」と、アフターコロナソリューションを促進するアクセラレータ「Expara VirTech Global」に参加している。


今回、入賞には至らなかったものの、ファイナリストとしてピッチ登壇したスタートアップは次の通り。

  • Human Assistive Technologies(メキシコ)……障がい者向けに義手や義足等の義肢装具や車いすを開発するスタートアップ。スマート多関節義手「C_HAND」は、指先から伝わる電気信号によって、義手でありながらも触感を得ることができる。温度だけでなく、物を落としかけると自動で掴む力を調節する技術も搭載。その他、VR/ARと人工知能を用いたテレリハビリテーションシステムも開発している。”
  • Kazoo Technology(香港)……ハードウェアとソフトウェアをシームレス且つ快適に融合させるテックスタートアップ。タッチスクリーンにタップするだけでデバイス接続・データ転送ができる。向き・角度の違いなど精度の高い検知機能やメモリ機能も搭載され、スクリーン上に反映された内容によってデータの読取・編集・保存ができる。”
  • Aura Air(イスラエル)……屋内外の空気コンディション(湿度・温度・粒子・ガス・CO₂濃度・細菌やウイルス等)を検知、4段階の浄化プロセスで室内空気をろ過・消毒し、リアルタイムに空気品質を監視するデバイス・プラットフォームを提供。ラウンジ・ホール・バス等あらゆるスペースへの取付けが可能。
  • AC Biode(日本)……日本・ルクセンブルク・イギリスに拠点をもつ化学系スタートアップ。有機ごみとプラスチックごみが混ざっていても低温で炭化でき、また、PET・ナイロン等を低温で分解し、プラスチック材料や石油化学等に再利用できる(研究開発中) 2種類の触媒をもって、海洋プラスチック等のごみ処理問題に取組む。
  • Zeetta Networks(イギリス)……企業のネットワークの監視・制御・管理を改善するため、ネットワーク操作を簡素化・自動化するスタートアップ。英国最大規模の 5G に係るプロジェクトに参画しており、日系企業を含むコンソーシアムパートナーと実証実験を行っている。

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