ニュースサマリ:コネクティッド・ロックと空室利用サービスを提供するtsumugは2月16日、1室1名利用とする完全個室の空間サービス「TiNK Desk Solo」の開始を伝えている。福岡地所グループのエフ・ジェイ ホテルズが運営するビジネスホテル「サンライフホテル 2・3(博多駅東)」の客室(開始時は3室から)を利用したもので、ユーザーは15分単位でホテルの一室を仕事などに利用できる。朝8時から18時まで、最大10時間の利用が可能。料金は15分149円で1日利用は2,200円となる。通常の客室利用時にあるベットが取り払われており、代わりに4Kモニター、オフィスチェア、電源、インターネット、ホワイトボードが設置される。
TiNK Deskを利用したいユーザーはLINEでサービスを友だち登録することで、施設の検索、予約、扉の開錠、決済までをトーク画面から利用でき、完全非対面で使用できる。リモートワークを意識した設備になっており、ウェブカメラやマイクなども備品として用意されている。
話題のポイント:LTEで自律通信が可能な「コネクテッドロック」を開発するのが福岡拠点のtsumugです。クラウド経由で鍵の受け渡しができるスマートロックの利点はやはり非対面でしょう。今回、ホテルをリモートワークに使えるようにしたtsumugのサービスもこのロックを使い、ユーザーはホテルの受付などで手続きすることなく、LINEからそのまま部屋の利用が可能になっています。

詳しいお話を同社取締役の小笠原治さんにお聞きしました。
ビジネスホテルがコロナ禍で受けた打撃は語るまでもありませんが、一方でリモートワークを告げられた人々すべてが自宅に書斎を持っているはずもなく、自宅・オフィスに次ぐ「第三の場所」の必要性は言われ続けてきました。最近ではコンビニの一角にブースを設置するケースも出てきていますが、個人的にはコンビニの中で果たして仕事ができるのか、興味深いところでもあります。
さておき、TiNKが今回提供を開始した「Solo」サービスはその名の通り、1人で個室を使えるサービスになっています。これまでの通常版は複数人での利用が前提でしたが、4Kモニターやチェアなどの設備がよかったことからクリエイターの方が気分転換に使ったり、家庭教師が自習室として利用するケースがあったそうです。
今回はわかりやすいビジネスホテルのリモートワーク転用ですが、興味深かったのがホテル側の施錠をTiNK側のロックに付け替えているという点でした。空室のこういった転用は珍しいものではありません。ただ、今回は部屋を完全にTiNK側の利用としてオペレーションを任せているのが面白いです。やはりホテル側との交渉でネックになるのがオペレーションで、小笠原さん曰く、清掃をどちらがやるかがポイントになるそうです。

一方のホテル側のメリットはやはり空室率の改善です。今回は夜を貸さない前提でスタートしていますが、夜も稼働させれば「1.5回転が可能」(小笠原さん)になります。元々福岡は空港から中心市街地が近いこともあって、観光やビジネスイベントなどでの利用が盛んな地域です。私もたまに行きますが、市内のビジネスホテルが満室というケースも結構ありましたので、コロナ禍が去った後も、サードプレイス的な使い方が浸透すれば、ホテル側としては新しいビジネスチャンスになります。
なお、今後こういったサードプレイスが普及するにあたっての課題は価格だそうです。1時間あたりの利用料がスターバックスのコーヒー以下でないとダメで、これについては確かに先日取材した神戸市の例でも1時間100円を設定していたので、もしかしたら事情を知っている事業者の共通認識になっているのかもしれません。
ワクチンの話もようやく見えてきましたが、元々、働き方やライフスタイルの分散化については社会課題として大きな問題でもありました。アフターコロナが近づきつつある今、完全に元に戻そうとするのか、こういったチャンスでビジネスを先に進めようとするのか、経営者の方々の判断に興味が湧きます。
※本稿はClubhouseでの取材内容をご本人に同意いただいて記事化しています
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