音声ソーシャル「Discord」、時価総額100億米ドル超で売却を模索か(後編)

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Discord 初期の頃の共同創業者 Jason Citron 氏と Eros Resmini 氏
Image Credit: Dean Takahashi

前編からの続き)

Discord の買収に必要な100億米ドル以上の資金を持っているのは、かなり大きなゲーム会社である可能性もあるが、それ以上に、Microsoft、Amazon、Twitter、Google などのプラットフォームオーナーである可能性が高いと思われる。ゲーム会社の中には、ゲームスタジオやパブリッシャーとコミュニティを結びつける重要な役割を果たしている Discord が、一つのコミュニティにしか興味を示さない相手に買収されてしまうのではないかと心配する人もいるはずだ。なお、Microsoft にコメントを求めたが回答を得られていない。

Discord を買収すると、Amazon が Twitch を買収したり、Microsoft が Mixer(現在は廃止)を買収したりしたのと同じように、Discord はゲームやその他のコミュニティ全体にサービスを提供する独立した企業から、特定の親会社にサービスを提供する企業に変わってしまう。Citron 氏が以前 CEO を務めた OpenFeint は2011年に Gree に1億400万ドルで買収されるなど、ある意味では成功を収めた。しかし、そのオーナーチェンジに多くのユーザが不満を抱き、Gree は最終的に OpenFeint を閉鎖してしまった。Discord で同じような結果になっても、Citron 氏が満足するとは思えない。

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従業員やその他の株主が流動性(すぐに現金が手に入ること)を得るためにストックオプションを他者に売却するセカンダリマーケットでの販売は100億米ドル以上の価格を示唆しているため、どのような取引も12月の70億米ドルを上回る時価総額になると思われる。もし Discord に入札合戦が起きれば、その価格はさらに高騰することは容易に想像できる、と関係者は述べている。また、売却の可能性の背景に詳しい2人目の関係者は、入札によって価格が200億米ドルを超えても驚かないと述べている。

Rainmaker Securities は、セカンダリマーケットの株式が過去12ヶ月で5倍になったと指摘している。そして Rainmaker Securities は、最新の入札額は1株450ドルで時価総額は推定112.4億米ドルだと述べている。しかし、一部の取引では時価総額が140億米ドルにも達している。これは、Discord の価値についての小さな、しかし重要な事実である。

Discord の最近の投資家には、Greenoaks Capital と Index Ventures がいる。それ以前の投資家には、Greylock、IVP、Spark Capital、Tencent(騰訊)、Benchmark などがいる。Citron 氏に売却の圧力がかかっているとすれば、それは初期の投資家からのものである可能性が高い。

Discord は現在までに4億8,000万米ドルを調達している。同社は、ユーザをサブスクリプションサービス「Nitro」にアップグレードさせることでマネタイズしているが、多くのユーザは無料で利用している。その過程で、多くの人が Discord に広告を導入するよう求めたが、Citron 氏はユーザ体験を損なうと考えてそれを避けた。しかし、Discord はゲーマーだけでなく、他のコミュニティにも手を広げたことで、同社の成長とサブスクリプションの収益基盤の拡大に貢献していることがわかった。

Discord のウリは高品質なオーディオを備えていることだが、Discord は Clubhouse とも競合している。Clubhouse は Andreessen Horowitz がリードしたラウンドで、評価額10億米ドルで1億米ドルを調達した。Discord を所有することは、Clubhouse に箔をつけることになり、Clubhouse に脅かされている Twitter や Facebook のような企業にとっても魅力的なものになるかもしれない。

Eros Resmini 氏、Stanislav Vishnevskiy 氏、Citron 氏の3人が Discord を始めたのは2015年。彼らは Hammer & Chisel というゲームスタジオを立ち上げ、多人数参加型オンラインバトルアリーナ(MOBA)のソーシャルゲームを作ろうとしていた。ゲームはうまく行かなかったが、、コミュニケーションサービスはうまくいった。筆者は初めて Discord の話を聞いたのは、カリフォルニア州サンマテオのレストランでCitron 氏と Resmini 氏に会った時のことだ。

Discord は今や、e スポーツのコミュニケーションやゲームのコミュニティチャットなどの目的で、非常に人気がある。社員数は350名を超えている。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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