スタートアップがCTOを見つける方法、Reproに三代目・尾藤正人(BTO)氏就任

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尾藤さんと平田さん

ニュースサマリ:顧客とのエンゲージメントに特化したマーケティングプラットフォームのReproは6月7日、開発組織の責任者(CTO)に、ウノウやUUUMなどで活躍した尾藤正人氏(BTO氏)が6月1日付けで就任したことを伝えている。

尾藤氏はメルカリ創業者の山田進太郎氏が創業したウノウの初期メンバーとしてCTOを務めた後、2015年からUUUMの執行役員CTOとして上場までを牽引した人物。2020年に同社を退任した後は技術顧問やエンジェル投資家として活動を続けてきた。今回のReproも顧問先のひとつとして関わり、2021年6月から執行役員CTOとして専任することとなった。

Reproはアプリを中心にユーザーのエンゲージメントを高めるためのコミュニケーションツールを提供する。現在世界66カ国にて利用実績があり、これまで累計で7,300件に導入されている。

話題のポイント:テクノロジー系のスタートアップにとって「CTO(最高技術責任者)」の存在は言うまでもなく重要なのですが、創業期からアイデアに溢れる優秀かつナイスガイな最高技術責任者がいるケースは稀です。こういった人材がスタートアップする場合のほとんどは、自身か共同で創業しますので、わざわざ約束されている条件を捨ててまで従業員として入る必要がないからです。

でも、優秀なエンジニアリングのチームがなけばそもそもテック領域でスタートアップすることは困難になります。今回のReproの件はうまくその矛盾を解決しているかもしれません。

きっかけは組織崩壊

Reproにはこれまで尾藤さんの前に2人のCTOがいました。初代が三木明さんで二代目が橋立友宏(joker)さんです。それぞれ現在もReproに在籍して別の役割を担っています。にも関わらず三代目のCTOを必要とした背景は組織崩壊がきっかけでした。

Reproは200名近くの体制になっているのですが、2019年頃から好調だったReproのセールスを拡大させるべく一気に人を採用したそうです。同社代表の平田祐介さんが成長を焦ったことが要因だったと振り返っていましたが、結果、彼がオフィスで挨拶した社員に「ところでどこの部署の方ですか?」と聞かれてようやく組織崩壊を認識するに至ります。

提供する機能が顧客の要求に合ってなかったり、新参と古参の価値観の違いなど、肥大化する組織がギクシャクしはじめ、ついに役員会の席で平田さんは経営から現場執行を掌握するよう要請を受けることになります。特に開発まわりのオーナーシップに不安があったため、当時のCTOだった橋立さんと立て直しをすべく、課題の洗い出しを実施します。

そこで出てきたのが技術組織のマネジメント、でした。

野武士のような初代・共同創業者

少し話を巻き戻します。創業期のReproをご存知の方であれば、彼らが野に放たれた野武士のような存在と聞いて納得いただけるのではないでしょうか。特に平田さんは眼光が鋭く、元コンサルの荒々しさを全面に押し出したファイティングスタイルが特徴的でした。共同創業した初代CTOの三木さんはそんな黎明期のReproを牽引した技術者です。

この時期のReproはとにかくはやくモノを作ることが最優先で、生き残ることが至上命題です。そしてReproはアプリマーケティングの分野で徐々に頭角を表すことに成功します。いわゆる市場に認められたプロダクト・マーケット・フィットの瞬間です。

しかしこの時期、喜ぶのも束の間、次の問題が発生します。スケールへの問題です。

写真左から初代で共同創業者の三木CTO、平田代表、二代目の橋立CTO、三代目となった尾藤CTO

6カ月を1カ月に変えた魔法使いの二代目(Joker)

苦労したReproがようやく日の目を見て、導入が順調に進んだある日のことです。2015年のIVS(※スタートアップのコンペティション)に登壇していた平田さんのスマホが激しくなり続けます。システムトラブルです。

Reproはそのサービスの性質上、トラフィックの大きいサービスに導入されれば、当然ながら同等の処理を走らせる必要があります。100万人が利用するアプリが導入すれば、その100万人に対してコミュニケーションが発生するからです。当時、20人ほどだったReproはそのスケールの問題に直面します。

そうです、サービスがトラフィックに耐えきれず止まってしまったのです。

アプリの稼働は待ってくれませんから、すぐに根本的な解決をする必要があります。平田さんは三木さんたちと解決策を検討しますが、スケールの問題に対応しようとすると6カ月はかかる、という絶望的な試算が出てしまいます。スタートアップにとって顧客に6カ月利用を待ってくれというのは無理ゲーです。

そこで平田さんと三木さんは意を決して、この問題を解決してくれるエンジニアを探すことにしたのです。とにかくチームのみんなにこのままではまずいので、自分たちが思う最高のエンジニアを探して欲しいと依頼します。思いつくまま、リストアップ作業を続けた結果、候補に挙がったのが二代目CTOとなる橋立(joker)さんでした。

しかし、橋立さんはエンジニアリングには興味があるものの、組織マネジメントは無理と断ります。

ただ、ここで引いたのではReproは止まったままです。平田さんたちは橋立さんに三顧の礼(詳細な条件は非公開)で頼み込み、ようやく承諾を得ることに成功します。結果、6カ月かかると試算された改修を二代目CTOは1カ月半でクリアし、Reproは倒産の難を回避することになったのです。

そして組織崩壊へ・・・(戻る)

昨年に30億円の大型調達を公表した平田さん

何もなかった時代にとにかく作った初代とスケールを支えた二代目。

Reproのエンジニアチームは代替えをしつつ、その時々の問題をクリアしてきました。三代目への代替えも次の課題に対応するものとして実施されます。ただ、今回の問題はエンジニアリングというより組織、経営の問題でもあります。そう、平田さん自身の課題にも向き合う必要があったのです。

平田さんは前述の通り、闘志を剥き出しにして戦うファイティングスタイルが特徴です。組織が少数精鋭、数十名の時期であればこういったトップ・ダウンも有効ですが、さすがに200名近くになるとそうはいきません。「どの部署でしょうか?」と社員の方に尋ねられるようになるわけです。

どうすれば自分のスタイルを変えられるのか、平田さんを変えた意外な答えが「コーチング」の体験だったそうです。詳細は割愛しますが、平田さんはコーチングを受けることで、自分が組織のボトルネックになっているということに気がついたそうです。

組織とどのように向き合うべきか、何が問題だったのかを把握しはじめた平田さんは橋立さんと共に、組織戦に強い指導者を探すようになります。方法は二代目を探した時と同様、思いつくままのリストアップ作戦です。その結果、UUUMを2020年に退職したばかりの尾藤さんたちが候補に上がった、というわけです。

スタートアップは本当に数年という短い時間で一気に成長します。経営陣はその数年という間に企業の成長に合わせて自身も変革する必要に迫られます。一方で人の成長は形式的に促せるものでも、実現できるものでもありません。

そういう意味でReproが辿ったケースは稀ではありつつ、理想的なモデルとも言えます。三代のCTOをうまくバトンタッチすることの再現性はないに等しいかもしれませんが、課題に合わせて柔軟に経営組織を変化させることができるかどうか、という視点は必要不可欠なのではないでしょうか。

現在、初代CTOを務めた三木さんはエンジニアリングスキルを活かし、エンタープライズを中心にデジタルマーケティング戦略の提案と実行を担うSolution Planning(ソリューション・プランニング)を管掌し、二代目CTOを務めた橋立さんは高い技術力を活かしChief Architect(チーフ・アーキテクト)として開発に専念するそうです。

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