PayPalのPaidy買収で、日本にもBNPLの波到来か【Canvas 9月号(9月4日〜9月10日)】

SHARE:

PayPalのPaidy買収で、日本にもBNPLの波到来か

今週の話題(9月4日〜9月10日)PayPal、Paidyを27億米ドルで買収——BNPL(後払い)ソリューションの世界ポートフォリオを強化

PayPal が、日本のフィンテック・ユニコーン Paidy(ペイディ)を買収しました。今年3月に実施したシリーズ D ラウンドの時点での時価総額は13.2億米ドルでしたが、今回、PayPal は27億米ドルで買収しましたので、半年と経たない間に時価総額は倍増したことになります。それでも、世界的フィンテック大手が BNPL サービスの戦いに名乗りを上げる中で、世界第3位の e コマース規模を持つ日本市場の参入において、非常にお得なお買い物だったのではないかと思います。

Square が先月、オーストラリアの BNPL スタートアップ Afterpay を290億米ドルで買収したのと比べると10分の1にも満たない買収額です。オーストラリアは人口で日本の5分の1、e コマース市場は世界第10位の規模で日本の6分の1です。Afterpay の時価総額がなぜこんなに高いかと言うと、むしろ、オーストラリアのみならず、アメリカやイギリスに進出していることが大きいでしょう。Paidy の創業者はアメリカ人ですが、日本という閉じた市場に特化していることが、この時価総額の違いに出たわけです。

MZ 世代の購買意欲をいかに高められるか

  • 世界的な BNPL ブームとは裏腹に、日本の BNPL プロバイダ、特に BNPL 専業のスタートアップはあまり多く見かけません。おそらく、クレジットカードや割賦会社などがそういった需要を満たせてきたのでしょうが、BNPL がターゲットとしているのは、クレジットヒストリー(信用履歴)が充実していないミレニアルや Z世代といった若年層。アメリカでは BNPL の Affirm が e コマースプラットフォームの Shopify と連携したことで、Shopify を使うオンライン店舗の売上は平均50%となっています。

e コマースプラットフォームと連携がカギ

  • Shopify は Affirm 株式の1割弱を保有していて、今年初めに Affirm が IPO した時に最も恩恵に預かったのは Shopify だと言われています。中小店舗が Shopify、BASE、STORES といったインスタントな e コマースプラットフォームを使って、モールに入居するのではなく自前オンライン店舗を作るのがブームとなっている今、こういったプラットフォームも BNPL との連携が必須になってくるでしょう。Shopify とSTORES はすでに Paidy との連携に対応しているようでした。

従来金融サービス会社と一線を画す与信の仕組み

  • これまで後払いやそれに近いサービスを提供してきた、クレジット会社やノンバンクの多くは、信用情報のデータベースに接続し、そこに独自条件を掛け合わせることで、どの人物にどれくらいまでなら金をかせるか、代金を肩代わりできるか、という観点で審査を行ってきました。対照的に、BNPL スタートアップ各社は、AI を使って独自に与信アルゴリズムを開発しているところが多いです。費用対効果を加味して、データベース中心またはアルゴリズム中心で行くか。用途に応じて、互いの守備範囲が違ってくるのでしょう。

今週の調達ニュース

今月の国内スタートアップの主要な資金調達ニュースをお届けします。

米国で糖尿病予防の完全代替食D2C展開Teatis、日本の投資家から70万米ドルをシード調達——管理栄養士PFを月内ローンチへ(9月10日)

  • Teatis は10日、シードラウンドで70万米ドルを調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、ジェネシア・ベンチャーズ、石塚亮氏(メルカリ共同設立者)、野口卓也氏(バルクオム創業者)ほか、名前非開示の7人のエンジェル投資家。

データを元に都市開発最適化、scheme vergeがプレシリーズAで2.2億円調達(9月10日)

  • scheme verge はプレシリーズ A ラウンドで約2.2億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、環境エネルギー投資、山口キャピタル、サムライインキュベート。

人工タンパク質繊維開発のSpiber、カーライルやクールジャパン機構などから344億円を調達——世界的アパレルブランド向けに量産体制確立へ(9月9日)

  • Spiber は、カーライル、Fidelity International、Baillie Gifford、海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)などからの資金調達で244億円、「事業価値証券化(value securitization)」により100億円を調達したと発表した。

東大発EV充放電システム開発のYanekara、5,500万円をシード調達——東大IPC、DEEPCOREらから

  • Yanekara は、シードラウンドで5,500万円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、東大 IPC(東京大学協創プラットフォーム開発)、DEEPCORE、名前非開示の個人投資家複数。

家具・家電サブスクのクラス、GCPやモノフルから21億円を調達——2年後のIPOが目標、取扱ジャンルは生活インフラに拡大へ(9月8日)

  • クラスは、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)と世界的物流施設大手 GLP 傘下モノフルのグループ会社から約21億円を調達したと発表した。ラウンドステージは明らかにされていないが、実質的にシリーズ B ラウンド相当と見られる。このラウンドを受けて、同社の創業以来の累積調達額は約28億円に達した。

オールインワン接客チャット「チャネルトーク」運営、シリーズCで28億円を調達——世界で6万社が導入、日本国内売上は前年同期比7倍(9月6日)

  • Channel Corporation は、シリーズ C ラウンドで28億円を調達したと発表した。このラウンドは韓国の Atinum Investment と KB Investment がリードし、シンガポール政府系投資会社 Temasek Holdings 傘下の Pavilion Capital、そして、韓国の IMM Investment、Bon Angels、Guardian Fund、LAGUNA INVESTMENT が参加した。

Zoom商談の書き起こしとCRM連携で営業効率化「amptalk」、正式ローンチと1億円のシード調達を明らかに(9月6日)

  • amptalk は、6月にシードラウンドで約1億円を調達していたことを明らかにした。このラウンドに参加したのはジェネシア・ベンチャーズとモバイル・インターネットキャピタル(MIC)。

アジアのニュース

今月のアジアのニュースをお届けします。

ドイツ・中国スタートアップのAgile Robots、シリーズCでソフトバンクらから2.2億米ドルを調達しユニコーンに(9月10日)

  • ドイツと中国のスタートアップ Agile Robots(思灵机器人)は、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2を中心とした投資家から2億2,000万ドルを調達し、生産と販売の拡大に投資すると発表した。このラウンドを受けて、ミュンヘンと北京に2つの本社を持つ Agile Robots の時価総額は10億米ドル以上となり、いわゆるユニコーンの地位を獲得した。

Geely(吉利汽車)の配車サービス部門Caocao(曹操出行)、シリーズBで646億円を調達(9月10日)

  • Caocao Mobility(曹操出行)は、国有企業グループが率いる投資家から38億人民元(約646億円)を調達したと発表した。:今回の資金調達により、Caocao の累積調達金額は約50億人民元(約850億円)となった。主な投資家には、蘇州市襄城区政府が保有する投資会社である蘇州市相城金融控股集団のほか、蘇州高鉄新城集団のほか、3つの国有企業が含まれる。

ウォン・カーウァイやハイヤー・ブラザーズがNFT作品を発表など——中国ブロックチェーン界週間振り返り(9月8日)

  • 香港の映画監督(王家衛)氏は、初の NFT 作品を発表した。この NFT は、10月9日に開催されるサザビーズ香港の秋のオークションで販売される。タイトルは「In the Mood for Love: A Moment」で、この NFT 作品は1分半の長さで、ウォン監督の代表作である「In the Mood for Love(花様年華)」の最初の撮影日の未公開映像が含まれている。

「GRAN SAGA」開発元が95億円調達、ゲーム界最短でユニコーンに——韓国スタートアップシーン週間振り返り(9月4日)

  • 「GRAN SAGA」を開発したゲーム会社 Npixel(엔픽셀)が、1,000億ウォン(約95億円)を調達、ゲーム業界で最も短時間でユニコーンとなった。今回の調達でグローバル市場攻略を強化する予定で、年内に GRAN SAGA を日本市場に投入する計画。次回作「CHRONO ODYSSEY」も開発中。

BRIDGE Members

BRIDGEでは会員制度「BRIDGE Members」を運営しています。会員向けコミュニティ「BRIDGE Tokyo」ではテックニュースやトレンド情報のまとめ、Discord、イベントなどを通じて、スタートアップと読者のみなさんが繋がる場所を提供いたします。登録は無料です。
  • テックニュース全文購読
  • 月次・テーマまとめ「Canvas」
  • コミュニティDiscord
  • イベント「BRIDGE Tokyo」
無料メンバー登録