Zoom疲れを解消? Web会議ツール「Headroom」公開——時間⅒のまとめ動画作成、将来は決定事項の自動回答も

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「Headroom」のジェスチャー認識機能
Image credit: Headroom

世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により労働力が変化したと言っても過言ではないだろう。世界中の何百万人もの人々にとって、リモートワークはいまだに現実のものとなっている。中央集権的な職場環境から、より分散化されたホームワーキングハブのネットワークへの急速な移行を支援するために、Zoom のようなクラウドベースの SaaS(Software-as-a-Service)ツールがその価値を発揮している。しかし、その代償は?

SalesforceMicrosoftVMwareDropbox などの大企業が、リモートファーストやハイブリッドワークへの恒久的な移行を確認している世界では、人々は顔を合わせる時間が減り、画面を見る時間が増えている。このような状況では、より優れた、より適応性の高いバーチャルコラボレーションツールが不可欠だ。結局のところ、「ズーム疲れ」は非常に深刻なのだ

Headroom は、AIを搭載したプラットフォームで、バーチャルビデオ会議に伴う手間のかかる作業を自動化し、重要な議論の内容を把握するためのストレスを解消することで、まさにこの問題を解決しようとしている。

Headroom は、Google や Magic Leap などで製品開発の経験を積んだ3人の創業者によって2020年に設立された。CEO のJulian Green 氏は、2014年に Google が買収した Jetpac という AI 搭載写真のスタートアップを設立したことがある。その後、Googleの グループプロダクトマネージャーとなり、Google Cloud Vision API や Android Vision on-device API を立ち上げたほか、さまざまな拡張現実ビジュアル検索製品を統括した。最近では、Alphabet のムーンショット・ファクトリー「X」のディレクターを務めた。

Headroom は昨年10月、500万米ドルのシード資金を調達し、Google の AI ファンド Gradient Ventures や、Yahoo の共同創業者である Jerry Yang 氏などの著名人が支援している。拡張されたベータ期間を経て、Headroom は今週、誰でも正式に登録できるようになった。

Zoom に足りない部分を強化

Headroom は、Zoom と同様のビデオコミュニケーションプラットフォームだが、コアとなるビデオチャット機能に加えて、注目すべきツールを多数搭載しており、生産性、包括性、整理整頓を中心に構築されている。Headroom は会議の内容を自動的に記録し、ユーザは自分に関連するキーワードで記録を検索することができる。つまり、自分の役割にとって重要な内容にたどり着くために、2時間の会議の記録を全部見る必要はないのだ。

キーワードによる検索機能
Image credit: Headroom

また、Headroom は、自然言語処理(NLP)を用いたテキスト分析や、コンピュータビジョンを活用したボディランゲージ(視線追跡や顔の表情など)の分析を行い、参加者のエネルギーレベルに応じた要約を生成することができる。Green 氏は VentureBeat の取材に対し、次のように語った。

これらの信号を組み合わせることで、(本番より)10倍短い要約版の会議を自動的に作成することができる。(Green 氏)

さらに、ジェスチャー認識機能が搭載されているため、会議参加者はマイクを切ることなく、親指を立てたり、手を挙げて質問があることを示したりすることで、発言を中断させることなく、すぐに承認の意思表示をすることができる。

音声認識された発言内容の文章付きで、会議を振り返ることができる機能。
Image credit: Headroom

技術的には、Headroom は「real-time super-resolution(仮訳:リアルタイム超解像)」と呼ばれる技術を使用しており、低解像度の映像をより低い帯域幅で高解像度に変換する。また、Headroom はサーバーベースのアーキテクチャを採用しているため、ユーザーのローカルなコンピューティングパワーを消費することなく、すべてがクラウド上で行われる。

我々は、ユーザのすべての CPU サイクルを占有することなく、また会議中にコンピュータのファンを動かすことなく、これらの AI 機能を提供することができる。この分野の他の多くの取り組みと比べ、我々の差別化は、低遅延のリアルタイム AI をリアルタイム通信で実行できる次世代ビデオ会議プラットフォームを開発したことにある。既存の企業は「ピクセル(映像)を提供するビジネス」をしているが、我々はインテリジェンスを提供するビジネスをしている。(Green 氏)

未来の会議の形

将来的には、Headroom は、ユーザが「プロジェクト XYZ の結果はどうだったか?」というような質問をして、その答えを受け取ることができるようにしたいとしている。つまり、会議に参加できなかった人でも、合意事項や結論を簡単に知ることができるのだ。

会議は、対面での豊かなコミュニケーションから、迅速な情報検索や付加価値のある分析まで、ビジネスを推進するためのより柔軟な手段となるだろう。(Green 氏)

その他の注目すべき機能として、「wordshare」がある。会議の中で(特定の)1人または2人がほとんど話している状況で、「包括性」を促進すると言われている。 Headroom は、各人の発言数をカウントし、それに対応するグラフを表示する。しかし実際には、この機能は、内向的であまり発言しない参加者にスポットライトを当てることになりかねない。

Headroom はまだ設立されて間もない会社だが、サンフランシスコに本社を置く同社は、まずスタートアップ企業に焦点を当てている。

彼らはアーリーアダプタになる傾向があり、既存のツールにあまりこだわらないからだ。(Green 氏)

しかし、エンタープライズ業界でも、早くも人気が出てきているという。

コンサルティング会社、銀行、医療機関、教育機関などから興味を持っていただいている。エンタープライズは、我々が得意とするコーチング、包括性の改善、会議の透明性などに非常に興味を持っている。会議の情報を検索可能な形で保存し、重複する会議を減らし、効率を向上させることは、あらゆる規模の企業にとって魅力的だ。(Green 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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