ローエンドEV「Neta(哪吒)」、今年上半期販売数で2位に浮上——低価格化成功の裏に、アンチウイルス企業の存在

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「Neta S(哪吒 S)」
Image credit: Hozon New Energy Automobile(合衆新能源汽車)

EV ブランド「Neta(哪吒汽車)」を展開する Hozon New Energy Automobile(合衆新能源汽車)は中国 EV 市場での2021年の納入販売台数が、Xpeng(小鵬)、Li Auto(理想汽車)、Nio(蔚来)についで4番目に多いEVメーカーだ。競合が Tesla のような高級 EV 路線で戦う中、Hozon の最初の製品はローエンド市場に焦点を当てられたものだった。2018年11月に販売された小型 SUVの「Nezha N01」は価格は6万6,800~7万6,800人民元(約137〜157万円)と破格の安さで、前衛的なデザインが多い EV と比較しても凡庸と言える見た目をしている。

Neta の低価格化に貢献しているのが、Neta のフルスタックで自社開発したインテリジェント安全車両プラットフォーム「Shanhai Platform(山海平台)」の存在だ。このプラットフォームは、徹底した安全対策が取られ、その上、部品の共通化率80%を目指して開発されている。研究開発期間を8カ月、コストを30~40%削減、製品のイテレーションやアップグレードが迅速に行えるようになった。Shanhai Platform は特にセキュリティ面で、アンチウイルス企業として知られる Qihoo 360(奇虎360)の開発した「360汽車大脳」と呼ばれる AI を適用している。Qihoo 360 は Hozon のシリーズ D1 ラウンドにも出資していた。

中国政府は EV 市場の発展を目的に、EV の購入または下取りに対する補助金政策を導入していて、このことが Hozon の成長を後押ししている。さらに、Hozon ではラインナップとサービスの充実を実施していて、無料で充電可能な都市が中国全土に200都市あり、合計2,410の無料充電サービスと21,532を超える急速充電ステーションが存在する。今後追加となる50都市で無料充電サービスによってユーザの95%以上をカバーできる計画だ。Hozon は、2022上半期に前年同期比199%増の63,131台を納入し、新車メーカー納入台数で2位に浮上、Neta の累計生産・販売台数は16万台を突破した。

Hozon は2022年7月、D3ラウンドで30億人民元(約615億円)の調達を発表した。このラウンドにはShenzhen Venture Capital(深圳市創新投資集団)、Qianhai Fund of Funds(前海母基金)、Ark Internet(方舟互联)、Hongtai Fund(鴻泰基金)、Richu Capital(日初資本、またの名を Dayone Capital)、Insight Capital(瑞豊資本)、Dianshi Capital(典実資本)、Youbo Capital(友博資本)、Xinzhu Investment(>鑫竹投資)、Shenzhen Jingcheng Open(深圳精誠開闊)、Xinzhu Pine Investment(鑫松投資)が参加した。D1、D2ラウンドで調達した金額を合わせたシリーズ D ラウンド合計調達額は100億人民元(約2050億円)となった。

Bloomberg は今年2月の記事で、Hozon は、Citic Securities(中信証券)や China International Capital(中国国際資本)などを幹事に選んで、今年後半の実施に向けた香港での IPO の準備を始めており、10億米ドルもの資金を調達する可能性があると報じた。同社の今年初めの時点でのプレ  IPO 時価総額は、70億米ドルを目指しているとされている。Shanhai Platform をベースとした最初の製品「Neta S」はすでに予約販売を開始していて、今年第4四半期に納品が始まる予定だ。

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