経営陣がPRでやるべきことは?ーーメルカリ矢嶋さん・10X中澤さんに聞く成長期の #スタートアップPR(3)

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前回からの続き。スタートアップPR Dayの8月5日に実施したセッションでは、成長期の経営陣&広報PRが知っておくべき「スタートアップPRのエッセンス」と題して元メルカリ、現在は10Xにて取締役CCOを務める中澤理香さんと、現在もなおメルカリの広報・PR戦略を牽引する矢嶋聡さんのお二人にお話を伺いました。

Q:経営陣がPRでやるべきことは何?

Q:スタートアップのひとり広報の場合、上司が代表や創業者という例は少なくないです。こういう場合、うまく彼らも指示できないケースがあるように思います。彼らは何を注意すべきでしょうか

矢嶋:パーパスというか、会社の社会的な意義や価値を社内の人・社外の人も含めて言語化するっていうのが一番にあります。事業って単体で成立してるんじゃなくて、何かしら社会における課題解決をするために存在していると思うんですが、このプロダクト・このサービスによってこういう社会になっていきますよ、っていうストーリーを発信してステークホルダーの共感や理解を促すことがPRの役割なので、単純に「儲けたいです」みたいなのだとちょっと僕らも動きづらいですよね。

僕が最初にメルカリに入ってやったのは、経営陣にインタビューして、「最終的にどういう会社を、どういう社会を作りたいですか?」「今メルカリってどう思われてると思いますか?どう見られたいですか?」というのを全員に聞きました。

じゃあ、そこを目指すためにPRはこういう戦略でいきましょうという提案をしたんです。基本的には、経営者がどういう社会、どういうビジョンを描いているのかっていうところがスタート地点なんですよ。そこは広報じゃ作れないんで、別にすごく綺麗な言葉じゃなくても、想いみたいなところを言ってくれるだけで全然動きやすさって変わってくるなと思います。

中澤さんは経営陣でもあるから自分のことでもあると思うんですけど、どうですか?

中澤:いまは広報視点の方を考えてました(笑。

さておき、広報が経営者に何を一番伝えたいかって言ったら、社会からの見られ方を常に内省するべきとか、会社が大きくなっていく上で社会の視点というものは絶対必要なんだよってことをまず最初に理解してもらうのが一番かなって思いました。

まだ会社が小さい時ってあんまりその感覚がないじゃないですか。外から見られてるとかよりも、最初は明日生きるか死ぬかみたいな方がどうしても大きくなると思うんです。それは当然のことなんですが、スタートアップとしてスケールを目指し、将来社会の公器になるんだったら、どこかの地点から「自分たちが社会にとってどういう存在なのか」「社会の中で私たちはどう見られているのか」を常に考えないといけないですよね。

そういうスタンスは経営者が判断しなきゃいけないことなので。判断する上で広報の立場から「今はこういう風に見られているからこういうリスクがありますよ」とか、「この前こう言っていたのに、突然変えたら一貫性がないから信頼を失います」とか、そういう耳の痛いことを言うかもしれないけど、それは経営にとって重要なことだっていう合意を最初に取っておきたいなというのがあります。

確かにストーリー性のないスタートアップの取材は大変です

中澤:まだ事業も提供価値も決まっていないけれど、露出はしたいです、と相談されたりすると「いや、それ何のために出るの?」ってなることはあります(笑。それを見て誰が喜ぶ?ってなっちゃうんで。

Q:スタートアップPRの「すべからず」は?

Q:では残り時間もわずかですが、これはやらない方がいい、失敗談や「すべからず」についてもしあればぜひ共有いただけますか?

中澤:失敗とちょっとずれるかもしれないんですけど、広報が「うちの経営者って分かってくれないんですよね」ってずっと言っているのはダメだと思います。当たり前のことになっちゃうんですけど。よく広報の悩みで「うちの経営者は広報の理解がない」と聞いたりしますが、逆に「広報は経営のことが十分分かっているのか?」っていうのを自問したほうがいいと思っています。

広報って専門的な分野でもありますが、経営と同じ言語で喋れない限り、経営にとって信頼される広報にはならないと思うんですね。経営者の視点で考えたときに、事業や組織のいろんな指標を見たりモニタリングする中で、広報ってやっぱり数字だけでは表すことが難しい分野なので、多分経営者も困ってるんですよ。

広報分野が苦手な方って本当に分からないので多分「助けてくれ」って思ってるんですけど、その時に言語が合わないと永遠に分かり合えないので。経営も歩み寄るべきだけど、広報も経営者ってどういうことを考えているのか、理解する努力は必要だと思います。直接聞いてもいいかもしれないし、起業家のストーリーを読むのもいいかもしれない。彼らが何を考えてるか分かることによって同じ言語で話せるようになるのが一番重要なことじゃないかなと思います。

矢嶋さんはいかがでしょうか

矢嶋:忖度はしない方がいい。メディアに対してもそうだし、社内に対してもそうだし、経営者に対してもこれは出た方がいいというのははっきり言ったほうがいいと思う。取材嫌いの経営者は出たくないって言うこともあると思うんですけど、それこそ経営の用語でちゃんと説明する。出ないことによるリスクとしてこういうのがありますよ、あるいは出たことによってこういう事業貢献がありますよと。

経営者として出ることによる事業のメリット、出ないことによる機会損失。それを忖度せずにちゃんと説明する。それでダメだったらもうしょうがない。割と説明する前に諦めちゃっているケースはあるんじゃないかと思います。

Q:ひとり広報からチームになるためには

Q:ありがとうございます。難しい質問だなと思いながら振ってみました(笑。さて、これが最後の質問です。矢嶋さんがメルカリに参加した時、ちょうど上場を目前にひとり・ふたり広報からチームに変わるタイミングでした。チームになるためにどのようなステップを踏まれたか教えていただけないでしょうか

矢嶋:メルカリに入った時はメルカリが急成長している時だったので、問い合わせに忙殺されちゃって、自分たちがどこに向かっているのかが見えてないし、見る余裕もない状況でした。まずは中長期的に広報として何を目指すかという目標を決めて、現状と目標の差分をどう埋めていくかの戦略、ロードマップを作りました。そこの山の登り方みたいなのを、ロードマップを作ってチーム全員で同じ方向性に向かうように認識を合わせる。

そこの認識が合うと、やるべきことと、やらなくていいことを取捨選択できる。また、言語化されることによって共通認識を持って働けるようになる。今やってることが中長期的にどういう影響をもたらすのか、逆算で考えられるんです。最初に目標とロードマップを作って、やることをやらないとって感じですね。

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