リーガルテックLBox、クオンツ投資Wavebridge、ステイケーションStayfolioら調達——韓国スタートアップシーン週間振り返り(12月19日~23日)

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<本稿は12月24日初出ですが、原文に大幅な追記があったため、加筆して再掲します。>

12月19日~12月23日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示したのは11件で、資金総額は692億ウォン(約69.2億円)に達した。

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主なスタートアップ投資

  • キックボードシェアリング「XingXing(씽씽)」を運営する PUMP(피유엠피)がシリーz B ラウンドで200億ウォン(約20億円)を調達した。第3四半期の営業利益を達成する一方、全国サービスを拡大する業界8位の Hikick(하이킥)を買収した。今回の資金調達により、より安全な新規機器、AI ベースの次世代プラットフォーム開発、保険拡大など顧客サービスを強化する方針だ。
  • リーガルテック企業の LBox(엘박스)がシリーズ B ラウンドで180億ウォン(約18億円)を調達した。177万件に及ぶ判決文が検索できる法律サービスを提供し、弁護士1万1,000人が利用している。今回の調達を契機に優秀な人材獲得を始める予定だ。
  • ステイケーションプラットフォーム「Stayfolio(스테이폴리오)」がシリーズ A ラウンドで100億ウォン(約10億円)を調達した。全世界430以上の施設のキュレーションを提供している。今回の調達で、シンガポール、日本支社などを設置しグローバル競争力を高める一方、空間体験プラットフォームに進化する戦略だ。
  • クオンツ投資のフィンテック企業 Wavebridge(웨이브릿지)がシリーズ B ラウンドで100億ウォン(約10億円)を調達した。同社はワンストップデジタル資産管理プラットフォームを開発中で、今年初めにアメリカで設立した合弁資産運用会社、シンガポール事務所に続き、グローバル拡大にも乗り出している。今回の調達により、国内機関向けのデジタル資産ソリューションの開発、ライセンス確保に乗り出す方針だ。

トレンド分析

培養肉スタートアップが注目される理由

気候変動が進む中で、最近は人工肉の中でも培養肉に対する関心が高まっている。気候変動を抑えるには、畜産による二酸化炭素排出はもちろん、食事習慣にも変化が必要だという指摘が出てきているからだ。すでに一部のファーストフード店では植物性人工肉を手軽に楽しめる環境が作られている。研究によると、動物性食品を代替食品に変えることで、二酸化炭素排出量を80%減らすことができるという。

12月初め、イスラエルの培養肉企業 Believer Meats は、アメリカに世界最大の培養肉工場を建設すると発表した。1億2,335万米ドルを稼ぎだすこの工場が完成すれば、培養肉を最大1万トン生産できるという。工場内にあるバイオリアクターでは、動物を傷つけずに採取した細胞に栄養分や酸素などを供給、動物体内と同じ温度を維持し、培養後に細胞を収穫、調理、成形して製品に加工することになる。

イギリスのスタートアップ Primeval Foods は、シベリアトラ、ヒョウ、白ライオン、シマウマなどのネコ科動物を飼育し、個体から細胞を採取、細胞別に培養して少し特別な培養肉を作る計画を立てている。我々が日常的によく見る牛肉や鶏肉のようなものではなく、畜産過程を経ずに肉を得られる培養肉の特性を活かして新しい可能性を開くわけだ。

国内でも今年はあまり数多くはないものの、培養肉スタートアップが資金調達した。TissenBioFarm(티센바이오팜)はポハン工科大学出身の人工臓器開発者とハンヤン大学出身の ICT 開発者が共同創業した。3D バイオプリンティングで肝臓や腎臓など移植用人工臓器を開発していた技術を培養肉に応用し、求める部位別のスジ肉や霜降りを再現した培養肉を開発している。TissenBioFarm は資金調達で培養肉研究施設を増築する一方、生産単価を減らすための家畜細胞増殖や分化技術の開発にも取り組む方針だ。

SeaWith(씨위드)は韓牛培養肉開発スタートアップだ。今秋、シリーズ A ラウンドで10億ウォン(約1億円)を調達した。これにより、累積調達額は65億ウォン(約6.5億円)に達した。SeaWith は海藻類をベースにした培養肉を開発している。2021年5月には韓牛培養肉の開発に成功した。また、海藻類を利用した生産施設など商用化に拍車をかける予定だそうだ。

Cellmeat(셀미트)は培養タンパク質スタートアップで、昨年、培養細胞を利用して独島(ドクト)エビ(編注:日本の水産関係者はトヤマエビと主張している)を開発することに成功した。独島エビだけでなく、ロブスターやカニのような甲殻類培養肉の開発にも着手する計画だ。また、代替肉製品の販売を承認した唯一の国家でもあるシンガポールやアジアへの進出以降は、アメリカなどグローバル市場も狙っている。

SpaceF(스페이스에프 )は今年、産業通商資源部(日本の経済産業省に相当)が推進する「Alchemist Project」の人工エコフード部門に選定され、5年間で200億ウォン(約20億円)規模の研究を進めることとなった。同社は2021年に動物の筋肉から抜き出した幹細胞を培養液で育てる方式を採用して試作品品を開発したことがあり、同年8月にはシリーズ A ラウンドで70億ウォン(約7億円)を調達した。

Simple planet(심플플래닛)も培養肉企業として2024年の商用化を目指している。この企業は今年初め、有望なバイオ企業の投資説明会 Golden Seed Challenge に選ばれた。牛脂肪組織から脂肪幹細胞を分離して細胞化を行い再び培養して脂肪を得るが、この脂肪はもともと牛脾臓と同じ成分でできており、不飽和脂肪酸の一種であるオレイン酸を含有しているそうだ。

DaNAgreen(다나그린)は今年初め、シリーズ A ラウンドで80億ウォン(約8億円)を調達した。三次元細胞培養支持体構造物に幹細胞を培養・分化し、ミニ臓器を作る源泉技術を保有している。より低コストの大量培養が可能だそうだ。牛・鶏・豚などから抽出した筋肉細胞と周辺細胞を植物性タンパク質成分三次元支持体に入れ、筋肉組織に育てるハイブリッド方式だ。

投資銀行の Barclays が2019年の報告書で明らかにしたところによると、代替肉市場は2029年までに1,400億ドル規模に達する可能性があるという。全世界の肉市場でなんと10%を占める水準だ。 2030年までは全世界の食肉市場の30%、2040年までは60%以上を占めるという見通しもある。

国内市場も韓国農水産食品流通公社が明らかにしたところによると、国内植物性代替肉市場規模は2025年に2,260万米ドル規模にまで成長する見通しだという。 培養肉をはじめとする代替肉は、食習慣の改善、気候変動の取り組み、成長力の価値を前面に出して、今後も注目されていきそうだ。

【via StartupRecipe】 @startuprecipe2

【原文】

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