賃貸不動産を長期滞在・宿泊施設に転換し利回り最大化、リアテクノロジーズが3.9億円をシリーズB調達

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リアテクノロジーズが運営する「レジホ」の一つ「ボン東京浅草」
Image credit: Reah Technologies

マンションなど住居用不動産を、賃貸および宿泊施設としてハイブリッド運用するサービスを提供するリアテクノロジーズは、シリーズ B ラウンドで3.9億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、青柳和洋氏(イグニション・ポイントの創業者で昨年イグジット)が率いる BlueGoats Capital と、名前非開示のエンジェル投資家十数名。これはリアテクノロジーズにとって、2020年にニッセイ・キャピタルやエンジェル投資家から4.7億円を調達したシリーズ A ラウンドに続くものだ。

リアテクノロジーズは2018年11月、民泊予約サイト「STAY JAPAN」や地域振興サービスなどを運営するスタートアップ百戦錬磨からスピンアウトする形で創業した。百戦錬磨で CFO を務めていた橋野宜恭氏が、プロップテックに特化して事業を展開するために立ち上げたスタートアップだ。橋野氏によれば、プロップテック企業は数多くあるが、リアテクノロジーズは、不動産オーナーにとって所有物件の利回り最大化に特化したソリューションを提供する数少ない存在だという。

橋野宜恭氏

世の中はまだコロナ禍だが、インバウンド客は徐々に戻りつつあり、近年は特に、家族や友人など3人以上で、7日間以上滞在してゆっくり街を楽しむロングステイヤーの伸びが顕著だ。彼らは宿泊というより生活できる場所を望んでいるが、日本ではこのタイプの滞在した施設・物件がまだ多くない。リアテクノロジーズは、不動産オーナーから物件の運用を預かる形で、レジデンシャルホテル、略して「レジホ(同社の登録商標)」の名前で都市部を中心に事業を展開してきた。

集合住宅の賃貸物件は、需要量と供給量の間に大きな乖離を生じることがある。特に単純に数だけで比べれば、近年は供給が需要を上回っている状況だ。賃貸物件を宿泊施設にして運用するのは一つの方法だが、物件を住居として扱う場合と、宿泊施設として扱う場合では、法体系も運用するオペレータも全く異なり、話はそう簡単ではない。この宿泊施設として扱う場合のオペレーションを一気通貫で担い、そう運用することで賃貸よりも高い利回りをオーナーに還元するのがリアテクノロジーズのバリュープロポジションだ。

橋野氏がもともと金融業界出身ということもあって、リアテクノロジーズの強みの一つは価格調整や価格戦略の力でもある。住居として貸した場合、宿泊客を泊めた場合で、それぞれのケースの稼働率を考慮し独自ノウハウに基づいて計算、利益を最大化させるツールを社内で開発。稼働率にもよるが、客が埋まりさえすれば、宿泊用途で使ってもらった方が利益は大きくなるので、ハイブリッド運用していた不動産のうち、7〜8割はすでに宿としての運用にシフトしていて、客の多くを OTA(オンライン旅行代理店)などから集めているそうだ。

リアテクノロジーズは現在、条件に適合する物件が多い大阪・京都・東京などで事業展開を積極化させているが、今後、地域の条例(例えば、特区民泊特区=国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)などを研究しながら日本各地への事業拡大を検討するほか、IoT ソリューションの導入で宿泊施設運営の省人化などを模索する。

この分野では、matsuri technologies が昨年までに累積で34億円を調達している。また、香港のコリビングスタートアップ Dash Living は昨年、日本の intheHood Hospitality を買収し、日本市場への進出を発表。さらに、intheHood Hospitality の元 CEO が立ち上げたセクション L は昨年、2.5億円をプレシリーズAラウンドで調達した。彼らもまた、インバウンド客に宿泊施設を提供し、不動産投資家には日本の平均的な賃貸住宅不動産より高い利回りを提供することを謳っている。

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