姿を現したVela Partners、属人的なVCの仕事をAIでスケーラブルに変化させるモデルとは

SHARE:
Vela Partners の Web サイトにあるチャットボット。
Image credit: Vela Partners

ChatGPT をはじめとしたジェネレーティブ AI の話題が世界を席巻する中で、シリコンバレー界隈では今月初めあたりから、AI を活用したベンチャーキャピタル Vela Partners のニュースが俄かに注目を集めている。Vela Partners が設立されたのは2015年で、創業者は元 Google のシニアプログラムマネージャー——いわゆる Xoogler(ズーグラー)の Yiğit Ihlamur 氏だ。彼が VC 分野における AI の可能性に気づいたのは6年前というから、長きにわたって、ステルスを貫いたことがわかる。

Vela Partners のアイデアは、パートナーのイノベーションを加速させたいというパッションから始まったものだ。多くの VC が本当にデータサイエンスや AI を自分のビジネスで使うことには長けていない、あるいは実際に AI プロジェクトを設計、構築、提供したことがないことにショックを受けた。(Ihlamur 氏、Forbes のインタビュー)

投資先スタートアップのソーシングに AI を採用する VC はすでにいくつかあるが、Vela Partners が特徴的なのは、複数の Xoogler とオックスフォード大学の研究者たちが長年かけて開発してきた「Ventech」という独自のプロダクトを持っていることだ。このプロダクトは、ソーシング、企業評価、関係グラフ分析、マーケットインテリジェンス機能を備えていて、GitHub のリポジトリに20以上の機械学習モデルを研究論文付きのオープンソースとして公開されている。

Forbes で Ihlamur 氏にインタビューした、B2B セールスのための AI SaaS を開発するスタートアップ SalesChoice の CEO Cindy Gordon 氏は、投資家が AI を必要とする理由について、次のような見解を述べている。

投資家は才能の感知や財務指標には長けているが、マルチモデルの AI 能力を必要とする、より複雑な AI エンタープライズソフトウェアのビジネスモデルのスケーリングにおいて、長い時間軸を見逃すことは多い。

AI はしばしば厄介であり、AI インテリジェントソフトウェアを構築して商業化し、スケーラブルなアーキテクチャを構築するためには、最高で最も優秀な AI/ML(機械学習)の人材プールが必要だ。

Yiğit Ihlamur 氏
(写真は、Ihlamur 氏の GitHub のアカウントから)

Vela Partners は Ventech を使って、投資先の起業家やリミテッドパートナー(Vela Partners にとっての投資家)を支援するゲーム感覚の端末を開発した。この端末を使えば、起業家は AWS や GitHub などの開発者エコシステムにおける傾向や急成長するアイデアを分析でき、リミテッドパートナーは Vela Partners が特定のスタートアップに投資した理由について、自然言語を使って質問することができる。つまり、VC が資金調達する側と出資する側の両方とのやりとりを半自動化できることになる。

Vela Partners は先の500万米ドルに引き続き、新たに2,000万米ドルのファンドの資金調達をクローズした。投資先は、アーリーステージの product-led、すなわち、プロダクトがプロダクトのお客を連れてくるような、AI を活用したプロダクトを開発したスタートアップで(つまり、投資先にも半自動化的なビジネスモデルを求めるわけだ)、チケットサイズは50万米ドルから150万米ドルだ。これまでに、セルフレジの Grabango やロボット開発の Bear Robotics など32社に投資している。

Vela Partners の投資先の創業者の半数以上は Xoogler だ。日本からは ML を使った B2B プラットフォームを開発・提供する goooods が2022年9月に実施したシードラウンドで、Vela Partners や同様に Xoogler である野津一樹氏が率いる Incubate Fund US から出資を受けている。Ihlamur 氏が Xoogler であること(つまり、Xoogler の人的ネットワークを活かして投資活動していること)から考えて、Vela Partners は日本を含む世界で複数 VC との協調投資に力を入れるとみられる。

<参考文献>

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する