
Image credit: Masaru Ikeda
就農人口の減少や高齢化は止まらない。日本全体の人口や過疎化はなかなか止めようのない事実なので、農業を維持するための方法として話題に上るのが関係人口を増やす、というアプローチだ。生産地で農業を営む人、暮らす人のみならず、彼らが育てる農作物の恩恵に預かる都市生活者が、テンポラリ、または、定期的に、その地域の関わるというものだ。典型的なものとしては、都市生活者が週末を利用して生産地を訪れ、農家の畑の整備や収穫を手伝うというものだ。
ただ、この文章を書きながら、農家の人々からは「農業を舐めてもらっちゃ困る」という声が聞こえてきそうだ。蛇の道は蛇、何年もかけて、ひょっとしたら、先祖代々受け継がれてきた農業のノウハウを、素人が突然マネできるわけはないのである。農家は高齢化、都市生活者には比較的多いと考えれば、むしろ、双方が持つスキルや環境の違いを最大限に活かすことはできないだろうか。これが、テレワーク+農家=テレノーカー、という言葉の由来だ。関係者らは、農家をテレワークで支援する人たちをテレノーカーと呼んだ。

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テレノーカーは、デスクワークの傍ら(農家もいれば、会社員もいれば、自営業者もいる)、空いている時間を使って、農家の主にバックオフィスなどを支援するというものだ。経理・財務面を手伝う人もいれば、EC 直販している農家には、送り状の印刷までを遠隔で対応するケースもあるようだ。テレノーカーが支援することで、生産地の農家は農業のコア業務に集中できる。テレノーカーと農家の間に金銭の授受が発生するかどうかは特に定められていないようだ。
8日、東京でテレノーカー協会が発足した。代表理事を務めるのは、オンライン果物狩り、農業ワーケーション、観光農園 DX、農家ファンづくり支援など〝アグリテインメント〟を企画開発するノウタスの高橋明久氏だ。会員企業には、ネットプロテクションズ(東証:7383)、マイナビ、ニッセンレンエスコートなどが名を連ねる。ネットプロテクションズは、農業分野への決済手段の提供、マイナビは農業特化ニュースポータルを運営していることなどからシナジーを感じたようだ。

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テレノーカー協会では発足と合わせ、全国2ヶ所での農業体験への参加者の募集を始めた。今年10月1月にかけ、愛媛県南予地方の柑橘農家でのみかん狩りや販売員体験、長野県のりんご農園「キタイチ果樹園」での林檎狩りや販売員体験の機会を提供する。テレノーカー協会の LINE アカウントを友達追加することで、テレノーカーの個人会員になることでき、これらの農業体験にも応募が可能となる。また、個人会員には月に1名、全国の農産物をプレゼントする。
高橋氏は、自身が経営するノウタスでこれまでに農家を多数社員として受け入れ、前職までの経験や手の空いた時間を活用して、リモートワークによるシステム開発や資料作成に取り組んでいるという。テレノーカーが普及することで、直接的には農家に関わっていない人も、居場所にとらわれずに農家を支援することができるため、協会では最終的には農業の人手不足解消に繋げたいとしている。

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