Sun*(サンアスタリスク)、キメラからサブスク基盤「AE」を事業譲受——キーパーソン2人に聞いた今後の戦略

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左から:Sun*取締役の梅田琢也氏、キメラ代表取締役の大東洋克氏
Image credit: Sun Asterisk, Ximera

デジタルクリエイティブスタジオ事業を展開する Sun*(サンアスタリスク、東証:4053)は16日、キメラが運営するサブスクリプション管理プラットフォーム「AE」の事業譲渡契約を締結した。この事業譲受により、Sun*はデジタルクリエイティブスタジオ事業の加速と新たなソリューションの拡充を目指すとしている。

AE は、デジタルメディア企業がコンテンツの有料化やサブスクリプションモデルを容易に導入できる SaaS プラットフォームで、既存の CMS にタグを実装するだけで最短1週間でリリースが可能という特徴を持つ。Sun*はこの事業譲受を通じて、クライアント企業に対し、より包括的なデジタルソリューションの提供や新たな収益モデルの構築支援を見込んでいる。

Sun* は AE を譲受したことでどのようなビジネスを展開するのか。また、中核事業である AE を手放したキメラは、今後、どのような事業展開を図るのか。このディールの当事者である、Sun*取締役の梅田琢也氏と、キメラ代表取締役の大東洋克氏に話を聞くことができた。梅田氏や Sun*代表取締役の小林泰平氏とは、大東氏は Sun*がベトナムでのオフショア開発事業を始めた頃(編注:2010年代半ば、Sun*の当時の社名は2017年12月の改称前のフランジアだった)以来の旧知の仲だという。

大東氏は、GMO インターネットグループ各社の部門長などを経て、2013年に独立し Web コンテンツやニュースメディアのデータ分析、機械学習を活用した Web コンテンツ最適化などの事業に参画。2019年3月に CAMPFIRE 取締役 COO、2019年6月にキメラ代表取締役社長に就任した。大東氏は AE 事業譲渡にあわせ Sun*に移籍するが、今後もキメラの代表を兼任し、既存の Web コンテンツやニュースメディアのデータ分析などの事業は、キメラとして継続する。

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事業譲受の背景と狙い

今回の事業譲受の背景には、Sun*が持つ幅広い顧客基盤とキメラの AE が持つ技術力やノウハウを組み合わせることで、新たな価値創造を目指す狙いがあるという。梅田氏は、この事業譲受について次のように語った。

これまで我々は、クライアントの要望に応じてソリューションを提案するスタイルが主でした。しかし、今後はより積極的な提案を行っていきたいと考えています。例えば、メディア業界ではキュレーションに頼らず、自社でサブスクリプションモデルを構築し、直接ユーザを獲得する方が良いでしょう。また、EC やアパレル業界では、オンラインでの売上向上が重要課題です。このような業界特有のニーズに対して、我々から積極的にソリューションを提案していきたいと考えています。

一方、大東氏は、今回の事業譲受について次のように述べた。

Sun*の事業モデルは、これまでスクラッチ開発から納品までの一貫したサービスが中心でした。しかし、AE のような継続的な課金モデルやマイクロサービス的なアプローチを取り入れることで、事業構造の変革やプロダクト開発のスピード向上が期待できます。これにより、Sun*の事業にも新たな可能性が生まれると考えています。

今回の事業譲渡に伴い、キメラからは大東氏を含む5名の開発メンバーがSun*に移籍することも明らかになった。大東氏は、この移籍について次のように語った。

私を含めて5名全員が開発メンバーです。全員が自社プロダクトの開発経験を持っており、Sun*にとっては新たな要素を取り入れることができると考えています。これまでの経験を活かし、Sun*の事業拡大に貢献していきたいと思います。

梅田氏も、今回の人材獲得を通じて Sun*の組織体制強化を図る意図を示している。Sun*は2020年6月に上場を果たしており、投資家からは、さらなるスケールが期待されるところだが、そのための仕組みが必ずしもシステマティックにはなっていないところに課題を感じていたようだ。

我々の会社は特殊なのかどうかはわからないのですが、歴史的に組織に機能を作りにくかった部分があるんです。例えば、セールスチームは2022年の夏頃までは作れなくて、その状態で100億円くらいの売上を生み出していました。大東さんのような経験豊富な方々が加わることで、組織をより構造化し、新たな機能を実装していけると期待しています。これは単なる人員の補強ではなく、組織全体の質的な向上につながると考えています。

今後の事業展開と成長戦略

Sun*は、今回の事業譲受を通じて、より積極的な提案型ビジネスモデルへの転換を図ろうとしている。梅田氏は今後の事業展開について次のように展望を語っている。

我々が持つベトナムのリソースやプラットフォーム的な機能を活かすことで、他社との協業を通じてより大きな成長が見込めると考えています。今後は、共に成長していける仲間を増やしていきたいと思います。具体的には、AE のような特定の業界に特化したソリューションを複数持つことで、クライアントに対してより包括的なサービスを提供できると考えています。

大東氏も、Sun*との協業を通じた今後の展望について次のように語った。

AE の既存の事業方針を継続しつつ、Sun*の既存リソースとの連携を通じて、より汎用性の高いソリューションの開発や機能拡張を目指していきます。開発チームの拡大により、開発スピードの向上や取り組める領域の拡大が期待できます。例えば、AE の機能を他の業界向けにカスタマイズすることで、新たな市場開拓も可能になるでしょう。

大東氏の発言からは、開発チームの拡大による開発スピードの向上や、取り組める領域の拡大に期待を寄せている様子がうかがえる。彼はまた、今回の事業譲受を通じたSun*の今後の方向性についても、次のように総括した。

Sun*は従来の開発デリバリーモデルから脱却し、より事業性の高いソリューションの開発や提供を目指していくでしょう。単なるデザインや開発の提供にとどまらず、クライアントの事業に直接的な価値を提供できる、将来性の高い強固な事業パートナーとしての立場を確立していくことが重要だと考えています。AE の事業譲受は、そのための重要な一歩になると確信しています。

今回の事業譲渡/譲受とエンジニア陣の移籍は、Sun*が持つ顧客基盤や経営資源、キメラの技術力を融合する意味を持ち、両社にとって、相互補完が大きかったと解釈できるだろう。このディールが新たな成長機会を生み出すターニングポイントとなり、デジタルクリエイティブ業界全体に新たな価値創造の波を起こす可能性に期待したい。

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