人気インフルエンサーによるショートドラマ制作集団HA-LU、鈴木おさむ氏とyutoriの片石氏からエンジェル調達

SHARE:
左から、鈴木おさむ氏、岡春翔氏、片石貴展氏
Image credit: HA-LU

インフルエンサーマーケティングやショートコンテンツの台頭が著しい昨今、モデルで個人フォロワー数50万人を誇るインフルエンサー岡春翔氏(TikTokInstagram)が率いる HA-LU は、インフルエンサーを起用したショートドラマの制作を主軸に、10代・20代をターゲットとした斬新なコンテンツ戦略を展開している。

HA-LU は28日、エンジェルラウンドで資金調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、yutori(東証:5892)代表取締役社長の片石貴展氏と、元放送作家でベンチャーキャピタル「スタートアップファクトリー」を運営するゴーイングメリー代表の鈴木おさむ氏。調達金額は明らかにされていない。資金は、主にショートドラマ制作の加速と創業期のメンバー採用に充てられる予定だ。

HA-LU は今年4月、岡氏により創業。「青春2.0」をテーマにしたショートドラマレーベル「HA-LU」を運営している。TikTok や Instagram などの SNS を活用し、10代から20代の若年層をターゲットにしたショートドラマコンテンツを制作・提供している。人気シリーズのドラマには、「ハル学園」や「真夜中の12時」などがある。

岡氏は、「2024年中に合計500話のショートドラマを制作する予定」と意欲的な目標を掲げている。また、AI などの先端テクノロジーへの積極投資やグローバル展開を見据えた事業アライアンス・メディアリレーションの強化も計画している。HA-LU はまた、α 世代向けの商品やサービスを提供したい広告主、事業パートナーとの協業も積極的に推進していく計画だ。

アパレルからショートドラマへ

岡春翔氏
Image credit: HA-LU

岡春翔氏は、20歳でアパレル事業を立ち上げ、インフルエンサーとしても活動してきた経歴を持つ。TikTok や Instagram でフォロワー50万人を獲得し、その後、アパレル事業を営んでいた。一時期は、渋谷のリアル店舗と e コマースとあわせ、複数のアパレル事業を経営していたが、リアル店舗の運営に苦戦し、新たなビジネスの可能性を模索し始めた。

自分はアパレルを好きじゃない、と思ったんです。むしろ、(アパレルを)消費する側が好きだと思って。結局、売る側は、めちゃくちゃ自分が作りたいものを作ると売れないんですよ。(岡氏)

この経験を経て、岡氏は YouTube での活動を開始。エンタメ大手の支援を受けて YouTube チャンネルを立ち上げ、2年間にわたりコンテンツ制作に携わった後、HA-LU を設立し、ショートドラマの制作に特化したビジネスモデルを構築した。ユーザからの課金収入を得るショートドラマ制作と、企業の受託案件が主な収入源だ。特にユニークなのは、インフルエンサーを起用した制作体制だ。

卵の俳優さんの卵とか、インフルエンサーで俳優もできるみたい人なとかが、たくさんいます。若手タレントの発掘と育成にも力を入れています。(岡氏)

<参考文献>

鈴木おさむ氏の視点

鈴木おさむ氏
Image credit: HA-LU

出資を決めた鈴木氏は、岡氏との出会いについて「最初に彼の〝人生〟のプレゼンを聞いて、面白いと思った」と振り返る。初見の鈴木氏に岡氏が披露したのは、起業に関するピッチではなく、岡氏が将来成功することを誓ったプレゼンだったのだ。「一僕は偉人になる一」と書かれたプレゼンを見て、最終的には、「こういうやつが偉人になるのかもしれない」と感じたという。

当初は社名も現在のものと違って覚えられないものだったそうだが、鈴木氏は自身ののシェアオフィスに岡氏を迎え入れ、ビジネスモデルやサービス内容をブラッシュアップしていった。企業の受託案件がひっきりなしに舞い込んでいることもあって、エンジェルラウンドのステージながら、HA-LU にはすでに20名以上のメンバーが集うようになった。

インフルエンサー自体が集まってショートドラマを作るというのがすごく面白いと思いました。日本人は以前から、漫画は買ってきたけど、ドラマは無料で見て育ってきた。そういう意味で言うと、1エピソード50円で買って見てもらうというのは、なかなかやっぱりハードル高いんですよ。

ショートドラマで一番の課題はマネタイズですが、10代に向けたコンテンツにスポンサーが付く可能性は高い。なぜなら、10代特化のソフトが少ない現状で、彼らのコンテンツは貴重だからです。(岡さんの)インフルエンサーとしての知名度を活かして、企業から直接、案件を獲得できるのは強みです。これからの5年間の勝負で言うと結構いいんじゃないか、と思ったわけです。

片石貴展氏との出会い

Image credit: HA-LU

岡氏は約3年前、現在最も尊敬する経営者だという片石貴展氏(yutori 代表取締役)と出会った。当時、岡氏はまだ起業前で、ビジネスの世界についてほとんど知識がなく、yutori の規模などについても知らなかったが、片石氏のオーラに圧倒されたという。この出会いが、岡氏の起業への道を決定づける重要な転機となったようだ。

岡氏は起業時の資金調達について、非常にユニークな戦略を採用したと述べた。一般的には多くの投資家から幅広く資金を募ることが多い中、岡氏は最初のエンジェルラウンドの投資家として、たった2名からのみ投資を受けることにこだわったという。この決断の背景には、単なる資金調達以上の思いがあったようだ。

最も世話になった、おさむさんと、最も尊敬する経営者の片石さん、この2人だけでいいと思いました。お金以上に、この2人から学べることの方が大切だと考えました。(岡氏)

Image credit: HA-LU

片石氏から投資を受けるため臨んだピッチでは、ビジネスプランも企業理念も用意していなかったそうで、片石氏から「企業理念を考えてきて」と言われた岡氏は、2週間かけて真剣に考え抜いたそうだ。「青春とは何か」というテーマを軸に、自社の存在意義を徹底的に掘り下げた。この経験を通じて、岡氏は企業理念の重要性を身をもって学んだという。

何度も修正を重ねて、やっと企業理念ができた時の喜びは忘れられません。理念があってこそ、ビジネスの方向性が定まる。今では当たり前のことですが、当時の自分にとっては大きな気づきでした。まだまだ未熟ですが、将来は、片石さんのように、多くの人に影響を与えられる経営者になりたい。(岡氏)

YH リサーチの調べによれば、ショートドラマ市場は、 2024年に世界市場規模が約2兆円に達し、 2029年には566億ドル (8兆7,000億円) に拡大すると見込まれている。HA-LU は、ショートドラマ制作チームのさらなる進化を目指し、クリエイティブ人材の採用強化を図るとしている。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する