世界中から「アドウェイズすげー」って言われたいんですーー隠れたキーマンを調べるお・アドウェイズ山田氏インタビュー

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編集部注:「隠れたキーマンを調べるお」は、国内スタートアップ界隈を影で支える「知る人ぞ知る」人物をインタビューする不定期連載。毎回おひとりずつ、East Venturesフェローの大柴貴紀氏がみつけた「影の立役者」の素顔に迫ります。

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先月アドウェイズの執行役員に29歳の若さで就任した山田翔氏。アドウェイズと言えば当時の史上最年少上場社長となった代表取締役社長CEOの岡村陽久氏が有名です。

この岡村社長が絶大な信頼を寄せるのが山田氏で、社内でまだスマホ懐疑論が出ていた2010年からスマホ事業を提案、推進し、現在の好調アドウェイズを築いた主役のお一人になります。執行役員となり、名実ともにアドウェイズ主役の一人となった山田翔氏、通称「やましょう」さんにインタビューしてみました。

これまでのアドウェイズにはいなかったタイプ「期待の新人」

大柴:やましょうさん、よろしくお願いします。今日は新オフィスでのインタビューです。

山田:7日からこの新しいオフィスです。気が引き締まりますね。

大柴:先月執行役員になられましたが、入社したのはいつですか?

山田:2007年に新卒で入社しました。大学では、社会にある問題を解決する仕組みについて勉強してて、問題を解決する手段としてプログラムやデザインを学んだんですよ。プログラム言語とか難しかったんですが、できる先輩から教えてもらえばいいんだ!って思ったんです。実際その方法は効果的で、卒業研究は「人と人がどうやったら繋がるのか?」という感じのテーマにしました。マッチングの仕組みですね。

大柴:なるほど。そして就職活動。

山田:札幌でおこなわれた就職イベントみたいのに参加しました。最初に面接したのがアドウェイズだったんです。なんか面白そうだったし、実際話してみたらクレイジーな会社で(笑)。面接の時に「自分はこういうサービスを作りたい!」という資料を持参したのですが「面白い」とか「これ、一人でやったの?凄いね」など反応も良くて。

それで他の会社の面接は全て断ってアドウェイズ一本に絞りました。

大柴:賭けですよね(笑)

山田:資料をプレゼンして反応良かったし、絶対にいけるだろって(笑)。でも当時のアドウェイズには営業とエンジニアしかいなくて、自分のようなタイプは存在しなかったらしく、社内では「どうしようか」と悩んだらしいですね。でも最終面接をしてくれた松嶋さん(現アドウェイズHRM&PR担当執行役員の松嶋良治氏)が「絶対必要ですよ。採用しましょう」とプッシュしてくれたらしく、めでたく入社することになりました。

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大柴:入社して早速自分が企画したサービスを作ったんですよね。

山田:研修とかが一段落した7月頃から開発がスタートしました。自分がプロデューサーで、他にデザイナー、エンジニア、オフショアで数人のエンジニアも。大学卒業時に研究し、面接でプレゼンしたビジネス向けのSNSを作りました。それはもう「期待の新人」ですよ(笑)。実際サービスリリースした後の総会でMVPをもらいました。

初めての挫折と初めての成功

大柴:そのビジネスSNSは今はあるのですか?

山田:失敗したんです。上手くいかなかった。アドウェイズはこれまでこういったサービス運営の経験が無かったし、自分も全然未熟で。上手くサービスを盛り上げる術を知らなかった。それでそのサービスから自分は離れることになりました。サービスも終了しました。

大柴:入社以来約一年、これまで順風満帆できてたと思うのですが、初めての挫折ですね。

山田:正直腐ってたし「もう辞めようかな」なんて思ったりもしました。でも今やめても何もできないし、このまま失敗だけして去るのも嫌だなと。そんな感じで1年ちょっとが過ぎた2009年の夏にPC向けアフィリエイトJANetのサービス改善を担当することになったんです。

エンジニアと営業の間に立って、プロジェクトを回しました。チームの業務効率化やサービスの改善をしたら結果が出た。会社において自分のできることって結構あるんだなって実感したんです。それともう一つ、やっぱり儲けないとダメだなって。

大柴:それまでは「自分がやりたいこと」だけしか興味が無かったけど、視野が広がったんですね。

山田:そうですね。既存事業の改善が上手くいった頃、mixiのオープン化の話があって。既にオープン化されてたFacebookを調べたら、Zyngaがリワード広告を活用してたんですよ。「これはアドウェイズの既存サービスである、ポイント獲得コーナー用管理システムを改良すれば、mixiでも同じようなサービスできるな」って思って同期のエンジニアと二人で作ったんです。それがリワ-ドプラスです。

これが成功したんですよ。入社以来、新規事業をやりたいといろいろやってきたけど、新規事業で初めて当てたのがリワードプラスでした。

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「このままいくと5年で会社は潰れる!」

大柴:ようやく初めて新規事業を成功させました。快進撃の始まりですね。

山田:でもその後、会社を辞めようかなって(笑)。プロジェクトが毎回組まれ、毎回解散する。その都度信頼関係を作ったエンジニアなどと離れることになるんですよね。それが嫌で。

大柴:なるほど・・・。

山田:一発当てたし、辞めようかと。そんな時アメリカで開催されたGDC(Game Developers Conference)を見てきた野田さん(現アドウェイズ取締役海外事業担当の野田順義氏)が「アメリカでは主戦場は既にスマートフォンに移ってる。スマホでもTapjoyが伸びてる。日本にもその波が来そうだけど、やましょう作れる?」って言うんですよ。

で、「そんなの僕だったらすぐできますよ!」と。乗せられた感じですよね(笑)。でも実際スマホの流れは確実に日本にも来ると凄く思ってたし、スマホリワードはやるべきだと考えてました。

大柴:それですぐに開発に着手したんですか?

山田:いや、当時はフィーチャーフォンが絶好調で、経営陣も「スマホ流行るの?やるにしても早いだろ」といった感じでした。でも絶対にスマホ時代がくるし、今やらないとヤバいと思ってたので「このままだと5年後に会社が潰れる!」って経営陣にプレゼンしたんですよ。熱意が伝わったのか、岡村さんも「ならばやってみよう」と。

大柴:ようやく開発ですね。

山田:これまでのやり方では嫌だったので、部署化してもらったんです。野田さんと一緒に過去に自分と同じプロジェクトに携わってたエンジニアを社内の他の部署から呼び戻したり、会社を辞めていったエンジニアも声を掛けて戻ってもらいました。営業も、当時アドウェイズのメイン事業だったモバイルアフィリエイトのトップ営業をチームに加えました。自分が必要とする人材を集めたんです。

大柴:会社を辞めた人も呼び戻したってのは凄いですね。

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山田:2010年11月にスマホ向けリワード広告AppDriverをリリースしました。サービスはできたんだけど、しばらくは全然ダメで。市場もまだ小さかったし、国内の企業もスマホへの理解が低かった。「これからはスマホの時代。こういう世界が広がってるんです」とたくさんの企業に営業して回りました。営業というかビジョンを説明するというか。

地道な活動が実を結んで徐々に売上が出てきて、2011年7月のグリーさんとの提携で一気にブレイクしましたね。

大柴:ビジョンを説明して回るってのは面白いですね。確かに現実に無い世界を伝えるのはそれしかないですよね。

山田:チームでも会社全体でもビジョンを何度も説明したんですよ。それまでは仕様書を書いて、それに付随する形で少しビジョンみたいなものを話すケースはあったけど、サービス全体のビジョンを構築して伝え続けた。それを重視した。それまでは自分も手を動かして開発したけど、今回からそれを辞めた。どうやったらみんなが動いてくれるかを考えて行動したんです。

大柴:なるほど。大きな転機ですね。

山田:AppDriverは自分の中で成功体験として大きいです。

大柴:でも一旦リワードから離れるんですよね。そして新規事業開発室を作って副室長に。

山田:広告を含めた、新しい事業をもっと作っていこうと。自分は新規事業をいくつかやってきて、それなりに結果も残してきた。けれどそれだと属人的で、再現性が低いので、新しい事業を生み出す仕組みを作っていかないとなーって思って。でもいろいろ思うところがあって2013年夏に子会社(Bulbit)を設立しました。Bulbitで全世界対応のスマホ向け効果測定システムPartyTrackなどを開発しました。

大柴:でもそれだと結局・・・

山田:そうそう、属人的なんです。それでイライラして、今年3月に経営陣にプレゼンしたんです。端的に言うと自分に新規事業、投資に責任を持たせてくれ、と。感覚ではなく、指針を決めてやらないとダメだろって。そしたら「そこまで言うなら任せよう」となり、執行役員になりました。

やっぱりアドウェイズが成長するために、新規事業を生み出し成功させる仕組みを作らないといけない。勝負はこれからです。

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自分が理解できない範囲も信じて任せてくれる岡村社長

大柴:ざっとやましょうさんのこれまではわかりました。凄く頼もしいけど、扱いづらいっすね(笑)。そんなやましょうさんを信頼して起用してくれる会社も凄いなぁって思った。

山田:新卒でいきなりプロジェクトをやらせてもらったし、しかも失敗して赤字出して・・・。そのあと腐ったり、文句言ったりしたけど、再び新規事業を任せてくれたり、自由にやらせてもらったり。アドウェイズだからそれができたんじゃないかと思う部分もありますね。

大柴:岡村さんはどんな方なんですか?

山田:岡村さんは自分が理解できない分野も、部下が熱意を持って提案したら信頼して任せてくれるんですよ。岡村さんに何度も意見をぶつけた事があるけど、揉めたことは一度もない。器がデカいなって思います。信頼してるし、信頼されてると思ってる。信頼されている以上、不義理な事はしたくないし、期待に応えていきたいって思ってる。

大柴:理解できない分野を攻めるのは勇気いるし、しかもそれを部下に完全に任せるのは結構難しい。

山田:一生懸命頑張った人は信頼してくれます。ウエットな決断をする場合も多いけど、逆にそこがいいのかなって思ったりもしますね、最近。

あと、純粋に岡村さんは「アドウェイズすげー」って言われたいんですよね(笑)。億単位の人から「すげー」って言われたいんですよ。僕も言われたい(笑)。僕は、世の中にある問題を解決するサービスを提供して「すげー」って言われたい。そのために頑張ってます!

株式会社アドウェイズ(ADWAYS)

世界中から「アドウェイズすげー」って言われたい

大柴:さて、これからですが・・・。

山田:繰り返しになるけど、僕は世の中にある問題を解決するサービスを提供して「すげー」って言われたい。それも億単位の人に言われたい。そのためには世界規模のサービスをやらないとダメで、PartyTrackはそういう思想の下、最初からグローバルサービスとしてリリースしました。

大柴:これからの課題は会社全体のいろんな場所から新規事業が出てくる組織にしていかないとですね。

山田:そうですね。まずは自分に関わる人を増やして、当ててもらう。一人でやるのも良いけど、みんなでやるのが楽しいし。社内の新規事業でもVC業務の方でも、次の可能性を信じて投資していきたいですね。自分は可能性を信じてサポートしていきたいと思います。自分が岡村さんから信頼されて任されてここまできたので、それを今度は自分が実践していきたい。

大柴:その文化が脈々と受け継がれていくと良いですね!やましょうさん自身の将来のイメージってどんな感じですか?

山田:執行役員に選任されたし、まずはそこにコミットして結果を出したいですね。将来的には起業してみたいなって気持ちもあります。でも、起業だけじゃなくて会社の中で「大きなこと」をやるって選択肢もあると思うんですよね。もう少しそういう選択をする人が増えてもいいのかなって思うんだけど、そのためにもリターンの仕組みだったり、その辺を整備していかないといけないのかな。

大柴:そうですね。いやぁ、たくさんお話を聞けました。ありがとうございました。アドウェイズすげー!

山田:アドウェイズすげー!

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※注釈:撮影協力してくれたアドウェイズ広報の遠藤由貴さん

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