経営とデザインに関する勉強会「UX Sketch」が初開催ーー3名のデザイナーがUXと事業の関係について語る

Junya Mori by Junya Mori on 2015.7.3

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User Experience、略して「UX」。デザイナー、エンジニア、ディレクター、プロダクト開発に携わる人であれば、一度は耳にしたことがある言葉だろう。この「UX」について、新たな切り口からイベントを定期的に開催していこう動きがある。

リクルートのメディアテクノロジーラボが先週末開催された「UX Sketch」は、「UXと事業開発」をテーマにした勉強会だ。

「UX Sketch」が行ったのは、UXが本来その前段階にあるはずの「事業計画」とあまりセットで語られてこなかったことへの問題提起だ。「事業計画(経営)」と「UX(デザイン)」。この2つについて語り合う機会を設けるべく、今回の勉強会を企画した。

当日は、ランサーズでチーフデザイナーを務める竹中 哲氏、リクルートテクノロジーズの馬場 沙織氏、root代表取締役の西村 和則氏の3名が登壇した。

チームにUXカルチャーを導入

ランサーズでチームデザイナーを務める竹中氏は、プロダクトオーナーとコミュニケーションをとりながら、UXを重視するチームの文化を構築していった経験について語った。

ランサーズ チーフデザイナー

ランサーズ チーフデザイナー 竹中 哲氏

竹中氏「メンバーも増え、コンテンツも増え、対応していくためにリニューアルをするも、つぎはぎ状態。気がついたら新機能が出てる、そんな状況が続いていました。

こうした状況を改善し、統一されたプロダクト品質を保ち、中長期の成果を生むプロダクトを作っていくためには、社内にUXを浸透させていくことが重要だと考えました」

他社のUXガイドラインを参考にして、ランサーズも「時代にあったビジネスを提供する」というコンセプトを「Capitalizate、Communicale、Charm」の3つをUX指標に設定した

竹中氏「ガイドラインを設定したことで、機能追加する際に、単なる機能紹介をするのではなく、どんな体験が可能になるのかを伝える文言に変更するなど、ユーザが体験を想像できるような表現をするようにと変わっていきました」

UXを社内に浸透させるために、竹中氏はまず小さな一歩を踏み出した。会議での発言の回数を増やし、社内勉強会でUXについて触れるようにし、全社会議で宣言を行い、実際にアクションに移していった。ユーザインタビューを実施したり、ワークショップを開催してエンジニアと手を動かしてみるなど、小さなことから少しずつ積み重ねていった。

竹中氏はUXをプロダクトオーナーに導入してもらうには、「UXナンパ」が必要だとし、以下の資料を紹介。相手が求めているタイミングに合わせて、提案していくことが重要だと紹介。

サポートチームなど一部の人のみ見れる状態だった問い合わせ内容を、リアルタイムにディレクター、デザイナー、エンジニアが見れる状態にしたり、インターンや新人研修でサービスになれていない人にサイトを操作してもらって定性調査を実施する、といったことも実施してきたそうだ。

社内にUXを導入するためのアプローチを繰り返してきたランサーズでは、上流と開発サイドの認識が合わせられるようになってきており、時代に合った課題設定が可能になってきたという。

竹中氏「これだけ不確実性が高い時代では、地図はもはや役に立たない。必要なのはコンパスだ」とMITの伊藤穰一氏も語っています。私はこの不確実な時代においてコンパスの役割をになってくれるのがUXだと思います」

事業フェーズとUXデザイナーの役割

リクルートテクノロジーズの馬場 沙織氏

リクルートテクノロジーズの馬場 沙織氏

ミクシィ、nohanaを経て、現在リクルートテクノロジーズでUXデザイナーとして活動している馬場 沙織氏。彼女は様々な事業フェーズにおいてデザイナーとしてプロダクトに関わってきた経験を持つ。事業フェーズとUXデザイナーの役割について語った。

馬場氏「UXというのは色々な定義がある言葉です。一般的には、ユーザの主観的な体験価値を指すもの。「UXデザイン」は基本的には人間中心設計の考えで、ユーザからのフィードバックを得てPDCAサイクルを回しながらデザインんしていくことだと考えています。

このとき、ユーザだけのニーズを満たすのではなく、ユーザと組織。両方の要求を満たすようにすることが重要です。組織の要求とはビジネスニーズ、つまりデザイナーはビジネスニーズの把握が重要です。」

UXデザイナーはビジネスニーズを理解した上でデザインすることが重要だと語る馬場氏。ビジネスニーズというものは、事業のフェーズによって異なる。そのため、UXデザインの目的もそれに合わせて変化する。

馬場氏「一番大きな分岐点は、スケール可能なビジネスモデルが成立しているかどうか。ビジネスモデルが成立する前は、色々なモデルを試行錯誤しながらプロダクトを磨いていきます。ビジネスモデル成立後のUXデザインの目的は成長です。ビジネスモデルからブレークダウンした各種指標向上が役割の中心になります。」

ミクシィで時代の変化とカスタマーニーズの変化を体験しながら、スキルを磨いていた馬場氏が次の舞台に選んだのがnohanaだった。

馬場氏「nohanaは当時、メンバーが4名。当時のnohanaのビジネスニーズは、ここから事業提案につなげていきたいというもの。ヒアリングを重ね、コンセプトを練り、プロトタイプを作っていきました。サービスをリリースした後にユーザがついてきました。

ただ、ユーザは獲得できたけれど、ビジネスモデルはまだできていない段階。サービスとは別のところで収益をあげるためにクロスセルを考え、販売するためのプロダクトの開発にも携わりました。」

nohana時代の馬場氏の活動については、こちらでスライドを公開している。

馬場氏「現職では「勉強サプリ」の開発に携わっています。すでにリリースしているものの、会員獲得中のフェーズ。現在のビジネスニーズは、リクルートホールディングスから追加投資を獲得したいというものです。

半期でサービスのKPIの様子を見て、追加投資の可否が決まります。そこに向けて、KPIの設計やKPIを見るためのデータ集めなど、成果を上げるための環境づくりを行っています。」

UXデザイナーといっても、ビジネスのニーズによって手法ややるべきことは変わる。幅広く手段を自分のものにする必要があり、ビジネスのお作法も知る必要がある、と馬場氏は語った。

事業企画のフェーズから関わる

root代表取締役の西村 和則氏

root代表取締役の西村 和則氏

「サービスデザイン」を掲げるデザイン会社rootの代表を務める西村 和則氏は過去にウェブ制作会社に勤め、自分でサービスを開発した経験を持つ。その経験から、事業化フェーズにフォーカスしたデザイン会社があったら面白いのではないかと考え、rootを立ち上げた。

西村氏「今求められているデザイナーは、ビジュアル面だけを見ている人ではなく、上流工程から関われる人だと思います。rootでは、「設計」フェーズに注力しており、事業企画や仕様策定の部分から関わるようにしています。クライアントにはスタートアップが多く、事業の企画から一緒に取り組んできました。」

rootが手がけてきた案件のひとつに、映像のクラウドソーシングサービスを提供している「Crevo」がある。以前は、デザインのクラウドソーシングサービスを提供していたが、なかなかマーケットにフィットさせるのが難しかったことから、ピボット。映像へと舵を切った。

西村氏「Crevoも事業企画のフェーズから関わりました。そのフェーズの問題は、「課題が定義できない」ということ。事業の課題もプロダクトの課題も両方です。そこで、問題を整理することから取り組みました。問題は大きく分けて、組織課題とプロダクト課題が挙げられます。」

西村氏は組織課題として、

  • 将来やりたいことを考えて事業モデルを考えるからやりたいことが多過ぎる
  • ソリューションばかり考えて実行に落ちない

といったものを挙げ、プロダクトの課題として、

  • 既存ユーザの意見に引っ張られる
  • 競合のプロダクトを参考にする

といったものを挙げた。

西村氏「組織課題の解決のために重要なことに、ビジネスサイドと開発サイドのスケジュール目線のすり合わせがあります。ここが衝突しがちなので、デザイナーは中立的な目線で両者のすり合わせを行っていく必要があります。

プロダクト課題については、機能要件から話をしてしまうのではなく、実現すべきユーザ体験を話すことから始めること。何に対してユーザが価値を感じるのかを定義することで、間違った機能を実装することはなくなります。」

ビジネスサイドと開発サイドの間に立つ立場として、デザイナーは実現したい価値などを言葉に落としていくことが重要だと西村氏は述べた。rootではこうしたビジネスへの理解があるハイブリッド型のデザイナーをデザインディレクターと呼んでいるという。

3人のゲストによるトークが終了した後は、参加者同士の交流会が行われた。MTLは、今後定期的にこうした勉強会「UX Sketch」を開催していくという。デザイナーに限らず、エンジニアやディレクターの人々もチェックしてみてはいかがだろうか。

Junya Mori

Junya Mori

モリジュンヤ。2012年に「Startup Dating」に参画し、『THE BRIDGE』では編集記者として日本のスタートアップシーンを中心に取材。スタートアップの変革を生み出す力、テクノロジーの可能性を伝えている。 BlogTwitterFacebookGoogle+

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