フィンテックは”貧テック”?ーー日本において金融とテクノロジーが存在感を増すために必要なこと

Junya Mori by Junya Mori on 2016.2.21

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「Tech and Life」をテーマに開催された「THE BRIDGE Fes」。100社のスタートアップのブースが会場にひしめく中、中央のステージではトークセッションが開催された。

本稿では「日本はなぜFinTechスタートアップが少ないのか?」のセッションの模様をお伝えする。「FinTech(フィンテック)」は、金融関連テクノロジー。ビットコインをはじめとする仮想通貨や決済、資産運用、クラウドファンディングやレンディングなど含まれるテーマは幅広く、スタートアップも増えている分野だ。

同セッションのゲストは、インフキュリオン 代表取締役、一般社団法人FinTech協会 代表理事の丸山 弘毅氏、マネーフォワード取締役、マネーフォワード Fintech 研究所長の瀧 俊雄氏。モデレーターは、 日経BP 日経FinTech 編集長の原 隆氏が務めた。

日本はフィンテックが少ない?

原氏:昨年の後半ごろから「フィンテック」というテーマが盛り上がり始めました。テーマが盛り上がってきたのが最近であることから、フィンテックのスタートアップが少ないことも仕方がないことかもしれません。その前に、そもそも本当に日本のフィンテックスタートアップは少ないのでしょうか?

瀧氏:日本で「フィンテック」にカテゴライズされる企業はそこそこ大きい企業30社、小さい企業まで含めて100社ほどです。世界だとそこそこのサイズの企業でその数は1000を超えます。これは世界における日本のGDPや金融市場で占める割合からすると小さい。海外はレンディング系の、銀行と争うようなサービスも存在します。日本はこうしたサービス少ないですね。

丸山氏:昨年、「FinTech協会」が立ち上がってから徐々に加盟企業が増えてきています。フィンテック関連のサービスがようやくリリースできた、という企業も多いんです。フィンテックが話題となる前から、会社は準備していたものの、サービスのリリースまでに時間がかかってケースも多い。裾野は広がっていないように映りますが、まだ登場していないだけなのかもしれません。

原氏:フィンテックに共有の課題は何かあるのでしょうか?どんなテーマがスタートアップの間では話題になっていますか?

丸山氏:業界全体では人材が不足していますね。まだ大企業から人が流れてきている段階ではありません。また、サービスのジャンルによっては、法律の面などから金融機関と提携しないといけないものもあります。

瀧氏:こうした環境は海外だと異なりますが、これは雇用環境の違いが大きいと考えています。海外では、景気が悪くなったタイミングで数学が得意な人材が流れ、デリバティブ市場が生まれました。リーマン・ショックが起き、景気が悪くなったタイミングではまだフィンテックというテーマの成長が間に合ってなかったため、フィンテックには流れてきませんでしたが、その代わりに、アドテクに流れ、同テーマは成長しました。日本では、優秀な人材がいるマーケットが不況になったとしても、ベンチャーへ移ることが選択肢に浮かんできません。

まずはマーケットを拡大するフェーズ

マネーフォワード取締役、マネーフォワード Fintech 研究所長 瀧 俊雄氏

マネーフォワード取締役、マネーフォワード Fintech 研究所長 瀧 俊雄氏

瀧氏:決済は異なる業界から参入するケースもありますが、P2Pレンディングはそうなっていません。たとえば、スタートアップがP2Pレンディングのプラットフォームを立ち上げて融資しようとしても、銀行がそれよりも低い金利でお金を貸そうとする。銀行が競争相手になってきます。そうなると、スタートアップはなかなか融資市場に入りづらい。対立を生みづらい構造になっています。

原氏:なるほど。丸山さんはどう思われますか?

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丸山氏:競争はこれから起こしていかないといけません。ただ、欧米と違って、日本はまだフィンテックの手前かなと思っています。たとえば、現預金比率が異常に高かったり、低消費者層におけるクレジットカードの利用率が半分以下だったり。インターネットバンキングもほとんど使われていません。基本的なITの活用が弱いんです。フィンテックは、こうしたサービスの上に乗っかって生まれてくるもの。日本はITや金融の活用度が低いので、一緒にこのマーケットを広げていくという文脈のほうが強いですね。

フィンテックや”貧テック”?

原氏:今年に入って、マイナス金利、円高、株安など、市況がかなり混乱しています。いまの市況はフィンテックの業界にとってプラスなのでしょうか、それともマイナスなのでしょうか。

瀧氏:米国がフィンテックが流行ってきた背景のひとつに、ミレニアル世代の存在があります。上品な言い方をすれば草食系、下品な言い方をすればドケチな人たち。彼らは学費も高く、借金を抱えて社会人になります。社会人になって金融危機を2回ほど経験していて、資産の価値をあまり信じなくなっている。そこでたとえばボーナスが出たとしても、貯金するのではなく、借金の返済に回す。

そんな彼らとフィンテックは相性がよく、支出を切り詰め、ディールの効率化をしてくれます。こうした背景から「貧テック」などと呼んだりすることも。フィンテックは、貧しい中いかに生き残るかという場面で力を発揮します。景気がよくなるとフィンテックがなくても追い風ですから。日本人は元々草食系ですから、環境としては近しいはず。私はいまの状況は楽観的に見ていますね。

インフキュリオン 代表取締役、一般社団法人FinTech協会 代表理事 丸山 弘毅氏

インフキュリオン 代表取締役、一般社団法人FinTech協会 代表理事 丸山 弘毅氏

丸山氏:今って、すごい意外なところが伸びてるんですよ。昔ながらの百貨店積み立てが増えてるんですね。現金や株価、預金よりもちょっとでも増える、消費のために準備しておくというニーズがあるのなら、フィンテック的にはプリペイドでちょっと増えるようにしたりだとか、お金の動かし方の新しいものを探し出してフィンテックに流れてくるのかな、と期待はしています。

フィンテック、これからどうする?

原氏:銀行法の改正によって、金融持ち株会社であれば15%、銀行であれば5%までと定められていた出資比率が緩和する方針となっています。この緩和はフィンテック業界にどう影響するのでしょうか?

瀧氏:これまでも、5%以内での出資は起きていたので、協業はできていたんです。ただ、50:50で出資して、ジョイントベンチャーを作りましょうというようなというような気合の入れ方はできなかった。これができるようになるというのは、プラスですよね。

原氏:そのプラスというのは、イグジット先が増えるということにもなるのでしょうか?

日経BP 日経FinTech 編集長 原 隆氏

日経BP 日経FinTech 編集長 原 隆氏

瀧氏:銀行とベンチャーが一緒になったときに、ちゃんと働けるかというマネジメントアジェンダはあるものの、これは条件次第だと思います。一緒になったときに、ベンチャーがパフォーマンスを発揮できるようなイグジット策にしたらいい。それは金融庁も望むと思いますしね。出口が生まれるなら、入口も広がります。

原氏:丸山さんはいかがですか?

丸山氏:各金融機関がそれぞれのホールディングス内に会社を作っていくと思います。ただ、やろうにも人材もないしノウハウもない。そこで、ベンチャー側がノウハウや技術を提供していくことができれば、イグジットだけじゃなくてスケールも期待できるのでは、と思います。

原氏:今、フィンテック協会にはどういった金融機関が参加されているんですか?

丸山氏:今は、3大メガバンクをはじめ、銀行に、カード会社、最近では保険業界が増えてますね。

原氏:フィンテック協会に参加している企業は、何を期待されているんでしょう?

丸山氏:まだ情報収集ですね。情報を共有して、課題認識を揃えている段階。具体的な協業は個別の企業で行っている状態です。

原氏:フィンテックのベンチャーと金融機関では文化の違いも大きいと思います。文化が異なる中で、さきほど瀧さんがおっしゃったようなマネジメント等に影響がでたりしないのでしょうか?

瀧氏:金融の世界には守らなくてはいけないルールがありますから。どうしても、ビジネスジャッジのみならず、セキュリティや外部への説明レベルなど、異なる部分はあります。コストが低いところから乗り越えていく必要がありますね。これに関しては、世界ではこのあたりまで許容されているので、日本でもこのくらいまで、と働きかけていくことが必要です。

原氏:最後に、日本のフィンテックスタートアップは、どんなハードルがなくなると始めやすくなるのでしょうか?

丸山氏:日本でスタートして、世界に出ようとすると、また世界に合わせてサービスを作りなおさないといけないんですね。なので、たとえば、世界の都市同士で規制のレベルを合わせてくれたりするといいですよね。そうしたら、東京でスタートすれば海外に出やすくなる。

原氏:国同士が連携するということですね。瀧さん、いかがですか?

瀧氏:エヴァンジェリストや良いロールモデルが出てくるのが大事ですよね。あとは、そういう人たちと身近な場所で働けることも大切です。そういったコワーキングスペースなどが出てきてくれるといいですよね。

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Junya Mori

Junya Mori

モリジュンヤ。2012年に「Startup Dating」に参画し、『THE BRIDGE』では編集記者として日本のスタートアップシーンを中心に取材。スタートアップの変革を生み出す力、テクノロジーの可能性を伝えている。 BlogTwitterFacebookGoogle+

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