バーチャルリアリティには悪いけど、私が今年HTML5ゲームが人気再燃すると考える理由【ゲスト寄稿】

本稿は、フランス・パリ/東京を拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。フランスのスタートアップ・ブログ Rude Baguette への寄稿を、同ブログおよび著者 Mark Bivens からの許諾を得て、翻訳転載した。

The Bridge has reproduced this from its original post on Rude Baguette under the approval from the blog and the story’s author Mark Bivens.


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少なくとも投資家の立場から、私が HTML5 について熱狂的である理由を吐露したのは、今から3年前のことだ。テック業界で言えば3年は大昔のことだが、私はその影響がすぐに訪れるだろうと大げさに評価してみたものの、実際のところ、HTML5 は3年の間に私が期待した方向に着実に進化を遂げた。

デベロッパ・コミュニティの外から見ていると、HTML5 はこの数年間、モバイルゲームのニュースの外に取り残されていたように思える。Candy Crush、Clash of Clans、パズル&ドラゴンズ、モンスターストライクなどは、すべてネイティヴアプリのゲームだ。年間予測をするには既に時期を逸しているのは承知しているが、私は今年、HTML5 ゲームが再び人気を集める年になると予想したい。

クロスプラットフォーム環境のゲームのツールとしてのHTML5 に、メディアの注目を集める恰好の議論は、紛れもなく Adobe による Flash のご啓示から話が始まることになるだろう(訳注:Flash の脆弱性などを利用に Adobe が HTML5 への移行を推奨)。Flashゲームがなりをひそめる一方で、HTML5 は理にかなった形で、その空白を埋める存在となっている。HTML5 のスキルセットを持つ人々は、この環境変化から恩恵にあずかるべきだ。

HTML5かネイティヴのどちらかではなく、HTML5とネイティヴの混成に

世界的にも才能が評価されていた私の親戚なら、この質問にはこう答えるだろう。

どんなバーベキュー・スペアリブがお好みですか? ベビーバック、それともセントルイス風?

答えは「両方ください」。HTML5 派とネイティヴ派の間で議論が繰り広げられる中で、私はゲームデベロッパたちが自らのプロダクトに HTML とネイティヴの両方を組み合わせることで生まれる価値を想像することができた。

モバイルウェブは手の届きやすい存在だ。そして、ネイティヴ環境はよりよいエンゲージメントを提供するので、マネタイズできる可能性も高い。モバイルゲームは、このようなパラダイムを競合排他ではなく相互補完できる要素として捉えるべきだ。

昔の PC ゲームの時代の「買う前にデモ版をダウンロードしてお試しください」からは次のようなことが類推できる。プレーヤーが自分の遊んでいるゲームの HTML5のライト版に友人を招待し、その友人が後にネイティブの完全機能版にアップグレードする、といった具合に。

私の意見では、そのような組み合わせの価値は、並べて用意された HTML5版とネイティヴ版の2つが存在することが前提となる。もちろん、HTML5 版はネイティヴ版に近い基本機能を提供すべきだが、その一方で、HTML5 の技術的進歩がネイティヴ版ならではの操作面での優位性を目立たなくしてきた。しかし、より重要なことはプレーヤーの履歴、スコア、獲得した宝物などが、HTML5版とネイティヴ版の両方から情報を引き継いでアクセスできるようにすることだ。

LinkedIn を例に説明してみよう。LinkedIn の iPad アプリの UX はブラウザとは異なり、双方の環境下で使える機能は同じではない。確かにどちらも最新情報にアクセスできるが、コンテキストによっては、iPad アプリとブラウザ間を往来することになる。

次世代のモバイルアドテク

HTML5版とネイティヴ版の双方を組み合わせることで、リーチとリテンションが相互補完できるのに加え、ここから HTML5 は新世代のモバイルアドテク・ソリューションを生み出せないだろうか?

最近、Zynga と Rubicon Project は共同で、アメリカ大統領選の期間中モバイルゲーム上に表示される、ネイティヴかつプログラム化された政治広告を制作すると発表した。この広告枠「SponsoredPlay」は、ゲームを遊んでいるかのようなミニゲームの形で表示される。

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InMobi の Playable Ad

同様に、モバイルアドネットワークの InMobi は、次なる「playable ad(ゲームして遊べる広告)」について言及を始めた。

私は、HTML5 によって、ゲーム内で動的にプロダクトを広告表示させるような面白い手法を実現できると考えていた。このコンセプトの初期形態のものは、既に日本に存在する。ゲームアプリ「ねこあつめ」では、魅力的な子猫が自分の持つ手紙をユーザに開かせる。手紙の内容が広告になっているのだ。

とてもかわいいです!

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ねこあつめ

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