失敗を乗り越えた起業家がスタートアップに贈る、3つの言葉

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7月15日から開催となる、シード・アーリーステージのスタートアップ向け経営合宿イベント「Incubate Camp 9th」が開催を前に参加希望者などを対象とした勉強会を開催した。

先日、KDDIグループ入りを果たした「ママリ」運営のConnehito代表取締役、大湯俊介氏とその創業期から交流のあったプライマルキャピタル佐々木浩史氏の話が聞けるとあって、会場は30名ほどの起業家志望者たちで満席、私も個人的に興味深い話が聞けた。

みなさんにも一部共有したい。

2016年7月に起業家/投資家合同経営合宿『Incubate Camp 9th』を開催。

創業のリスクとは?

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大湯氏は支援プログラムを転々とした。Incubate Campもそのひとつ。

スタートアップすることは非常に簡単な世の中になった。そもそも法人を作る際、資本金として1000万円(株式会社の場合)必要だった時代に比べ、人・モノ・カネといったリソースの壁も低く、インターネットやモバイルの急激な発達でビジネスチャンスも格段に増えている。対象的に安泰と思われた大企業が落日の憂き目にあう話題も耳にするようになった。

スタートアップが選択肢として手に入った今、私たちはどのようにして生きる道を選ぶべきなのだろうか?

大湯氏は「機会を逃すこと」これが1番のリスクだと語る。

「大学卒業して就職する前、内定を貰った会社から半年ぐらいの猶予を頂いて留学していたんですね。その時、このテーマについてはやりたいなと思うことが3つほどあったんです。しかも共同創業者する友人もいる。この面白いメンバーで3年後にさあやろう、と言っても集まらないと思ったんです。しかも自分は性格的に会社に入ると突き詰めて頑張ってしまうだろうなと。機会を逃してはならない、それが1番のリスクだと気がついたんです」(大湯氏)。

創業期の事業プランなんて重要じゃない

Connehitoオフィスにはママリユーザーと同じ視点の主婦や妊娠中の女性たちが多く働く(写真は大湯氏)

ではスタートアップしようと決めて、次に考えるのがプランだ。

大湯氏が最初に取り組んだCreattyというクリエイター向けのポートフォリオサービスは失敗に終わっている。その後に生み出したママリは「ピボット」ではなく完全な事業転換であってその面影はない。その辺りの経緯はこちらの記事でも少し触れた。

「(最初の)事業選定なんて正直、重要じゃないですよ。だって(自分も市場も)変わるじゃないですか。プランはそれこそ無数に考えたし、そこから3つ選んだ内のひとつがCreattyだった。ただ、今から考えると稚拙なものが多かったなと思います。自分の能力も変わっていくし、周囲を見渡すと考えすぎている人たちが多い。早くトライして動き出すことの方が重要じゃないかなと」(大湯氏)。

机上の空論ではなく実行してこそ初めて理解できる世界がある。その先にこそ本当にやるべき事業プランが待っている。

自分の人生をかけられるものとは

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大湯氏の創業期から親交のあるプライマルキャピタル佐々木氏

もう一つ、彼の失敗から得た大切な学びに「必要とされるものを作る」というものがあった。彼らが最初に取り組んだCreattyはクリエイターの支援を謳っていたが、実際のところ、クリエイターの多くが趣味であったりサイドビジネスであったりと、そこまでCreattyに必要性を求めていなかったと振り返る。

大湯氏はある時ふと、自分は人生かけてやってるのに、利用者はそこまでここを求めていないのではと思案することになる。

この気づきは非常に残酷だ。私もそうだがこのサービスは本当に人の役に立っているのかと考えることが多い。ただこのラインは明確ではなく、いつまでもその当確線上で葛藤し続けるのが起業家に求められるひとつの能力なのかもしれない。

「狙ってのイグジットなんてできませんし(もし売却やIPOできたとして)みなさんが予想しているより倍の時間が必要になります。であればやっぱり好きなことしかできないんです。ほとんどのパターンでは心が折れてしまう。1円も貰えなくてもハッピーでいられる領域を選ぶべきなんです」(大湯氏)。

登壇している彼の姿は、イベントのお手伝いをしている元気よい学生起業家候補生ではなく、既に30名近くのチームをまとめる経営者のそれになっていた。彼がこの先、大企業グループの中で経験するであろう出来事もまた、この日本の起業エコシステムにとって役立つものになるだろう。

また機会あれば彼の声を共有したい。

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