ONLabが第14期プログラムのデモデイを開催、弁理士向け業務効率化クラウド「Toreru」と宿泊権利マーケットプレイスの「Cansell」が優勝

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東京のスタートアップ・インキュベータ Open Network Lab は12日、Seed Accelerator Program 第14期のスタートアップを披露するデモデイを開催した。このバッチには、日本の内外から合計76チームのエントリがあったが、中から5チーム(うち2チームは海外から)が選抜され3ヶ月間にわたってメンタリングや支援を受けることとなった。

今回のバッチからは、Open Network Lab の過去のバッチから輩出されたスタートアップによるメンタリングも提供された。デモデイでは、以下の審査員5名による審査をもとにチームが表彰された。

  • 林郁氏(デジタルガレージ 代表取締役社長兼グループCEO)
  • 畑彰之介氏(カカクコム 代表取締役社長)
  • 村上敦浩氏(カカクコム 取締役)
  • 佐々木智也氏(DG インキュベーション シニアマーケティングディレクター/Open Network Lab 代表取締役社長)
  • 猿川雅之氏(DG インキュベーション マネージング・ディレクター)

【Best Team Award】Toreru by Toreru

Toreru は、知的財産権を取り扱うクラウドサービスだ。創業者の宮崎超史(まさふみ)氏は弁理士で、これまでに1,000件を超える特許や商標登録を扱ってきた。弁理士のミッションは知的財産を守ることで、顧客の利益を最大化しリスクを最小化することだが、特許や商標登録の申請業務に要する時間のうち95%が、書類作成や顧客への報告作業といった、本来のミッションとは直接関連しないタスクに使われていることがわかったのだという。

特許や商標登録の申請業務は、権利範囲の検討→調査→申請書類の作成→顧客への報告という4つのタスクで構成されるが、このうち、Toreru では調査から顧客への報告までの一連の作動をクラウド上で処理できるようにした。調査はワンクリックで検索でき、申請書類は自動作成、顧客への報告はクラウド上で情報共有できるように、といった具合だ。これにより、1案件平均5時間かかっていた作業が、10分の1の0.5時間にまで短縮できたという。

弁理士は Toreru の利用で空いた時間を顧客へのよりきめ細かい対応、マーケティング活動などに利用できる。業務効率化+CRM+集客支援の3つの機能を備えたクローズドベータ版を2017年中にローンチする計画だ。将来的には、海外の弁理士と連携することで日本国内からの海外特許申請を容易にしたり、蓄積されたデータを活用することで、申請業務のうち調査の自動化や競合動向などもウォッチできるようにしたいとしている。

【Best Team Award および Audience Award】Cansell by Cansell

Cansell は、キャンセルできないホテルの宿泊予約権利をユーザ同士で売買できるマーケットプレイスだ。「ドリパス」(その後、ヤフーが買収)でプロダクトマネージャーを務めた山下恭平氏らが、ドリパスで共に仕事をした仲間を募り、2016年9月にサービスをプレビューローンチした。ちなみに、ドリパスは Open Network Lab の第4期の卒業生だ。

Dohop 2015 Hotel Report によれば、ホテルのオンライン予約のうち、実に19%は宿泊されずにキャンセルされている。オンライン旅行サイトでは、宿泊を安価に提供する代わりにキャンセルが不可に設定されているものも多くあり、これらを宿泊権利の名義変更により市場流通させるのが Cansell のしくみだ。

Cansell では、宿泊予約時の確認メールを Cansell に転送するだけで出品が可能。また、すべての出品は事前審査をすることで買取客に安心を提供しており、予約に際しての宿泊権利の名義変更などの手続は Cansell のスタッフが代行対応してくれる。2016年9月のローンチ以降、Cansell には130件の宿泊権利が出品され、予約価格10万円以上の権利の成約率が50%に達しているとのこと。

将来的には、宿泊以外にも、フライト、レストラン、結婚式、ツアーなどあらゆるキャンセルを扱えるようにし、お金でも売買のみならず、ポイントや仮想通貨での取引、権利と権利との取引(例えば、不要な宿泊権利と希望する宿泊権利との等価交換など)を実現したいとしている。

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ninomin by matsuri technologies

6月から施行される「民泊新法」により、1物件あたりの民泊営業は年間180日以下に規制されることになる。民泊物件を抱えるホストは、1年間の約半分の期間の事業機会を奪われ、中には撤退を余儀なくされる人いるだろう。

matsuri technologies が提供する ninomin は、民泊、社宅、短期貸出、貸し会議室、シェアハウスなど複数の不動産仲介サイトと連携し、民泊物件を複数の用途で貸し出しできるようにするサービスだ。周辺地域の価格をモニタリングし、投資の運用効率を考慮して、民泊ホストに貸出用途に応じた最適な価格を提案する。

今後、不動産の重要事項説明がオンラインでも許容されるように法律が改正されるので(IT 重説)、不動産においては新規参入企業が増えると予測。そのような新規参入組の企業や、一方で、民泊新法の施行で撤退する民泊ホストらの需要を取り込むことで事業を成長させたいとしている。

Café Wifi by Remote Work

カフェなどでリモートワークをする人の数は増加の一途をたどっており、アメリカだけでも5,000万人に上る。一方で、WiFi の環境が良いか、電源は提供されているか、雰囲気はいいか、などのリモートワーカーにとって重要な情報は、既存のポータルサイトでは提供されていない。

Café Wifi では、世界中のリモートワーカーから投稿される情報と、自動測定された WiFi 速度など統一された基準をもとにカフェをスコアリングし、希望するエリアでリモートワークに適当なカフェを一覧表示する。その店舗が深夜営業しているか、フードが提供されているかなどの詳細情報も入手可能だ。

12月のローンチから登録ユーザは10倍に増え、現在の WAU(Weekly Active Users)は1,000人ほど。これまでに、サンフランシスコや東京をはじめ、世界98カ国以上の3,100箇所の情報が登録されている。将来は、アプリ上で事前決済するこで席が予約できる機能も追加する予定。現時点で iOS アプリのみ利用可能だが、Android アプリもまもなく公開予定。

PSYGIG by PSYGIG

自動運転車、自動運転ドローン、ロボティクスなどの高まりにより、モビリティ IoT の需要が増加傾向にある。一方、モビリティには多くのセンサーが取り付けられており、モビリティ製品を開発するデベロッパにとっては、さまざまな困難を伴う。適切なセンサーが欠如していたり、エンジニアリングコストが高かったり、データが多く処理複雑になったりなどだ。

PSYGIG はクラウドベースのモビリティ IoT 診断ツールだ。デベロッパは SDK により簡単に導入でき、リアルタイムモニタリングにより異常検知時にはエラーを通知、性能評価や比較も可能だ。SaaS およびオンプレミス型の2つのタイプで提供される。

将来的には、あらゆるタイプのモビリティ IoT に対応し、DMP(データマネージメントプラットフォーム)、交通管制アシスタント、Mobile IoT 同士の P2P シェアリングなどの機能も提供したいとしている。


Open Network Lab のマネージングディレクター松田崇義氏によれば、今回の第14期の修了を受け、Open Network Lab は通算で80組のスタートアップを輩出したことになる。また、前回第13期までの輩出スタートアップの資金調達成功率は 49.2% に達しているとのことだ。

第14期デモデイの開催とともに、第15期バッチへの応募受付が開始された。Open Network Lab は、3ヶ月間のバッチ参加中の活動資金として最大1,000万円を提供。Open Network Lab の日本内外3拠点(代官山・鎌倉・サンフランシスコ)の1年間の無料施設利用に加え、Open Network Lab の Seed Accelerators Program からこれまでに輩出されたスタートアップの経営者らによるメンタリングも提供する予定。第15期バッチへの申込締切は、5月22日の正午となっている。

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