そろそろバーチャルリアリティを疑うのをやめよう

by VentureBeat ゲストライター VentureBeat ゲストライター on 2017.5.28

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Image Credit: Owlchemey Labs

バーチャルリアリティ(VR)に対して冷たい態度をとっている投資家やゲーマー、ゲーム開発者は、2017年のGama Developers Conference(GDC)でVRがしっかりと地に足がついていることを確認する必要がある。GDC2016とGDC2017のVR関連パネルへの出席の経験から開発者の理解力が違う。明らかに違っている。

VRの運命は高度な光学技術やより高いフレームレート、低レイテンシの開発、3つの主要なVRハードウェアソリューションの進化(HTC Vive、PlayStationVR、Oculus Rift)に依存しない。ハードウェアは最終的にVRの投資家が求めている利益を生むかどうかということや、VRが一般家庭の未来に存在する技術であるかを決定するものでもない。

VRの成功や失敗は、3つのプラットフォームすべてにコンテンツを提供しているゲーム開発者の手によるところが大きい。

コンシューマ向けのVRはほとんどがビデオゲーム世界の中にある。そのためゲーマーの間では新しいハードウェアの人気はない。彼らは「そのシステムでは出来ることが何もないじゃないか!」(新しくリリースされた任天堂のSwitchについて、今でも同じ議論が繰り広げられているのを見ればわかる)と言い放つ。

VRへの心理学的な理解が深まり、人間の脳に対してバーチャルを実際のものであると信じさせることができるようになり、技術的な洞察力が向上したことが相まって、最終的に自然なVRのゲームが生まれた。VR空間の急速な習得はFantastic Contraption(Northway Games製)、JobSimulator(Owlchemy Labs製)、Raw Data(Survios製)などの重要な成功を後押しした。

これらはVR開発者がベストプラクティスを学ぶことができるゲームである。VRの運命は開発者がこれらのレッスンをどのくらい早く学び、適用できるかにかかっており、技術の早期導入を促進させる強力なソフトウェアがリリースされ続けている。全体を眺めると、GDC2017のVR関連パネルにはそのような開発者がいることを示唆しており、結果としてVRの未来は今では曖昧でないと感じている。

Above: Above: The basics of successful VR design.Image Credit: anet Brown, Ram Ramakrishnan

過去から今まで

1年前に時計をもどしてみよう。VRは2016年のゲームデベロッパーズカンファレンスで感動を巻き起こした。小さな部屋で予定されていたパネルは、出席者の多さで窒息しそうだった。時にはパネルの遠隔ビデオフィードのある部屋でさえ、立ち見席のみであった。GDC2016の月曜日のVRパネルへの出席者の多さを受け、需要に対応するために火曜日のパネルは大きな部屋へ変更せざるをえなかった。

その時点で主要なハードウェアソリューションはまだリリースされていなかったため、GDC2016のゲーム開発者は自らの希望とアイデアをVRに投影することが出来た。VR開発しているゲーム開発者は、自分たちが何をしているかを完全には分かっていなかった。それは2015年9月にOculus Connect 2カンファレンスで感じたのと同じ感覚であったし、GDC2016のVR開発者はそれを気にしていないようだった。新しい技術を先駆けすることの興奮は、他のすべての懸念を無効にするのに十分だったようだ。

一方、GDC2017のVRパネルはこの業界がどのようなものかという「現実」を知らすことで空想の世界の可能性を変えた。Gear VRの販売台数は、市場調査会社のSuperDataかSamsung Electronics Americaの発表のいずれかで異なるが、450万台から500万台だ。Sonyは2月、PSVRを90万台以上販売していることを明らかにした。

それに比較するとOculusとViveの売り上げは貧弱である。SuperDataは2月に「40万台以上」のViveユニットを販売して20万台強の売り上げを出したOculus Riftを打ち破った、というデータを発表した。ViveとOculusはそれらのハードウェアを扱うことができるゲーム用PCのコストを考慮すると参入障壁が高いため、この数字は驚くべきものではない。

これらの数字はどのような客観的尺度から見ても、失敗でも成功でもない。とりわけUnity TechnologiesのCEOであるJohn Riccitiello氏のようなインサイダーは、VRが2018年より前に期待されている利益を上げることを想定してはいない。2016年に比較的「控えめな」VRハードウェアが3つリリースされたこと、VRでの高い成果がないことも加わって「開発者の関心が冷えたのでは」とGDC2017のパネル出席に判断されたのは驚くことではないだろう。

Above: You have about three seconds to disarm that bomb. Good luck!Image Credit: Schell Games

最高のVR開発者でさえまだ学習中

Fantastic Contraption、Job Simulator、The Labのようなゲームは楽しめるVRデザインとしての最も重要な成功例である。したがってこれらのゲームの開発者はVRの上級レベルに達成したと想像される。もしくは成功したVR開発者は、技術が心理的レベルでどのように機能するかについて問い続けることのできる人たちであるとも言える。

Jesse Schell氏はSchell Gamesの創始者であり、初期の高プロファイルVRゲーム「I Expect You To Die」を支えた開発者である。Schell氏と彼のチームには利点があった。Schell氏はVRで25年間働いており、ディズニーのテーマパークでイマニジアとしてVR体験を制作していた。またSchell氏は、カーネギーメロン大学で「Building Virtual Worlds」というコースを教えている。2週間ごとに様々な分野のデザイナーやプログラマーのグループが独自のものを作り出している。これらの活動にはVRが関係している。

Schell氏は「Building Virtual Worldsから学んだことの1つに『VRで近づく』という概念がある」と「数千のバーチャルワールドから学んだ教訓」というパネルで語っている。多くの人は物体が腕の中に入る状況に対処するための特別な「スイッチ」が脳にあることを認識していない。しかし実際にはそのような状況が起こった時、脳の特定の部分が作動するのだ。他の方法でそれをオンにすることはできないが、VRはそれをオンにすることができる。

Schell氏は、その経験を可能にする心理学を理解することによって、開発者がどのように魅力的なVR体験を実現することができるのかという、優れた事例を共有した。VRが人間の脳に対して何をするのかを理解することは、開発者にとっては面白いだけでなく成功の前提条件かもしれない。Schell氏は次のように説明する。

「IExpect You To Dieではそのことを最大に活用しました。私たちはすべてのVRゲームでこの機能を利用しています」。

例えば自分の腕が頭上にまっすぐに上がっているのか、横に広げているのかを認識する感覚、すなわち人体の部分の相対配置を感知する能力はVR開発者が操作で得ようとしている感覚だ。コントロールパッドを使ったVRゲームをしている場合、手はゲーム中で同じ場所にあるためこの感覚は関与しない。

しかしSteamVRコントローラやOculus Touchのようなハンドユニットを使用し、プレイヤーが腕の形を変えてシミュレーションをしているときにはこれが重要になってくる。VRでのプレイヤーの身体の位置が現実世界におけるプレイヤーの部分の相対位置と一致すると脳は「錯覚」を覚えるのだ。

バランスに影響を与えるシステムとプレイヤーがVRで見ているものが一致しない場合には確実に乗り物酔いを起こすので、開発者はVR体験において地平線を傾けないようにしている。人間の脳だけを開発者は常に考慮しなければならないわけではない。時に人間の脳は、VR開発者がよりスムーズでより良い経験を生み出すために使用できるツールともなる。

たとえば「snap turns」のアイデアは、コントロールスティックを左右に押すことによって瞬間的なカメラの動きを、プレイヤーが実際に見ていた別の角度に引き起こす。それは脳にとって本来異質な動作であるが、脳はsnap turnsで起こる違和感を処理する時間がないので受け入れる。その動きは脳にとってあまりにも速く起こる。

Oculusの開発責任者であるChris Pruett氏は、GDC2017パネルの「Front Linesから学んだ教訓」でその仕組みについて説明した。

「snap turnsは「変化盲」と呼ばれる一般現象の一種です。変化盲は脳に何かを見せずに変化させることです。すると、それを見なかったので信じるという現象のことを言います」。

この現象が開発者によって考案されたことで、一般的に「点滅」と呼ばれる急転換やVRオプションで人気のあるテレポートの動きがプレイヤーに乗り物酔いを起こさせなくなった。脳が変化を認知するには動きが速すぎるので、プレイヤーの脳は仮想空間における新しい位置を受け入れてしまう、というわけだ。

これらの学習が、VRソフトウェア開発の成功の基礎となる。Oculus RiftやViveといったハードがリリースされて1年経過してもまだ、ゲーム開発者がVR設計の基本原則について話していないような場合はVRの将来について心配する必要があったかもしれない。そのようなゲーム開発者は、VRのルールと制限を非常に明確かつ迅速に理解しているため、VRの成功を祈っている人にとっては成功の兆しとなる。

Above: Office work is fun, if it’s only for pretend, and takes place in 2050.Image Credit: Owlchemey Labs

GDC2017のVRパネルが去年より集客出来なかった理由の1つは、2016年の11月に単一イベントとしてVirtualReality Developers Conferenceが開催されたことも理由かもしれない。Owlchemy Labsの創設者でありVRDC諮問委員であるAlex Schwartz氏に11月のイベントがGDC2017の成功の障害となった可能性を聞いてみたところ、「VRは予想以上に新しいものであるので、議論したり、試したり、共有したり、学ぶことがたくさんある」とGamesBeatにメールで回答してくれた。

「すでにVRに関する会議には驚くべき情報量があって、開発者は情報を共有するための最良のフォーマットを見つけようとしていると思います。例年GDCは素晴らしいものですが、特定のトピックをより深く理解するためには、より細かい特定の会議が役立つことも分かってきています。まだまだ新しい技術を開発途中のため、これからもカバーするべき分野が山ほどあるんです」。

Schwartz氏によると、VRDC諮問委員会がGDC2017で開催するパネルを決定した際は、実情を広めることが目標であった。「実現しうることについての憶測を減らすこと、VRでコンテンツや技術を実際に開発した人々から学んだことを広めることに同意した」とSchwartz氏は内容について説明しつつ、「我々はまだVRがどのようにメディアとして機能するかを学んでいます。その中には、ナレーション、デザイン、メカニックなどの技術が組み込まれていますが、その成功(そして失敗!)の両方を聞くのが大切なのは間違いありません」と現状についての心境を語った。

この技術において何十年も携わってきたVR開発者にとって、GDC2017でこれらの話題を聞くにつれ、子供が大人へと成長しているように感じることがあった。

月曜日の午後に開催された「トレンチからのテレポートと移動:どのような動きがあなたにとって正しいか」というタイトルのパネルで、プレイヤーが乗り物酔いすることなく仮想空間で動くことができるさまざまな方法について説明された後、「今回、初めて聞いた大人っぽい話題だった」と語ったのがAndrew Prell氏だ。

1990年代後半にPrell氏は初のシューティングゲームWolfenstein3Dから、WolfensteinVRというタイトルのゲームのVRバージョンを作成し、ゲームセンターで体験するマシーンとして販売した。なのでPrell氏にとってGDC2017での質問の多くはすでに知るものだった。「90年代初期のSIGGRAPH(コンピュータグラフィックスとインタラクティブテクニックの専門家の年次総会)は、VR会議のようなものだったんですよ」ーー同氏はそう振り返る。

Prell氏のVRでの興味はVRの可能性や開発者の夢を聞くことではない。彼は他の開発者が何をしたのか、何が成功したのか、何ができなかったのか、そしてなぜそれが問題なのかについて気にしている。その視点から見ると、GDC2017はこれまでゲーム業界が関与してきた、VRに関する最も「熟成された」話題を提供していた。

そしてそれらは重要な話題でもある。

Owlchemy Labsのメイン・アーティスト、CarrieWitt氏がGDC2017「The Art of VR」パネルで話していたように、PCやコンソールデザインのための効果的なテクニックは必ずしもVRには向かず、逆に伝統的なものが適用されることがある。

「Job Simulatorで現実に近すぎるものを作ってしまったという課題を、Fisher Price社製のおもちゃを例にして単純化するのは本当に良い方法でした」とWitt氏は語る。意図的にリアリズムを放棄するというアイデアは、開発者がUnreal Engineの力を活用し、可能な限り滑らかで最速のグラフィックスを作成することを求めるコアゲーマーにとっては不安材料にもつながる。

その一方で、非現実なグラフィックを強調するRaw DataのようなVRゲームは、VR対応のPCで可能な最低限の設定でもプレイできてしまう。しかしRaw Dataは1カ月で100万ドルを稼ぎ「コア」VRコンテンツの市場の存在を証明したが、これは多くのVR開発者が目指しているものではない。

「信憑性は忠実性よりも重要」と後にWitt氏はGamesBeatに語った。Job Simulatorの「手」はマンガ風だが、1対1で対応する手の動きによって自分の手として信じることができる。また全体的にマンガのように見えるかもないが、インタラクティブな動作がたとえJob Simulatorがマンガ風であっても、ゲーム世界を本物だと考えて脳をだますことを可能にする。ここでもVR開発者は、VRの価値を消費者に正当化する魅力的な体験を作り出すために、心理学を活用する方法を熟知していると言えるだろう。彼らは他のどこでも得られない経験を提供するのだ。

Above: VR developers face challenges that no developer has ever faced before. Every first step potentially sets a new standard.Image Credit: Raph Koster

GDC2017はVR業界に完全なるバラ色の未来を描いていたわけではない。Akamai社のゲーム業界マーケティング担当ディレクターNelson Rodriguez氏は「親愛なるVR、私のお金はどこですか?」と題したパネルに登壇し、一部のVR開発者はプラットフォームのサポートによって市場の不安定さから守られているだけだと指摘している。

「現在、数億ドル規模のゲーム開発を促進させる「補助金」があるんです。そして私たちはまだその途上にいるのです。でもまだそういう段階ですよね?」。

同時にモバイルVRの広告ネットワーク「Immersv」の共同設立者であるMihirShah氏はこうも指摘している。

「これはビジネスモデルじゃなくて資金調達モデルですよね。非希薄的であって素晴らしい方法かもしれないですが、あくまで資金調達の手法であってビジネスモデルではありません。永遠に続けることはできないのです」。

「ログイン中:ARとVRがMMOから学ぶことができる」というタイトルのパネルで、ビデオゲーム業界の第一人者であるRaph Koster氏は、VR社会空間のデザイナーが直面しなければならないユニークな課題について提起していた。たとえば従来のMMOではモデレータはハラスメントの告発があった場合、そのチャットログを閲覧することができた。バーチャルリアリティのソーシャルスペースでは、ボイスチャットで通信する可能性が高いため、MMOのように利用者を管理したり制限することのできる、この実証済みの方法は機能しない。

VR世界の開発者は公正な証拠なしにハラスメント告発をどのように処理するのかーーKoster氏はその点を突く。

「この手のツールがなければ罵り合う2人の間を仲介するだけで、文字通り「ファーストコール」で月間の利益を全部使ってしまうこともあり得ます。この仲裁目的のため、ジェスチャーを記録する機能を用意することでモデレータがどちらが喧嘩を始めたかを判断することは可能でしょうか?」。

開発者はVR体験があらゆる種類のプレイヤーにとって十分にアクセス可能かどうかについての懸念を表明し、高齢者がどのような種類のVRコンテンツを好むかについての研究結果を共有した。教育者はVRを学生に教え、商業VR業界が生き残るために新しい才能を着実に提供する最善の方法のロードマップを描いたパネルを主催した。

Cynicsはこれらの課題をVRの成功に逆らっているとしているかもしれないが、これは間違った指摘である。1年前にVR開発者は諸手を挙げて無知を認めていた。今年のVR開発者は、これらのより微妙な課題について考えることができる。なぜならVRはもうお祭り騒ぎではなく、そこで働く開発者はこれまでとは異なる方法で未来を考える余裕があるからだ。

現在、特にGDC2017以降、スマートマネー(投資金)はVRに賭け、アーリーアダプターや投資家はここに集まる注目や資金が無駄にならないということをこれまで以上に自信を持って感じるべきである。

【原文】

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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