社会正義のために訴訟費用をクラウドファンディングで支援するCrowdJustice、シードラウンドで200万米ドルを調達

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CrowdJustice で寄付金を募った案件の一例
Image Credit: CrowdJustice

訴訟を起こし法廷に出向くのと、不当性についてツイートするのとはまったく別である。誰にでもそんな金銭的余裕があるわけではない。CrowdJustice は訴訟のために寄付金を募るクラウドファンディングプラットフォームで、弁護士費用面で個人を支援することで社会正義の民主化を目指している。ロンドンに拠点を置く同スタートアップは本日(5月30日)、Venrock と First Round Capital が共同でリードしたシードラウンドで200万米ドルを調達したと発表した。Bessemer Venture Partners も同ラウンドに参加している。

CrowdJustice の仕組みはこうだ。すでに弁護士に協力を求めている個人が資金を募るために CrowdJustice のサイトに申請すると、CrowdJustice チームはその弁護士が免許を保有しているか、訴訟を引き受けることに同意しているかを確認し、登録者を念入りに審査する。登録者のデューディリジェンスが完了すると、Kickstarter や Indiegogo 同様、資金集めを開始できる。ただし使用目的は法的弁護を得ることに限られる。

CrowdJustice の設立者兼 CEO を務める Julia Salasky 氏は、VentureBeat に宛てたメールで次のように述べている。

ユーザが調達できる額に限度はありません。当社のプラットフォームで調達された資金は、下は300米ドルから上は30万米ドルまで様々な額に至ります。また将来的にはこれを超える額が集まる可能性もあります。

Salasky 氏は以前国連(UN)で弁護士を務めていたが、クラウドファンディング経由で新たな法的支援を試みるために、同氏が「快適な仕事」と表現するその職を退いた。

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CrowdJustice 設立者兼 CEO Julia Salasky 氏
Image Credit: CrowdJustice

同氏は若手起業家として2015年に CrowdJustice を設立、最初の半年はブートストラップしたのち、プレシードラウンドで Kindred Capital やエンジェル投資家らから資金を調達した。

Salasky 氏によると、CrowdJustice がこれまでに扱った案件は200件以上あり、集められた資金の総額は350万米ドルにのぼるという。

同氏はこう書いている。

システムの審査を受けている、あるいは判決を待っている段階の案件はたくさんありますが、イギリスの最高裁判所まで持ち込まれ勝訴した案件も3件あります。

プラットフォームにアクセスし寄付金を募り始めるのに費用はかからない。CrowdJustice は調達された資金の5%を受け取りマネタイズしている。

訴訟の結果生じるお金については、当社も支援者も利益を享受することは一切ありません。

Salasky 氏によると、寄付者の大半は社会正義に対する思い入れが強く、何らかの形で寄与したいと願う人々だという。

CrowdJustice で資金が集められた案件には、米国の入国制限をめぐり争われた Aziz 氏対トランプ大統領、政治的ゲリマンダリングに対抗したバージニア州の選挙区画再編改革などがある。現在注目されている同プラットフォーム上の案件の1つに、Trader Joe’s(米国のグルメスーパーマーケット)対 Pirates Joe’s がある。カナダ出身の起業家である Mike Hallatt 氏、別名 Pirates Joe’s は、Trader Joe’s の商品を大量買いし、バンクーバーにある自社店舗で転売し利幅で収益を上げている。両者は2013年以来裁判で争っており、最近では Trader Joe’s 側が改めて上訴している。

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Pirate Joe’s のおもしろ画像
Image Credit: CrowdJustice

Salasky 氏によると、CrowdJustice には直接の競合はいないが、一般的なクラウドファンディングプラットフォーム、請願サイト、オフラインの訴訟ファンドといった競合は存在するという。しかし法律制度をディスラプトするような存在は CrowdJustice 以外にもある。正義がサービスとして提供されたりロボット弁護士などの新たなテクノロジーが開発されたりといった最近の流れは、法的業務の簡素化や自動化に役立っている。

同社はシードラウンドで調達した資金を使って米国市場へ進出する予定(同社はすでにニューヨークにオフィスをもっている)。チームは14名、オバマ政権で弁護士を務めた Kip Wainscott 氏、元 YouTube ストラテジストの Colin Whitlow 氏、RolePoint の元エンジニアリングチーム責任者の Gavin Clark 氏などがいる。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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