リクルート「TECH LAB PAAK」のデモデイが開催、第8期参加チームが半年の成果を披露

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リクルートホールディングス(東証:6098。以下、リクルートと略す)が東京・渋谷で展開するスタートアップアクセラレータ「TECH LAB PAAK(テック・ラボ・パーク)」は30日、第8期のデモデイを開催した。

13チームがそれぞれ3分間ピッチでプログラム参加からの半年間の成果を披露したほか、審査員による評価対象ではないが、1分間ピッチには5チームが登壇し、総計18チームが登壇する一大ピッチイベントとなった。

入賞したチームの顔ぶれを中心に、TECH LAB PAAK からどのようなサービスが生まれたか、生まれようとしているかをみてみたい。なお、デモデイのピッチにおいて、入賞者の審査を行ったのは次の方々だ。

  • 54 代表取締役 山口豪志氏
  • TechCrunch Japan 編集長 西村賢氏
  • 日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 澤円氏
  • 500 Startups Japan マネージングパートナー 澤山陽平氏
  • リクルートホールディングスR&D本部 Media Technology Lab. 室長 麻生要一氏

【TECH LAB PAAK 賞】Visual Creole

副賞:AppStore ギフトカード 3万円分

Visual Creole は、手話を手・顔・身体で表現し、それを目で理解するための視覚言語作成・習得ツールだ。手話には音声言語から発生したものと、視覚言語から発生したものがあるが、特に後者については、見たものをそのまま表現できるため、内容がどのようなものかを知らない状態でも表現できるメリットがあるという。

ディープラーニングを使った、カメラによるスケルトン検出アルゴリズム「OpenPose Libarary」と「Wekinator」を使い、伝えたい内容をラベリングすることで、Visual Creole 上に視覚言語として登録することができる。聴覚障害者に対しては、障害を補うために動画コンテンツなどに対して字幕をつけるなどよりも、視覚言語としての手話本来の表現の可能性を拡張することに将来性を見出しているという。

Visual Creole は、2016年の未踏IT人材発掘・育成事業に採択されている。

【Microsoft 賞】GitLocalize by Locki

副賞:天然本まぐろ詰め合わせ、日本マイクロソフトのテクノロジーセンター・センター長を務める澤円(さわ・まどか)氏に、テクノロジーセンターを案内してもらえる権利

GitLoalize は、GitHub 上に作成されたレポジトリと連携し、GitHub 上で開発されているアプリの翻訳作業を効率化するソリューションだ。アプリの修正や追加に伴い、どの部分を追加で翻訳すればいいかを教えてくれる。GitHub を中心とする作業フローを変更せず、機械翻訳やポストエディットサービスなどとも連携して、アプリのローカリゼーションを効率化する。

すでにベータ版をローンチしており、Nuxt.js と Vue.js の公式ドキュメンテーションの翻訳フローには GitLocalize が導入されているとのこと。Locki の近澤良氏は Viki のシンガポール本社でソフトウェアエンジニアを務めていたことがあり、そのときのローカリゼーションに費やしていた手間をヒントに、GitLocalize のアイデアに着眼したという。

アプリの開発フェーズにおけるローカリゼーション効率化のソリューションとしては、これまでにも TECH LAB PAAK 第4期で in app translation などが紹介されているが、GitLocalize は GitHub 開発に特化しているという点で特徴的である。

【54 賞】Smart QC by Ulysses

副賞:Amazon ギフトカード 3万円分

Ulysses(ユリシーズ)の Smart QC は、その名の通り品質管理に特化した SaaS だ。特に食品業界をターゲットにしている。食品工場は書類管理が大変で、中でも最もクリティカルで情報量が多いのが温度記録の管理なのだそうだ。その多くは紙で記録されるため非効率かつ正確さに欠け、情報の改ざんも容易にできてしまう。

Smart QC ではスマートフォンから直接温度を計測してデータ化、クラウド上に情報を記録する。開発した MVP(必要最小限プロダクト)は現在、複数の食品製造企業でテスト中。2020年までに、一次生産者を除く全ての食品事業者が HACCP 認証を取得する義務対象となるため、この種類の SaaS の導入には追い風となることが考えられる。

食品製造企業への個別アプローチは多大な営業リソースが必要になるため、B2B2B のようなビジネスモデルを検討しているとのこと。

【TechCrunch Japan 賞】TouchCast by perms project

副賞:日本三大ブランド和牛 煌コース

映像や音声により、視覚や聴覚から没入感を演出するしくみとして、さまざまな VR(バーチャルリアリティ)を実現するプロダクトが提供されているが、perms project はより没入感を醸し出すための手段として触感に着目。一般的に、触感を伝えるデバイスは一般的に煩雑で高価だが、perms project では触感の中でも振動にフォーカスし、音声信号を触感を作る特殊なフィルタを開発。簡単に触感を伝えられるプラットフォーム「TouchCast」を開発した。

TouchCast はスマートフォンの音声イヤフォンジャックにつなぐだけで動作し、デベロッパ向けには Unity で動く TouchCast 操作用のプラグインが開発済。量産のための低コスト化や設計を完了しており、8月末には Indiegogo でクラウドファンディングを開始する予定だ。年末には、視覚障害者向けに触感にフォーカスしたボードゲームを公開する予定。

【500 Startup 賞】HackforPlay by HackforPlay

副賞:屋形船ご招待プラン

HackforPlay は、すべての子どもが遊び感覚でプログラミングを習得できるように設計されたサービス。用意されたゲームには敢てバグをしのばせてあり、ユーザに対してはは、それらバグの修正を含めコードを書き換えないとゲームが動かない状態でプログラムが提供される。これまでに2万人がサービスを体験した。

多くのコンテンツは独自で作成しており、子どもにアクセスさえできるようにしてあげれば、親は一切手を貸さなくても、小学3年生以上の子どもであれば自分だけでクリアできるように設計されている点が特徴。習得レベルぬ応じて、通常ステージ6つと、アドバンスドステージ7つが用意されており、ユーザが自発的に作成したコンテンツも2,000点程度用意されている。

【オーディエンス賞】Visual Creole / MagicKnock

副賞:TECH LAB PAAK Project Member 権利

オーディエンス賞は2チームが受賞したが、Visual Creole については前出済のため省略。

MagicKnock は、机や壁などに設置することでノック音とその強弱を検知し、コントロール信号を送信できる小型ワイヤレスデバイスだ。テレビと連動させれば、リモコンの代わりに机のノックでチャンネルを変えたり、スイッチを切入したりすることができる。

微弱信号検出 IC により、ノックをした際の振動による微弱な発電により論理回路のスイッチングを実現しているため、ほぼ無電源で待機しノックを検知することが可能で、電源の供給や大きな電池を搭載する必要がなく、ボタン電池で動作するカード型デバイスの実現も可能だ。

Bluetooth Special Interest Group が主催する Imagine Blue Awards で、2017年の日本国内初ファイナリスト(学生部門)に選出されている。

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