「Morning Pitch」の年末総括版が都内映画館で開催、8社がピッチ——難聴者向け対話支援機器「comuoon」を開発するUSDが最優秀賞を獲得

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デロイトトーマツベンチャーサポート野村證券は14日、Morning Pitch(毎週木曜日開催)の年末総括版イベントを都内の映画館で開催した。年間を通して、世界的にも優位性のあるテクノロジーを持つと評価された8社がピッチに登壇し、最優秀賞を競った。審査員が選ぶ最優秀賞には、難聴者向けの対話支援機器「Comuoon」を開発するユニバーサル・サウンドデザイン(USD)が輝いた。聴衆投票によるオーディエンス賞は、小型 EV を開発する FOMM が獲得した。

このピッチ・コンペティションの審査員を務めたのは…

  • 福岡元啓氏 毎日放送「情熱大陸」プロデューサー
  • 仮屋薗聡一氏 グロービス・キャピタル・パートナーズ マネージングパートナー、日本ベンチャーキャピタル協会会長
  • 百合本安彦氏 グローバル・ブレイン 代表取締役社長
  • 入山章栄氏 早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール准教授
  • 佐々木紀彦氏 ユーザベース 取締役 NewsPicks 編集長
  • 斎藤祐馬氏 デロイトトーマツベンチャーサポート 事業統括本部長

【最優秀賞】comuoon by ユニバーサル・サウンドデザイン

ユニバーサル・サウンドデザインは、高齢難聴者向けの対話支援機器「comuoon(コミューン)」を開発している。一般的に難聴者に対しては、アンプを通じて音声を大きくすれば聞き取ってもらえると考えられがちだが、実際には音声に歪みが生じてしまい、周波数・時間分解能が低下した高齢難聴者の耳にとっては、かえって不明瞭な音声となる。

ユニバーサル・サウンドデザインでは、究極の低歪を実現した超小型デジタルアンプと、究極の低ノイズを実現した小型マイクとフラットスピーカーを組み合わせ comuoon を開発。これにより、認知症と思われていた高齢者が実は誤認で、音声を正しく届けることで問題なく意思疎通できるケースもあるという。デザイン性も追求しており、補聴器は身に付けたくなくても、comuoon を使いたいユーザは増えているという。韓国をはじめ海外展開にも着手している。

【オーディエンス賞】4人乗りコンパクト EV by FOMM

東日本大震災では、多くの人が車で逃げることを余儀なくされ、そのまま津波に飲み込まれて死亡した人が多かったのを目の当たりにし、このプロジェクトへの着手を確信したという FOMM 代表の鶴巻日出夫氏。FOMM では、バッテリースワッピングやインホイルモーターといった独自のコンセプトと技術により、水の上でも浮く軽量のコンパクト EV を開発した。

クラウド上にデータを転送することでバッテリーの劣化状態をモニタできるしくみを開発。バッテリーはカートリッジ式で簡単に着脱可能で、すでにタイ国内では、地元ガソリンスタンドとネットワークを組み、ユーザはバッテリの劣化を気にせず、必要に応じてバッテリ交換できるスキームを確立している。孫悟空に登場する筋斗雲になぞらえ、ユーザがスマホから呼ぶだけでコンパクト EV が自動運転でピックアップしにきてくれる筋斗雲シェアリングというサービスも開発中。

エアロシールド by エネフォレスト

人が病気に感染する際の経路としては、飛沫感染、接触感染、空気感染の3つが代表的なものとして挙げられる。このうち、飛沫感染についてはマスクの着用、接触感染については手の消毒などで防御可能だが、空気感染については実用的な防御策は不足している。

エネフォレストでは、水平ルーパーと反射板を使った紫外線による空気感染対策装置「エアロシールド」を開発。空気感染を防ぐ上で従来の方法では、人がいる場所での恒常的な利用が難しかったが、エアロシールドは紫外線の強度を維持したまま、水平に遠くまで安全に照射することが可能。高所に設置することで、常時運転している状態でも人に悪影響を及ぼす可能性がないため、老人介護施設や託児所などで導入されている。

Gravite / RE-Gait by スペース・バイオ・ラボラトリーズ

スペース・バイオ・ラボラトリーズでは、後遺症が残ることが多い脳卒中患者の社会復帰を支援すべく、リハビリテーションと再生医療の2つの施策でアプローチしている。リハビリテーションでは、脳卒中患者が問題を抱えやすい歩行運動にフォーカス。既存の方法では股関節や膝関節を動かすことはできるが、足首の動きをサポートすることができないが、同社開発の歩行補助装置「RE-Gait」を使うことでリハビリテーションの効果が大幅に改善される。

また、再生医療において重要な幹細胞の培養を効率化・簡素化可能な、1/1000G の微小重力環境から 3G の状態までを擬似的に作り出せる重力制御装置「Gravite」を開発。NASA にも採用されているという。重力ベクトルを時間軸で積分することで、宇宙ステーションと同じ状態を作り出せ、さまざまな実験の効率化に役立てられている。

Sky Canvas by ALE

ALE は、人工流れ星で演出する事業「Sky Canvas」を展開している。人工衛星を打ち上げ、流れ星の粒を大気圏突入させることで、人工流れ星を発生させる。空という広いエリアから見える場所をキャンバスと位置付けることで、例えば、東京駅上空で人工流れ星を発生させると、直径200キロメートル内にいる約3,000万人が空を見上げることで同じ体験を共有できるという。

ALE では初となる人工流れ星の運用を、2019年夏に広島で実施する計画。技術者のみならず、ビジネス開発に強いメンバーがチームにいることで、さまざまな事業会社と連携し、マーケティングやエンターテイメントビジネスお可能性を追求していきたいという。

バイオリファイナリー by Green Earth Institute

原油生産量とリグノセルロース系のバイオマス発生量を比べた時、1:10 で自然由来のバイオマス発生量の方が多いにもかかわらず、世の中には出回る製品は原油に由来するものの方が多いのが現状だ。そして、言うまでもなく原油由来の製品の方が、加工過程において CO2 放出量が多くなる。

Green Earth Institute では、遺伝子組み換えコリネ菌を使って、農業廃棄物を原料として、効率的に新たな製品を作り出す技術の確立に成功した。微生物を使って新たな製品を作り出す技術は従来から存在するが、同社が開発したコリネ菌を使うと10倍以上の生産性を達成できるという。すでにバイオジェット燃料や、オーガニック化粧品用エタノールの開発にも成功している。

The Voice JP by Hmcomm

Hmcomm は産総研の技術移転ベンチャーで、クラウドプラットフォームによる日本語音声エンジン「The VOICE」を開発している。同社は、クロストークやノイズがある場所での認識ができないなど、既存の音声認識技術の課題解決も目指している。

テレフォニープラットフォームの Twilio とバンドルした「The Voice JP」を開発し、コールセンターではオペレータやスーパバイザー業務の省力化、顧客満足度の向上などを実現している。

SRIM by ITDLab

ITDLab は、ステレオカメラ技術を用いた超高速3次元距離測定システム「SRIM」を開発。自動車の安全対策や自動運転に必須となる障害物検知において、単眼カメラの場合は、歩行者の検出にモデルを使ったり、距離の検出に仮定を使ったりする必要があるが、ステレオカメラでは立体画像が得られているので、同じような距離の塊をグループとして捉えることができ、より安全で確実な情報取得が可能となる。

ITDLab が開発した最新のインテリジェント・ステレオ・カメラの技術を IP として、それを必要とする事業体にライセンス提供していく。応用範囲としては、ロボットの障害物回避用、自律走行ロボット用、自動車の自動運転用などだ。

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