地産地消の“こだわり生鮮食料品マーケット”でAmazonを超えろーー産直率7割の「Good Eggs」が5000万ドルの資金調達

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<ピックアップ : Good Eggs raises $50M and eyes West Coast expansion>

アメリカでは、質の高い生鮮食料品への需要が高まっています。

生鮮食料品スーパーの代表格として挙げられるのが、Amazonが買収したWhole Foodsです。取り扱い商品や店内の雰囲気はまさに”アメリカ版成城石井’です。

同社のターゲット顧客は、TargetやWalMartのような大手小売企業が販売する、低価格ながら質の悪い食材を嫌う高級志向の消費者です。多少値段が高くても新鮮なオーガニック素材の食材を販売することで、全米消費者の信頼を獲得しています。

WholeFoodsはお買い物代行サービスInstacartといち早く提携し、当日配達サービスも拡充。先日、Amazonプライムメンバーに対して、割引価格で食料品を購入できるサービスも立ち上げ、価格差別化戦略にも打って出ています。

地産率の低さが市場課題

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このように約470店舗を展開するWhole Foodsは、Instacartが提供する配達代行サービスを巧みに利用することで、Eコマース事業への参入を果たしています。今やオフラインとオンラインの両方を押さえている同社ですが、大きな課題点として地産食料品の取り扱い率の低さが挙げられます。

先述のWalMartは地元農家の食材取り扱い率が最大10%と発表されています。一方のWhole Foodsは20%の取り扱い率です。いずれも7〜8割以上の食材が州外から取り寄せている計算になります。

州外から取り寄せるメリットとしては、一拠点で大量生産した食材を一括で仕入れることができる物流体制が挙げられるでしょう。

一方で地産地消の文化が根付いていないことによるデメリットもあります。まず1つに、新鮮な食料品を提供できなくなる点です。筆者がサンフランシスコに住んでいた際、Targetに置かれていた生鮮食料品を買う機会が多々ありましたが、質はかなり悪かったです。Whole Foodsはオーガニック素材ということもあり痛むのが早かった印象がありました。

もう1つのデメリットとして、流通コストが高くなってしまう点が挙げられます。州外からの取り寄せるプロセスの中で複数の仲介業者をかませる必要があり、手数料がかさみます。また小売業者はなるべく販売価格を抑えようとするため、販売価格と流通コストの差額のしわ寄せが、農家の利益率を下げることにも繋がります。

こうした消費者がより高い品質の生鮮食料品を求める需要を満足させ、農家が抱える利益率の低い市場構造を打ち崩すのがご紹介する“地産地消マーケット”です。

地元食材の産直率70%超えのGood Eggs

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Good Eggsは、2011年にサンフランシスコで創業された生鮮食料品を扱うEコマースマーケットです。地産食料品を低価格で販売し、当日配達の流通網を持っている点が強みです。2018年5月には5,000万ドルの資金調達を果たし、累計調達額が6,500万ドルに達しました。

同社が参入するオンライン生鮮食品市場は、2017年度時点で5,200万人の消費者を抱えます。加えて、2025年間でに売上成長率は20%上昇し、1兆ドル規模の市場に至ると試算されています。競合としては、先述のWholeFoodsのような小売業者だけでなく、InstacartやPostmatesに代表される配達事業者も名を連ねます。

Good Eggsのサービスを利用する消費者需要は大きく分けて2つ挙げられます。1つは、Whole Foodsで買い物をする顧客心理と同様に、新鮮で安全な食料品を買いたいというもの。

彼らが扱う生鮮食料品の70%が地元農家が販売する食材です。これはWholeFoodsの3倍以上の割合で地産食材を扱っていることを意味します。こうした地元で取り寄せた食料品を扱うメリットに、物流スピードと仲介業者の省略が挙げられます。

たとえば、アメリカでは生鮮食料品配達サービスAmazon Freshが競合として展開しています。以前は、外部業者が同サービスプラットフォーム上で食料品を販売することが認められていましたが、Whole Foodsを通じた販売のみに特化するため、2018年5月から第三者のプラットフォーム利用が禁止されました。

先述したように、Whole Foodsの地産食料品取り扱い割合は20%にしか及びません。この点、州外から取り寄せた食料品を顧客に届けるまでタイムラグが発生し、Amazon Freshにおいて、新鮮な食料品が届くことは期待できません。ここに大きな商機があるのです。

Good Eggsは効率的な物流拠点の整備を行うことで、地産食材を当日配達することに成功しています。加えて、配達距離が短いこともあり、巨大なサプライチェーンを構築する必要がありません。こうして仲介業者による手数料を上乗せする構造を省き、販売価格を安く抑えています。冒頭で説明した、消費者がより高い品質の生鮮食料品を求める需要を満足させているのです。

生産者の収益搾取の課題を解決する「ホスピタリティー・マーケティング」

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Good Eggsが満たすもう1つの消費者需要は、買い物を通じて地元農家の収益化を手助けする“ホスピタリティー精神”です。

より良い商品を購入するために、買い物を通じて生産者の職場環境や生活を手助けするホスピタリティーは、最近の小売市場で注目されるキーワードとなっています。なかでも、D2C事業者が頻繁に使うマーケティング要素です。

たとえばアパレルD2CブランドEverlaneは、どのような過程で商品が生産されたのかを開示することで、販売価格の何%が生産者や流通業者に行き渡るのかをつまびらかにしています。

商品価格の透明化を図ることで、生産者へ妥当な額の賃金が渡っていることを消費者へ伝えるのです。こうした販売手法を通じて、生産者の賃金を担保する仕組みとブランド価値向上を狙っています。消費者も好みの洋服を購入することで、社会貢献している気持ちを満たすことができます。

Good Eggsは、Everlaneのように価格の内訳を開示する販売手法を採用していません。しかし、地元の食料品生産者になるべく収益が行き渡るホスピタリティーの仕組みを、サプライチェーンの効率化によって発生した利益を農家に還元することで構築しました。

具体的なデータは、競合GrubMarketが発表しています。同社が発表するデータによると、農家が稼ぐ$1当たりの売上の内、84%が流通業者や小売業者によって持っていかれてしまうそうです。残りのたった16%が農家の売上に当たるのです。Good Eggsはこうした農家の収益化の低さを改善する仕組みを作り、Everlane同様に自社のブランド価値として昇華することに成功しているのです。

大手Eコマース事業者Amazonがカバーできていない食料品の新鮮さに対する需要をしっかりと満足させ、効率的な物流網を作ることで価格を安く抑えることに成功。地元農家の収益化を支援できる仕組みを整えてあげることで、消費者と農家との間にWin-Winの関係が成り立つサービスへと成長させたのがGood Eggsなのです。

日本では農協の影響力が強く、簡単にはGood Eggsのような仕組みが成立しづらい現状があるように思えます。しかし、農業改革という名の下、Eコマースと地産地消を組み合わせたベンチャー企業のサービスが立ち上がれば、大きな市場を手にできるかもしれません。

いずれにせよ、Good Eggsのように単に生鮮食料品を販売するプラットフォームに終始することなく、消費者と生産者の両方にとってメリットのあるサービスにまで高め、ブランド力を向上させる仕組みは、他市場の方でも参考になるはずです。

via TechCrunch

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