“垂直統合型ECメディア”の戦略とは? ーー DIYコンテンツサイト「Hometalk」が1500万ドルの資金調達

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2019.4.6

ピックアップ: Hometalk raises $15M to grow its DIY community

ニュースサマリー: 4月4日、DIY(日曜大工)コンテンツを扱うウェブメディア『Hometalk』が1,500万ドルの資金調達を行ったと発表。今回の資金調達は「Lyft」「DoorDash」「Path」への投資実績を持つファンド「NFX」がリードした。

Hometalkはユーザーが投稿したDIYプロジェクトを、画像・動画と詳細なガイドラインテキストに沿って参考にすることができるメディア。14万件以上のチュートリアルが投稿されているという。

『TechCrunch』の記事によると合計登録ユーザー数は1,700万、月間1,000万ユーザー及び2,100万閲覧数を誇り、2018年末までの累計閲覧数は25億回を数える。

これまで広告事業のみでの収益化を行っていた。しかし今後は「マーケットプレイス」「サブスクリプション」「ブランドコンテンツ」の3つの収益軸を確立していくとのこと。

話題のポイント: Hometalkのビジネスモデルを話す上で重要なポイントとなるのは「垂直統合型のECメディア」です。この記事では、特定分野にコンテンツを絞り、チュートリアルから物販まで一連のコンテンツ消費サイクル全てを抑えるメディアを指します。

たとえば編み物市場に特化したメディア『Lovecrafts』が挙げられます。YouTube動画とウェブテキスト記事を中心にコンテンツを展開。各コンテンツで紹介されている編み物に必要な素材販売益から収益化をしています。2017年には3,300万ドルの大型調達を果たしています。

HometalkもLovecraftsも一点特化型の事業戦略を張ることで高い競合優勢を保っています。1つの分野を徹底的に独占するメディア手法が垂直統合型と呼べるでしょう。往々にしてこのようなメディアはECもしくは広告事業を収益軸としています。Hometalkの事例では、これまで広告事業を軸に展開してきましたが十分にユーザー獲得を行えていることからEC事業の強化へ走ることが予想されます。

さて、Hometalkが参入するDIY市場には競合メディアが多くいます。ここからは同メディアがどのように競合差別化を図っているのかを簡単に紐解いていこうと思います。キーワードは「媒体の違い」「ターゲット属性の違い」の2つです。

DIY市場規模は右肩上がり。「Statistic」のデータによると、米国のDIY市場は2012年の300億ドルから2025年には4倍の1,200億ドルにまで成長すると見込まれています。

市場成長の背景にはSNS上で配信される短尺動画ブームが挙げられます。たとえば2016年、大手メディア『BuzzFeed』は専門チャンネル『Nifty』を開設。Facebookページで3,000万人以上の登録者を獲得。小難しいDIYプロジェクトの手順を1-2分のコンパクトな動画にまとめて、”一口サイズ”に配信する形式が視聴者にウケました。

しかし動画やテキスト記事を通じて手軽にDIY情報を仕入れられたとしても、実際に作ってみると案外うまくいかないもの。材料の調達から本当に正しいプロセスで完成したのか疑問に思うところもあるでしょう。DIYの元語である“Do It Yourself(一人でやれ)”の意味が裏目に出てしまった具合です。

昨今登場した動画メディアは確かに消費されやすいですが、詳細がわかりづらいデメリットを抱えています。そこで登場したのがHometalk。

先述したように、既存の大手SNSメディアが提供するDIY情報だけではチュートリアルを再現するのに限界があります。1-2分で読み切れるコンパクトにまとめられた短尺動画では細かい点はカバーしきれませんし、必要機材・材料を検索して買い出しに行かなければなりません。

HomeTalkはこの課題を解決するため、「チュートリアル/Q&Aサイト」、「Eコマース(アフィリエイト)」の2つを軸にサービスを展開。良質なコンテンツ提供から必要備品の購入までを1つのプラットフォーム上で完結できるように環境を整えたのです。

こうした巨大なメディアを構築できた垂直統合型の事業モデルを指す“One-Stop-Platform”という言葉は重要なコンセプトと言えるでしょう。

一方、ウェブメディアに目を向けるとユニコーン入りを果たしている住宅のコミュニティサイト『Houzz』が立ちはだかります。彼らとの違いは「何を買える」かではなく「何を作れるか」といった消費者心理を追求している点にあります。

DIYコミュニティユーザーが独自に持つ「自分で作りたい」というモチベーションを軸に市場セグメント化しサービスを提供しているのです。この点、Houzzはどちらかというと素敵な内装を業者に依頼してアウトソーシングしたい時短ニーズを持つ人たちをターゲットにしていると感じられます。

このように他社メディアとのアプローチの違いや、ユーザー心理/モチベーションをしっかりと定義することで競合性を強く保ち、一点集中型で成長するのが”垂直統合型ECメディア”だと言えます。

日本では一時期キュレートサイトが乱立し、広告事業を軸に成長軌道に乗っていましたが今後は良質なコンテンツを配信するEnd-to-Endなメディアかもしれません。

本記事で紹介したHometalkやLovecraftsのコンセプトは他分野への応用も十分可能なはずです。漫画やアニメ制作に代表されるアート分野や洋服やシューズ作りなどのアパレル事業に応用展開できるかもしれません。

サムネイル画像クレジット: Hans Gerhard Meier

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