すでに日本が世界のフィンテックリーダーになりつつある理由【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2018.5.19

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。

Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


日本のフィンテックは多くの人が想像するより進化していて、さらに速いスピードで前進しつつある。

今日は、マネーフォワードの共同創業者であり、金融庁のアドバイザーである瀧俊雄氏を迎えた。マネーフォワードがどうやって設立され成長してきたかだけでなく、日本政府が全体として金融業界の整合性と安定性を維持しながら、金融イノベーションをどのように促進する計画かについても話を聞いた。

興味深い対話なので、お楽しみいただけると思う。

(本稿に含まれるユーザ数や金融機関数などは、原文が公開された2017年7月現在のものです。)

Tim:

マネーフォワードについて、少し教えてください。

瀧氏:

2つのビジネスラインがあります。消費者向けには、使いやすい個人会計プラットフォームを提供しています。大半の主要金融機関と連携したことで、我々の500万人いるユーザは自分がお金を貯めたり使ったりする習慣を把握し、ある種の個人の損益計算書を見ることができます。事業者向けには、中小企業を対象とした会計クラウドを運営しています。

Tim:

売上モデルはどうなっていますか?

瀧氏:

フリーミアムモデルです。無料ユーザは、最大10の金融機関まで接続できます。有料ユーザは、無制限に接続できます。

Tim:

マネーフォワードのようなサービスは、アメリカでだいぶ以前から存在していました。最大のものは、mint.com(Mint)ですね。日本でこの種のサービスが人気を得るのに時間がかかったのはなぜでしょうか?

瀧氏:

アメリカには、消費者クレジットスコアシステムがあるので、消費者に無理サービスを提供し、その金融情報をマーケッターに販売できます。そういうわけで、Mint は以前からサービスを無料で提供できたわけです。日本には統一されたクレジットスコアがなく、企業による個人情報の利用を規制する厳しいプライバシー法があります。したがって、アメリカのモデルは日本では機能しません。

Tim:

マネーフォワードのプロダクトについてはどうですか? 日本では、たいてい主婦が家計をつけています。このことは、プロダクト設計にも影響を及ぼしましたか?

瀧氏:

それは古くからのイメージで、我々が事業を始めたときにもそういう仮説を持ちましたが、間違っていたことがわかりました。自分の会計や家計に興味がある男性は多くいるのです。

Tim:

それは、プロダクト設計にどう影響しましたか?

瀧氏:

コアバリューにフォーカスするのに役立ちました。我々の競合には、現在の主婦の家計のつけ方をもとにデザインしたところもあります。彼らは、日記、手動データ入力、写真ストレージのような機能までつけています。我々は、現在行われているやり方を無視して、最も効果的にお金を管理する方法に特化しました。事実、女性ユーザよりも男性ユーザが多いです。

Tim:

それは興味深いです。きっと、昔からのやり方は手間がかかり複雑で、シンプルなインターフェイスによって、家の主人が参加できるようになったのでしょうか?

瀧氏:

それは可能性としてあります。しかし、実際はわれわれ共同創業者が全員男性で、我々が喜んで使いたいものを作りたかったのです。我々のプロダクトは特に男性的とか女性的とかいうわけでもありません。仕事をできるかぎり効率よくやる、というだけです。最終的には、すべての人に最も魅力的なものになるでしょう。

Tim:

今日、世界中でフィンテック企業に多くの投資が集まっていますが、金融業界は以前から変化が遅く、ディスラプトするのも困難です。それは日本も同じですか?

瀧氏:

実際のところ、この2年ほどで規制環境はいい方向に変化してきています。ベンチャー企業向けに金融機関が API を作って公開するのを促すため、銀行法は2回改正されました。

Tim:

どのくらい、物事は速く変化しているのでしょう? マネーフォワードは、2,600 以上の金融機関と接続していますね。そのうちのどのくらいが API を持っているのですか?

瀧氏:

現在のところは銀行10行だけが API を持っており、これらの API はこの2年ほどで作成されました。残りの金融機関については、マネーフォワードでは画面をスクレイピングしてデータを取得しています。API を持つ10行という数字は小さく聞こえるかもしれませんが、世界では最大の数です。

Tim:

そうなんですか? アメリカの証券口座や銀行口座は、すべて相互に接続して情報共有できているように思います。

瀧氏:

そうですね。しかし、そのほとんどは大規模な金融機関だけが参加できたり、二者間で直接連携できたりする専用ネットワークを使っています。日本では、スタートアップと大企業の両方が使えるオープン API を開発しています。

Tim:

このような動きを進める金融庁のモチベーションは何でしょう? 銀行間のやりとりの効率を上げようとしているのでしょうか? それとも、スタートアップを支援しようとしているのでしょうか?

瀧氏:

金融庁は、金融サービスの品質全般を改善したいのです。PayPal のような金融イノベータを見てみると、最初は狭い市場セグメントに特化し、一つのことを大変うまくやっていく傾向があります。銀行はそうはできない。銀行はすべての人にサービスを提供する必要があります。彼らは良いサービスの提供に注力していますが、スマートフォン世代にとっては、ただ良いものというだけでは十分ではない。消費者は最良の体験を求めるのです。

Tim:

なるほど。おそらく銀行にイノベイティブであることを求めるのは不公平かもしれませんが、他方で、銀行 API をスタートアップに公開するのはセキュリティリスクを教えてしまうことになりませんか?

瀧氏:

それは、我々が明らかに注意しなければならない点ですね。この構造を考える上で最良の方法は、金融サービスのインフラレイヤーから、プレゼンテーションレイヤーとサービスレイヤーをアンバンドルしつつあるということです。スタートアップはイノベイティブで新しいプレゼンテーションやサービスを作ることができますが、今後も実際の銀行インフラは今日の大規模金融機関によって運営され続けるでしょう。


日本は、一度変わろうとする決断がなされると、実に素早く変化していくことに常々驚かされる。今から10年後、日本はフィンテックイノベーションで世界のリーダーの一つになっているだろう。

金融庁の立場も興味深いが、成功はリスクとイノベーションの間の微妙なバランスにかかっている。新しい銀行 API は、スタートアップなどの企業が意味のあるイノベーションを作り出せるよう、十分な金融の力と機能性を公開する必要がある。しかし、銀行インフラが安定かつ信頼を担保し続けられるよう、必要な規制と制御を API に講じておく必要もある。

最終的に銀行はおそらく API の後ろにいる存在となり、そして、その多くは、特定の消費者ニーズや市場セグメントに特化した、さまざまな新しい小規模企業と対話することになるだろう。

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