Webエンジニアのコミュニティ「jsdo.it」とクリエイターをソーシャルに支援する「Grow!」が提携−−「つくることの喜びを評価しあえる社会をつくっていく」

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 面白法人カヤックが運営するWebエンジニアのためのコミュニティ「jsdo.it–Share JavaScript, HTML5 and CSS-」(以下、jsdo.it)が、コンテンツを制作する人をファンがボタンを通じてチップを贈りソーシャルに支援する「Grow!」とこの度提携した。これによって、「jsdo.it」内にてGrow!が提供する「Grow!ボタン」をOAuth認証をおこない任意に設置することが可能となった。

 4万人を超えるアクティブな開発者のコミュニティである「jsdo.it」との連携により、ユーザー同士で互いを支援し、評価する仕組みができたことでさらなるクリエイター支援が可能となる。こうした大きなコミュニティとGrow!が提携に至った背景、そして、今後の開発者のあり方はどうなっていくか−−jsdo.itのプロデューサー片岡巧氏と同フロントエンドエンジニアの渕上伸吾氏、Grow!CCOのカズワタベ氏に話を聞いた。

ーーまずは、「jsdo.it」についてお伺いします。

jsdo.it –Share JavaScript, HTML5 and CSS-

片岡氏;jsdo.itは、2010年6月にオープンしました。ブラウザ上にJavaScriptとHTMLとCSSのコードを書くと、ウェブコンテンツが表示されるものです。

また、Forkというカスタマイズ機能によって、自分が書いた作品を別の人がそれを書き換えて、その人の作品としてすることが可能になります。

誰でも簡単に自由にコードを書いて投稿でき、それらをオープンソースの概念に基づいてユーザーが任意に指定することができます。

−−jsdo.itが作られたきかっけはなんですか?

wonderfl build Flash online

片岡氏;そもそも、jsdo.itの前身として2009年6月にオープンした「wonderfl build Flash online」というものがあります。

当時、Flashがメインに使われている時代で、エンジニアは色んなサイトのコードを見ながら勉強したりブログにコードを公開して意見をだしあってました。そうした、コードによるコミュニケーションをもっと自由にできないか、ということからwonderflが誕生し、コードをオープンにして意見交換する場が誕生しました。

その後、HTML5の登場によって、JavaScriptとHTML5とCSSでデバイスに限定されずに自由な表現を使ってWebコンテンツを作れるようになりました。そこから、いまのFlashエンジニアだけでなく、既存のJavaScriptエンジニアやMarkupエンジニアにも楽しんでもらえるのでは、というところから、jsdo.itが誕生しました。

−−どういった使われ方が多いですか?

片岡氏;双方とも、基本はコードによるコミュニケーションを図ることが目的です。調べたい技術の作品やコードを見て勉強したり、コードを見ながらその作品を公開している人にコメントや質問をなげかけたりできます。回答者もForkによってプログラムを書き換えて、「こうしたらいいんじゃない?」というような返答をしたりしています。他にも、非公開設定にしてデバック的に使用してる人もいます。

渕上氏;コードを見て、実行して、質問して、Forkして、という一連のやりとりがおこなわれています。最近だと、教育機関や就職活動との連携もおこなっており、授業の一環で使用してくれています。就職活動としても、面接の前のスキルチェックをjsdo.itでおこない、採用課題をウェブでおこなうなど、様々なところで利用してもらっています。

−−今回のGrow!との提携の理由は?

jsdo.itプロデューサーの片岡巧氏

片岡氏;カヤックの経営理念が「つくる人を増やす」なのですが、つくる人を増やすためにユーザーになにかを還元できないか、というときにGrow!のようにユーザーに評価ができる仕組みがまさにサービスとしての理念とマッチしていたため、声をかけさせていただいたのが経緯です。

カズワタベ氏;Grow!としても、「つくる人を増やす」という思想はカヤックさんの理念と共通しています。つくる人を増やし、つくり続けられる。彼らがコンテンツを公開し、それがGrow!されることによって再びつくるモチベーションが高まる、そんな仕組みとして使われています。

今回の提携は開発者がコードを公開し、それを気に入った人は評価し、つくった人は喜びが得られることで、継続的な投稿やコミュニケーションが発生するのではないかと期待しています。開発者というまさに「つくる人」たちのコミュニティとの提携ということで、お声をいただいたときはとて嬉しく思いました。

−−どのようにして、jsdo.it内で使うんですか

渕上氏;プロフィールの画面でGrow!のOAuth認証をおこなうだけで、作品の下のソーシャルボタンのボックスにGrow!ボタンが自動的にでき、簡単に設置できます。

−−いまの時代は開発者にとってどういう時代だと感じますか

jsdo.itフロントエンドエンジニアの渕上伸吾氏

渕上氏;jsdo.itをみると、勉強のためにコードを投稿している人もいれば、業務で抑えきれなかったフラストレーションを発散したりしてる人がいます。

例えば、CSSだけでアニメのキャラクターを書いてみた、などは、同業の人がソースコードを見ると明らかにおかしいと感じるくらいの才能を発揮しています。これって、コードが読めなくても実は楽しかったりしますよね。

そこから、自分でForkしてコードを書き換えて追加してみたりして、楽しみながら学ぶきかっけがたくさんある時代になってきたと思います。そういた、学ぶ意欲を向上させるきっかけのツールが、次第に増えてきたと感じます。そういったツールを上手く使って、技術の向上や創作活動ができる環境をつくっていけたらと思います。

−−どういうシーンで、Grow!を使ってもらいたいですか?

カズワタベ氏;jsdo.itで言えば、自分が知りたいことに対する、ヒントや解答を与えてくれた人。もしくは驚きを与えてくれた人。そんな人に対して感謝や賞賛の気持ちを示すために、Grow!を使ってもらいたいと思っています。

もちろんコメントしたり、シェアしたりと、様々な賞賛の仕方がありますが、そこにGrow!が加わることはとても有意義なことだと思います。なにかをつくる人にとって、フィードバックがもらえることは創作活動を続けていくのに必要不可欠な、言ってみればガソリンのようなものですから。

ーーそういった意味で、エンジニアに対してきちんと正当に評価がされる社会になるのではと感じますが、どう思いますか?

Grow!CCOのカズワタベ氏

カズワタベ氏;渕上さんがおっしゃっていたように、業務の枠に収まり切らない才能やスキルというのはまさにそうで、ただビジネスに結びついていないだけで、純粋に素晴らしいものを持っている人はたくさんいます。これは音楽やアートなど、他の創作手段も同様です。オンライン上ではそういった作品をよく目にします。そうした、ビジネスと関係のないところでの素晴らしい人や作品もっと光をあて、評価や賞賛を与えれるような社会になることはとても大事なことです。

そういったシステムで浮き上がってきた、尖ったものがビジネスの土俵に登ったときにイノベーションが生まれるのではないでしょうか。Grow!が生み出したいのは、そういった、新しいものが生まれるエコシステムです。作品を投稿して、周囲からの評価によってモチベートされ、さらに洗練されたものを再創作る。そうした仕組みを普及させ、より個人個人が活きていく社会にすることが理想です。

片岡氏;エンジニアの方の魅力は、今までにないサービスを生み出したり、複雑なことや困難な事をシステムを用いて簡単にしてくれるという所がありますよね。そういったエンジニアの活動がもっとたくさんの人に知ってもらい、たくさんの人に評価される、そうした動きがもっと加速していけるといいですね。

−−今後の展開として、どういったものを予定していますか?

jsdo.it html5-Games

片岡氏;つい先日公開したのですが、「jsdo.it html5-Games」というブラウザゲームコミュニティを公開しました。jsdo.itの中からゲームの投稿だけのコンテンツを抜き出した特設のサイトです。数多くのJavaScriptライブラリーも搭載しており、みんなで面白いゲームを作ろうというものです。Web Socketを使いiPhoneをゲームコントローラーにして、遊ぶことも可能です。

渕上氏;普通だと、コードを楽しむのって一部の人以外とても難しいけど、コンテンツとしてゲームを遊ぶことをもっと自由にできたらと考えつくりました。一般の人でも気軽にHTML5に触れる機会が増えればと思います。また、この「jsdo.it html5-games」にもGrow!ボタンが設置可能となっています。

片岡氏;ゲームを遊んでもらって、プレイヤーから評価をもらうことでモチベーションを高めてまた新しいものを作り出す。Fork機能など様々な人が追加してコンテンツを生成することができ、ユーザーと対話しながらゲームをつくる環境ができたらと思います。

ユーザーとの対話やコミュニケーションをもっと可能にする仕掛けをカヤックとしても用意していき、そして、作ることの楽しさを感じて、一人でも多くの作る人が増えていってもらえたらと思います。

ーーGrow!側も、クリエイターやエンジニアとの連携をこれからさらにはかる予定ですか?

カズワタベ氏;今回の提携は開発者のためのコミュニティという、今までにない密なコミュニティへの提供であり、Grow!としても新しいステップだと感じています。これまではクリエイターという広い枠を設けていましたが、今回のような、より密なコミュニティと組んでみたいと常々考えていました。同業者だからこそ、その良さを理解できたり、産みの苦しみや楽しみをわかちあうことができる。そうした関係性にもっとフォーカスして、今後も連携を深めていきたいですね。

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