【インタビュー】図解を用いてコミュニケーション障壁をなくす。“せかいをまるくする”をテーマに活動する「Visual Thinking」櫻田潤さん[前編]

by Yukari Mitsuhashi Yukari Mitsuhashi on 2012.6.27

情報過多な時代だからこそ、わかりやすく一目で伝わることが大事になってくる。写真を扱うサービスやインフォグラフィクスの人気はそんなことの表れでもある。ある時たどり着いたのが、「Visual Thinking」というウェブサイト。

ドラッカーの本を図解に落とし込んで解説していたり、クラウドファンディング「Campfire」の成功プロジェクト内訳を一枚のシンプルなインフォグラフィックにまとめていたり。図解、ピクトグラム、インフォメーショングラフィクス。そんな手段を使って情報を的確に伝えることでコミュニケーションの障壁をなくす。「せかいをまるくする」をテーマに活動する櫻田潤さん(@vt_jp)にお話を伺いしました。前編をお届けします。

「Visual thinking」というコンセプト

数年前から海外サイトで目にするようになったインフォグラフィクス。Good.isという、greenz寄りのサイトなどがその代表例。英国の新聞「Guardian」も「DATA BLOG」というコーナーを設け、統計データなどをわかりやすく視覚的に表現している。マーケティング寄りの使われ方がされるようになって、より一層広まってきた。

櫻田さんにインスピレーションを与えたのが日本語にも訳されている「超ビジュアルシンキング」。ダン・ロームはビジュアライゼーションの第一人者。物事を整理するためにビジュアルを使い、それをビジネスに生かすヒントを与えてくれる。上手くビジュアライズすることができれば、急にプレゼンを任されて何の準備もできていなかったとしても、ちょっとナプキンに描いて説明することで上手く伝えられる。また、ビジュアルシンキングはブレインストーミングの文脈で使われることも多いそう。付箋を貼ってまとめるなんてこともその一部だったり。

「僕の想像だと、いろんな人種が存在すると言葉だけじゃ成り立たないコミュニケーションがある。そこを補完するためにビジュアライゼーションが使われていて、より米国のような海外で発達してるんじゃないかなと思います。多人種がいる国の方が言葉の壁を乗り越える必要があって、だから自然と絵にするのではないかと」。

難しいネタをカジュアルにするというテーマ

2010年4月に立ち上げたウェブサイト「Visual Thinking」。大学卒業後、エンジニア、ウェブデザイナー、マーケターと様々な職種を経験したからこそ辿り着いた最終テーマ。

それぞれの専門分野で自分より凄い人はたくさんいると話す櫻田さん。でも、それぞれのスキルを持ち合わせているため、その合わせ技で「Visual Thinking」というコンセプトを具現化できているという。

文系の大学を卒業後、システムエンジニアの仕事をしながら自分のウェブサイトを立ち上げるために週1でデジタルハリウッドに通った。デジハリで学んだ経験を活かしてウェブデザイナーに転職。現在は3社目で企画・マーケティングの仕事をしている。

プログラミング、ウェブデザイン、ビジネス。どこでも共通して必要なのが、ロジカルな発想。絵を描くことと違って、ある目的やテーマを表現することが求められる。ビジネスエンド、エンジニア、デザイナーなど、それぞれの職種間で資料などを使いながらコミュニケーションをとり何かを形にしていく。どの仕事を通しても感じたのが、異なる職種間でとられるコミュニケーションにある壁。例えば、エンジニアだった頃は、システムがわからないクライアントに対して小難しい要件定義を提出しハンコをもらうようなことがよくあった。

「システムのことがわからないクライアントに分厚い資料を読んで承認してもらう。それって正しいの?という疑問は常にありました。設計書だってわかりやすく描けるんじゃないか、って。コミュニケーションの上手くいかないところを、ビジュアルを使うことでスムーズにしたいという思いをうっすらと持っていたと思います」。

そんな思いを抱えながら、ビジネス寄りのポジションについた3社目で、ドラッカーの本などでビジネスのフレームワークなどを勉強するように。読書から得た知識をアウトプットするためのサイトを立ち上げたが、最終的にその一部だった図解にフォーカスすることに。

「ドラッカーを読んでいくうちに、迷えるクリエイターたちこそ読むといいなと思ったんです。彼らにはあまり本を読むイメージがないけれど、でもそんな人にもカジュアル・簡単・一言サイズで要点を伝えるのはありだなって。難しいネタをカジュアルにする。それに、他と違うユニークなサイトをつくりたいという思いもあって。テキストだけのサイトから、中でも面白かった図解にフォーカスして更にデザイン要素を加えるようになっていきました」。

眠気を無視してまでやりたいこと:「せかいをまるくする」

サイト運営開始から2年ほど経った今、仕事をしながら2日に1回は記事を更新している。ドラッカーの本を図解に落とし込んで説明したり、また「カンブリア宮殿」で見た内容を図解にしたり。もともとアーティスティックなものが好きなため、サイト立ち上げ当初からインフォグラフィクスも紹介していた。ドラッカーのポイントをまとめた記事だけで79件もあるそう。

【ドラッカー図解の例】
記念すべき一番最初の図解コンテンツはドラッカー著「マネジメント」の内容を図解に

「ビジネス寄りの人も、もっとクリエイティブ、デザインの力を信じていいという想いもあります。ビジネスマンだって、ドラッカーならきっと食いついてくる。スーツの人にも、デザインを効果的に使って情報を上手くまとめられるということを理解してもらえれば、スーツ(ビジネス)、ギーク(エンジニア)、クリエイティブ(デザイナー)が合体できるかもしれない。そこが重なったらすごい人が生まれる!と思って。そんな人がどんどん出てきたらいいなと思っています」。

そんな思いが反映されているのが、「Visual Thinking」のタグライン“せかいをまるくする”。この言葉には、上述したような異なる仕事をする人たちのあいだにある、ちょっとしたコミュニケーションの障壁を取っ払うという意味が込められている。

「ウェブの議論で0か100かみたいになることがありますが、50%・50%くらいのハイブリッドでいいなじゃないかって思ってて。例えば、NOMADか組織かみたいな白黒つけた感じになってしまいがち。でも日本人って折衷案はもともと得意なはずなんだし、融合したらいいんじゃない?って思うんです。自分の中に「融合」というテーマは常にあります」。

やっと辿り着いた「Visual Thinking」というテーマ。結局プログラム、ウェブデザイン、ビジネスよりのコンサルもやったものの、何かをすごくできたとは思っていない。今後、自分が極めていく分野を見定めるという意味でも、Visual Thinkingというテーマが続くかは大事だった。

「結果、2年運営を続けているので、これは好きなんだなって感じです。眠気を無視してまでやりたいことというか(笑)」。

読書は図解に落とし込むことが習慣

ドラッカーの書籍のポイントを図解で表現する櫻田さんの読書プロセスはどんなものなのか。ドラッカーに限らず、本を読むときは情報を吸収するために図解に落とし込むことを習慣化しているそう。

  1. 読みながらためになった箇所に線を引く
  2. ポイントを書き出す
  3. 要点を図にしていく

相性がいい本だと読みながら余白に図を書いてしまうことも。自分がピンとくる箇所は一部だったりする。ポイントは読み手によって違うため完成するものは人それぞれになるはず。

「コトラーのマーケティング3.0」

「読んだ内容を全て記憶することは難しくても、図解にすることでそれが内容を思い出すフックになるんです。PCでいうショートカットキーみたいなもので、ダブルクリックすれば全部思い出すというか。図を見ると、あー、そうだそうだってピンときます」。

この辺りに関しては、トリガーとなるようなものをつくっておくというプログラムをやっていたときの感性が大事だったという。図解は要はパーツの使い回し。それはモジュールを組み合わせるというプログラムの発想に近く、プログラマーとしての経験が生きている。

いつか図解が主役の本をつくりたいと話す櫻田さん。片方のページが図解で、その脇に5行くらいのシンプルな解説があるような本。

「すべて図解の本。そういう方が、いまの人の感覚に合ってるんじゃないかなって思うんです。ブログとかニュースサイトにも図解が少ないですよね。速報性が必要なニュースでは難しいと思うんですが、例えばプレスリリースなんかにはもっと図解が入っていて良いと思ってます」。

普段本を読んでいて、図解が足りないなーと思うことが多々あるそう。ちなみに図が十分にあって、これ以上はできないというレベルの書籍が佐藤可士和さんの「佐藤可士和の超整理術」。図はポイントポイントにしかないけれど、さすが一流クリエイターという内容だという。

「助けあいジャパン」のために作ったピクトグラム

絵を描き出した初期、2002-2005年の絵を振り返るとそれはコラージュに近いアナログ時代。手書きとスタンプ、写真と手書きなどを混ぜて表現し、「融合」というコンセプトがこの頃からあったことがわかる。ある頃からPhotoshopに目覚め、アナログにデジタル表現を混ぜるように。いま考えてみると色使いはこの頃がルーツで、当時からポイントとなる色数を3色以内に抑えていた。

デジタルに目覚めてハマったのがドット絵。ロックやパンクミュージックの洋楽CDのジャケットを、ひたすらドット絵で描いてた時期があった。ユニクロのWebコンテンツなどのgifアニメをつくったりすることも。

「ドット絵って、ミニマム表現の究極だと思っていて。そんなミニマム表現から、ピクトグラムに移っていきました。ドット絵を描いていたことが訓練になったところはあるかなと」。

Visual ThinkingのFacebookページを訪れると、街中で見かけたピクトグラムを集めた写真集が。櫻田さんが特にお気に入りなのは、IKEAの商品パッケージに描かれたピクトグラム。箱の中身をシンプルに表現している。

IKEAのピクトグラム

「これはダイバーシティで発見した立体のピクトグラム。例えばトイレマーク、滑るの注意、なんて立体のピクトグラムに溢れた街があったら素晴らしいですね。高いところじゃなくて地面にあったら子どもの遊具にもなっちゃうし」。

立体ピクトグラム

ピクトグラムには汎用性が求められると話す櫻田さん。このポイントを理解する以前は、間違ったピクトグラムの使い方をしていたことも。例えば、Red Bullのピクトグラム。一見可愛いしユニークだけど、これではRed Bullを表現するためにしか使えない。仮にこれをあるべきピクトグラムにするなら、コンセプトはエナジードリンクのピクトグラム。パワーを与えるという意味で、牛の部分を羽にして表現してみるなど、誰が見ても何を意味するかがわかることが大切。

そんなこんなで、大好きなバンド「Nirvana」などを自分流のピクトグラムで表現しているうちに、「助けあいジャパン」のピクトグラムをつくってほしいという依頼があった。助けあいジャパンの注文は、誰が見てもある程度イメージがつくこと。完成したピクトグラムはこのような感じ。

助け合いジャパンのピクトグラム

「内容が内容なだけに、間違いがあってはいけないし気分を悪くするようなことがあってもダメ。全てのピクトグラムで復興に向け力強い感じにしたかったので、できるだけバンザイを使い「人」を必ず入れました。人と人の絆をコンセプトにしたかったので」。

ビジュアライゼーションとインフォグラフィクス

マーケティング用語としてはインフォグラフィクスの方が強いものの、“ビジュアライゼーション”を実践してる人はたくさんいる。データ・ビジュアライゼーションとインフォグラフィクスは少し違うという。

その違いを一言でまとめると、対象がデータなのか、情報なのかということ。データとデータを結びつけて情報として出すのがインフォグラフィクス、そこには伝えたいメッセージがある。データというのは生のもの。例えば、ケーキの販売数がは月曜70件、火曜90件というのががデータ。情報は、「週末にたくさん売れて、天気は影響しない」という結論が加えられたもの。データに意味が紐付くことで、それは情報になる。

ちなみに櫻田さんがデータと情報の違いについて常に念頭に置いているのが「DATA, INFORMATION, KNOWLEDGE, WISDOM?」の図なんだそう。

この2つを上手く融合しているのが、デビッド・マキャンドレス(David McCandless)さん。「THE VISUAL MISCELLANEUM」は、マーケティングとデータのバランスがすごく好きな書籍。「だから○○である」という主張があるインフォグラフィクスに比べて、受取手が情報として自ら読み取る余地を残している。

Types of Coffee by David McCandless

コーヒーのタイプ分けを表現したデータビジュアライゼーション。エスプレッソやミルクの分量が視覚化されてる。インフォグラフィクスかというと、どちらかというとデータの要素が強い。かといって、ただのグラフではなく視覚的にもひきつけて比較が可能。と同時に、このインフォグラフィクスそのものに主張はない。

「FacebookのUIとかGoogleUIとかと同じように、削ぎ落された感じがします。シンプルで、表現の仕方が潔い」。

櫻田さんが掲げる「図道」

これは自ら図解、ピクトグラム、インフォグラフィクスを作成する櫻田さんが掲げる「図道」。主に図解を扱っていた時に決めたものだけれど、同じことがインフォグラフィクスでもいえる、と。

1。装飾しない
2。詰め込まない
3。基本は「まる」「さんかく」「しかく」

後編では、世界の村上春樹人気や「Campfire」の成功プロジェクト内訳などをインフォグラフィクスに落とし込んだ具体的なプロセス、図解にして表現する際のアドバイスなどをお伝えします。

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