福岡は「けもの道」、だからこそハックする面白さがある:ヌーラボ橋本氏が語る地方で起業することの意味【後編】

by Eguchi Shintaro Eguchi Shintaro on 2014.3.31

ヌーラボ橋本氏へのインタビュー後編では、地方で起業すること、地方ならではの課題や今後の取り組みなどについて話を伺った。

インタビュー【前編】では、ヌーラボが取り組んでいるリモートワークについて話を伺っている。

DSC_0591_2

憧れの経営者とメンターの不在は地方は課題

「メンターの存在が地方では課題だ」という話を以前の記事で紹介した。橋本氏も、地方で起業文化を醸成するためには、若手を育成する30代や40代の存在が鍵だという。同時に、あこがれの経営者の存在も大きな役割だという。

「いまの30代40代くらいが松下幸之助さんにあこがれたように、地方にいるあこがれの経営者的存在が必要。楽天の三木谷さんやソフトバンクの孫さんといった人もいるが、まだまだ少ない。近くにいて、話ができる距離感があることで、目標とすべき人と出会えるはず。そうした意味で、福岡には成功した起業家があまりいない」

起業支援やITスタートアップコミュニティ、情報発信やリモートワークによる東京とのコミュニケーションもかつてよりも容易になった。そうした中、福岡からスタートアップが生まれにくい要因として、起業の「ゴールが見えづらい」というものがある。事実、福岡の企業からIPOはあるが、M&Aを経験した企業は少ない。

「東京では、IPOやM&Aといった話題が豊富。特にM&Aを一つの目標に、2年や3年という短期でサービスを拡大させるスタートアップも多い。出口の選択肢が複数あることでチャレンジもしやすい」

起業の出口が見えることで、起業文化が生まれやすくなる。M&Aを経験し、そこから若い世代に投資をしたり、新しい起業をするシリアルアントレプレナーの絶対数の少なさも、地方の起業文化を作る上で必要だと橋本氏は語る。

「もちろん、東京もまだまだシリアルアントレプレナーが多いとは言えないかもしれないが、地方ではそれがより顕著。憧れの経営者や、起業して成功し、そこから新しい挑戦をする先輩起業家やメンターといった役割は、東京以上に地方にとって必要な存在」

福岡が持つ土壌の文化とインターネットが武器になる

Some rights reserved by tsuna72
Some rights reserved by tsuna72

2012年の調査によると、福岡市は開業率3.6%と日本一の数字を誇っており、潜在的なアントレプレナー率は高いといえる。その多くが、商店やサービス業といった対面によるビジネスだ。

九州は、もともとECや通販といった小売が盛んな地域だ。ジャパネットたかたや再春館製薬所といった企業が本社を構えており、対面販売を得意としてきた文化がある。ダイレクトマーケティングからネットマーケティングへの移行が、福岡のスタートアップに必要だと橋本氏は語る。

「ヌーラボは、BtoBのビジネス。近くのお客さん以外にどれだけリーチできるかを日々考える中で、ウェブマーケティングを強く意識している。ヌーラボのように、ウェブマーケティングに力を入れたことで、福岡にある同規模の企業がいまものすごく伸びている。もともとマーケティングのノウハウや技術があるからこそ、リアルの対面からウェブに移行することで成長する福岡の企業はこれから多くなってくる」

対面で直接モノを売るビジネスとネット上でコミュニケーションやECを展開する企業が、福岡ではビジネスチャンスがあると橋本氏は語る。橋本氏が前編で語ったように、「インターネット」という強みをどのように活かすかが地方の企業は重要だという。

「インターネットの特性を認識している人は、福岡には少ない。インターネットというグローバルのネットワークがある中で、どのようにビジネスを展開していくか。そこには、東京も福岡も、シリコンバレーであろうと関係ない。同じ土俵の上での勝負だからこそ、自分にとって最も最適な場所で仕事をすることで、結果としてパフォーマンスが高くなる」

福岡という土壌がもつ強みをインターネット上で活かし、グローバルの視点で事業を進めることができれば、地方の企業にも成功のチャンスは大いにあると橋本氏は語る。

福岡はけもの道、だからハックする面白さがある

IMG_2486
福岡市は、国家戦略特区の指定を受け、雇用規制緩和などの取り組みがなされる。「新たな起業と雇用を産み出すグローバル・スタートアップ国家戦略特区」という名のもとに、スタートアップ都市としての成長戦略を目指そうとしているのだ。スタートアップと行政という新しい協働の形を見出すことで、地域全体で起業を推進していく動きが福岡で起きている。

「市がスタートアップを応援する文化が少しづつできつつある。行政の人も、スタートアップの文化を理解しようとしているし、民間も行政を理解しようとしている。相互理解が進むことで、新しい動きが生まれてくる可能性は大きい」

明星和楽を通じて、イギリスのテックシティを推進する人たちとのつながりも生まれた。イギリスでは、行政側がスタートアップに歩み寄っている。同様の動きが、福岡でも起きつつあるのだ。もちろん、こうした取り組みのすべてが成功するわけではないが、日本経済のこれからを作るという意味において、こうした新しい挑戦から生まれてくるものは多いと橋本氏は語る。

「自分たちの武器や専門性を活かしながら、整備されていない道を開拓する、まさに「けもの道」の場所が福岡。まだない道を自分たちでハックする意識がある人にとって、福岡はこれからますます面白くなっていく」

地方にいることをマイナスと捉えるのではなくポジティブに捉え、文化や土壌、培ってきた歴史的な文脈を見据えながら、自分たちにしか生み出せない価値を創出することがこれからの鍵だと橋本氏は語る。

ニュースレターの購読について

毎日掲載される記事の更新情報やイベントに関する情報をお届けします!

----------[AD]----------